第6話 夢話と路地裏
あさられてる
「……ってことがあってね~」
「……へえ、で?」
「いいでしょ~?」
「いや、別に」
私の無反応な返答に対し、彼女……牧野亜依は夢をまるで現実のように話している。いや、夢だからこそなのかもしれない。
「その時さ~、『見つけた、俺だけのプリンセス……!』とか言ってくれたらな~」
「……」
私は彼女の思考回路がわからない。
仮にも家を半壊に追い込んだ野郎に惚れるとは……つくづく私の親友は不思議だ。
「超最高だよね~、"魔王子"……!」
「!」
私は言うべきか、だが彼女を悲しがらせるようなことはしたくないが……否、
「あ、あのさ……」
「ん~?」
「その、魔王子の魔って、悪魔の"魔"じゃないのかな~なんて」
「ッ!」
彼女は俯いたまま黙っている。よほど応えたのだろう。
「そ、そうだよね。悪魔なんていないもんね……」
亜依が悲しい顔をして、また俯いてしまった。心が痛む。
(しっかりしろ、美豊。誓ったじゃないか、亜依の両親の葬式の日……『私が亜依ちゃんを守る!!』あれは嘘だったのか? 違うだろ。落ち着け、美豊!!)
「ま、まあ以外といるかもな、悪魔」
「いたらいいね……」
「「………」」
「……でも、あの人なんか夢階君に似てた気がする」
その時の私の脳内はこうだ。
[魔王子=夢階=好き]
「……そんなに好きなのか? アイツのこと」
「へ!? いやいや、そんなんじゃないから」
「ふーん(棒読み)」
「絶対信じてないでしょー!!」
「ああ!!(キリッ)」
「も~」
(ハー……。もう、美豊ちゃんてば。私は夢階君をそんな目で見てないよ!)
私の放課後の帰り道は基本、人が沢山通る大通りだ。たまーにおかしな輩がいるが、あまり気にしない。
(大体、会って1日たったかたってないか位なのに……)
そんな事を考えていると、前に現れた障害物にぶつかった。
「きゃ!!」
道路に倒れこんだ私は尻餅をついた時の衝撃とぶつかった障害物は、おそらく人であろうという感情で中々すぐには顔を上げられなかった。
ようやく顔を上げると……
「よぉ、嬢ちゃんやってくれるじゃねぇか……」
「ひっ……!!」
そこにいたのは、いわゆるヤンキーといった類だった。
見事な金髪のリーゼント、服にはヒョウが描かれていて、袖口から伸びる腕には龍の入れ墨が入っている。
「ちょっと~な~にぶつかってくれてんの?」
「あ、あのごめんなさいごめんなさい!!!」
「あ~わかってるわかってる、悪気がないのは知ってるぜ? でも慰謝料くらい貰わないと、な?」
「申し訳ありません……!! あの、何円あれば……」
「ざっと10万程度かな?」
「じゅっ!? え!?」
あまりの高さにとても驚いてしまった。実際彼の当たった場所に10万円もの価値があるかは疑問だが、自分がぶつかってしまったことに代わりはないので、しょうがなく聴くしかない。
「あ、勿論身体で払ってもらったって構わないぜ?」
アハハ!!、彼の笑い声が響く。だが、周りは人が右往左往していて、彼の声をかきけしてしまう。
いっそのこと人混みに紛れて逃げよう、美豊ならそう判断するだろうが私の小さな身体と運動能力を考えればほぼ不可能に近い。
「ほら、路地裏に来な」
腕を捕まれて連れてかれていくが、彼の握力が強いのか、抵抗しようとしても彼の腕からは逃れられなかった。
あっという間に路地裏に連れてしまった。
「……んじゃ、始めよっか♪」
彼が私に襲いかかろうとした瞬間……
「やめろカス野郎ーーーー!!!!!!」
突然上から声が降ってきた。
私が見上げると……
「夢、階くん………?」
そこには同じクラスの夢階 明日魔の姿があった。
次回投稿予定日は2018/12/6 19:00頃です。