後悔
はじめまして。
拙い文章ですが、楽しんでもらえるように頑張ります。
「ま……待って……アーサー様!」
友人の婚約披露パーティーを途中で抜け出したプリムローズは、突然腕を掴まれ抱き寄せられた。
見なくても相手は分かる。
ほのかに鼻をかすめた大人の男を思わせる甘い香り。
元婚約者のアーサーだ。
「アーサー様……!」
プリムローズはもう一度咎めるように彼の名を呼び、彼の腕から逃れようと試みた。
だが、そんなささやかな抵抗など意に介した様子もなく、アーサーは素早くプリムローズの唇に自分の唇を押し付ける。
「…………!?」
一瞬、何が起こったのか理解できず、プリムローズは体の動きを止めた。
腰に回された左腕と頭の後ろを押さえる右手。
唇に重ねられた温もり。
プリムローズは自身の状況に気づいて、慌てて顔を背けた。
そんなに強く押さえ付けられていたわけではないので、唇は簡単に離れる。
静かな庭園にドレスの衣擦れの音がやけに大きく聞こえた。
「プリス……」
アーサーの囁くような声と共に吐息が耳元にかかる。
プリムローズはビクリと体を震わせた。
ゆっくりと見上げるようにアーサーへ視線をさまよわせると、彼の懇願するような熱を帯びた眼差しにぶつかる。
アーサーは右手の指先でプリムローズの頬をなぞった。
そして、顎に触れ軽く上向ける。
強引だけれど壊れ物を扱うかのように優しく触れてくる指先に、プリムローズは心が屈するのを感じた。
(アーサー様はずるい……)
胸に小さな痛みを感じながら、プリムローズは瞳を閉じて愛する人の口づけを待った。