ビーナス
朝の渚
君は一人、素足に白い帽子、白いワンピースで悲しそうな目をして沖を見つめていたね。
僕がおはようと声をかけると、君はゆっくり振り向き笑顔でおはようと返してくれたね。
そんな君と二度三度あいさつを交わすうち、僕はだんだん君にひかれていった。
僕の心を惑わす魅惑的な君の黒い瞳、僕を引き寄せるなまめかしい君の唇。
君に会えないときは一日中、君のことばかり考えるようになっていた。
夜、ベットに入っても浮かぶは君のことばかりなんだ。
ああ、なんど眠れぬ朝を迎えたことだろう。
君のしなやかな指先、君の白い肌、君の豊かな胸。
どうやら僕は君を好きになってしまったようだ。
神さま、僕はこれからどうしたらよいのでしょう。
朝の渚
僕は高鳴る鼓動を押さえて、正直な気持ちを君に打ち明けた。
あなたが好きで好きでたまらないのです。
初めてこの渚で会ったときから、ぼくはあなたの恋の虜になってしまいました。
どうか僕の恋の苦しみを救ってください。
すると君はやさしくほほ笑み、ありがとうと言って手を差し伸べてくれたね。
そのとき僕のあふれる喜びは涙に変わり、世界で一番幸せな男だと思ったんだ。
ああ、神さま、僕と彼女を引き合わせてくれたことに感謝いたします。
命ある限り僕は、彼女を守り続けることをここに誓います。
夜の渚
僕たちは近くのバンガローで朝まで愛しあったね。
夏の間、バンガローは僕らの花園だった。
僕たちは時を惜しむかのように愛しあい、将来の夢をかたりあった。
そしてまた愛しあい、ひとつになったね。
僕は君といるだけで幸せなんだ。
どうか一生この幸せが続きますように。
夏が終わり君はなにも言わずに逝ってしまったね。
遠い遠い天国へ。
ああ、僕はこれからどうしたらいいんだろう。
君に会いたい、君なしではもう生きてゆけない。
どうして僕を残して逝ったのか。
ああ、神さまどうか彼女を返してください。
朝の渚
僕は一人、初めて君と会った場所に立ち、悲しい目をして沖を見つめているよ。
青い海、青い空、どこまでも続く水平線。
僕はだんだん悲しくなり、自然と涙が頬をつたっている。
いま一羽のカモメが沖に向かって飛んで行く。
ああ、カモメカモメ・・・僕もカモメになって天国まで飛んで行きたい。
たとえ翼が折れようとも、どこまでもどこまでも飛び続け懐かしい君の胸の中へ。
そして傷ついた僕をやさしく介抱しておくれ。
陽が昇り陽が沈んでも僕の愛は永遠に変わらない。
目を閉じればいつでも君に会える。
君はいつまでも僕の心の中で生きつづける。
僕は君に巡り会えて本当に幸せだった。
僕はもう泣かない。
たくさんの思い出をありがとう、たくさんの愛をありがとう。
さよなら愛しの人。
さよなら僕のビーナス。
恋にルールはありません。