誰も、死なない
一頁めくることで
その主人公は、危機に陥る
花は枯れて
腐臭を放ち
血を流して
名もなき敵は死んでゆく
そんな、架空の世界に対して
時々、負い目を感じていた
一言一句が波風を呼び
平穏は頁の向こうへと消え
そして誰かの死へと、繋がってゆく
読むと屍が積み重なり
悲しみが溢れて、広がってゆく
それに酷く、怯える私が居た
そんな傲りを、感じる私が、居た
虚構から現実を読み取れる
幼き豊かな、想像力の賜物であり
物語の律動の指揮者であるという
無意識な、自己中心的意識
死という、凶事
干渉できずにいる事に
いつしか妬いて、いたかもしれない
虚実厭わず
否、自他関わらず
死は、誰かの為にあるものではなく
唯の時間の経過であり
世の常でしかない
まして、私の為に死ぬものなどは
決して誰も、いないのだ