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妹なんかじゃないっ。(「おれと彼女は義理のきょうだい!?」改訂・完全版)  作者: 紺野たくみ


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第2章 その4 タコパの後と五月の嵐?

         4

 

 ゴールデンウィーク真っ最中のこと。

 おれ山本雅人と、伊藤杏子さん、沢口充、並河香織さんは、なんとなく、タコパを計画した。

 そう、なんとなく。

 もとはといえば五月一日、おれと親父は伊藤さんちの夕食に招待されたのが発端だった。

 親父が浮かれて桃枝さんの作った『謎の料理』を食べて倒れて、入院した。


 そういうこともあって、ゴールデンウィークだっていうのにどこにも出かける予定がなかったし。何かしら楽しいイベントがしたかったのだ。

 クラスの皆にも声をかけたら、予想以上に反響があって大人数になってしまい、そうなると場所の確保が難しく、必然的に並河香織さんの家で開催とあいなった次第である。


 もう、クラス有志のタコパなんて、かわいいものではなく。

 セレブなガーデンパーティーか園遊会かっていう趣だった。


 思ってたのと、なんか違う?


 でもまあ、いいか。

 みんな楽しんでたようだし。

 大好評のうちに終わったタコパだが、その直後。

 事件が起きた。

 退院したばかりだからおとなしくしていればいいものを「俺も行く!」と言い張って、むりやり参加した、うちの親父が、大量に用意されたタコヤキとお好み焼きを、うまいものだから食いすぎて腹痛を訴え、また病院に逆戻り。というオチがつく。腹がぱんぱんに膨らんでたもんな……。子供かよ!

 親父、本当に懲りないな!


 そんな恥ずかしい親父のことは置いといて。

 結果的には、タコパをやって良かったと思う。

 参加してくれたクラスの皆と、より親しくなれたんじゃないかな。全員と仲良くなれるなんてことまでは、期待はしていないけど。

 桃枝さんは親父のお見舞いに来てくれてるし、ちょっといい感じになってきたような。

 そんな気がする、おれ、山本雅人とゆかいな仲間たち(?)である。


          ※


「あ~あ、ゴールデンウィーク、ず~っと続かないかなあ」

「またまたぁ。雅人ってばいい加減なこと言って。毎日が休みだったりしたら、遊ぶのもネタ切れ。何したらいいか困るよ」

「充はやることないどころか、リア充だろ。香織さんと結婚するためにって、いくつ稽古事かけもちしてるんだよ。たまには休めよ?」

 大きな貿易会社の社長令嬢である並河香織さんと婚約した充は、花婿修行かってくらい、お茶にお花に礼儀作法、おまけに護身術と、日替わりで稽古事にいそしんでいるのだ。


「うん、たまにはね。それで、今はこうやって雅人と歩いてんじゃん?」

「よしよし。彼女できたって友情忘れるなよ!」


 おれは充と、吉祥寺をぶらぶらしていた。

 まず駅ビルに入ってる大戸屋で昼を食う。おれは黒酢あんかけと迷ったが大戸屋ランチとかぼちゃコロッケとから揚げ、充は焼きサバ定食と手作り豆腐だ。

 商店街を歩いて、杏子さん好みの小物がないか見て、どんなカフェがあるかチェックする。あとでデートに使えないかな~なんて情報収集も兼ねて。

 まるで彼女のことしか考えてないみたいだが、認める。世界一の彼女ができたら、みんなそうなるって!


 井の頭公園に向かい、入口近くの銀だこでタコヤキを買う。またタコヤキだ。どんだけ食ってもタコヤキとお好み焼きとハンバーガーとフライドチキンは飽きたりしない。

「あ~暇だ!」

 青空を仰いで伸びをしたら、隣を歩いていた沢口充に、思いっきり頭をはたかれた。


「はあ? ボケたの雅人? オレは忙しいの! 大事な相談があるっていうから付き合ってんのに!」

 ものすごく怒っているけど。

 小柄で童顔で美少年な、おれの従兄弟、沢口充は、どんなに怒ってみせたところで、やっぱり、かわいい子犬なのである。

 犬好きな香織さんも、そういうとこが気に入ったんじゃないかな。

 なんて思うのだ。


「ああ悪い。どっかで落ち着いて話さないか」


 井の頭公園のベンチでタコヤキを食って自販機で買った緑茶を飲む。


「大事な相談だよね? こんなとこで?」

「今さら充とカフェなんて入る気にならないし腹はいっぱいだからハンバーガーでもないだろ」

「まあね」


「実はさ。うちの親父と桃枝さん、はたで見てると、なんかいい感じになってきてるんだよな」

 おれは充に、桃枝さんが親父の見舞いにきてくれてることなどを話した。

「それで?」

 あ、なんか気のせいか充の態度が冷たい。


「でもいまいち決め手に欠けてるっていうか、もういっそ再婚してもいんじゃね? って、おれとしてはさ」

「……バカなの、雅人」

「え?」

「雅治叔父さんも桃枝さんも、いい大人なんだし、自分たちで好きにするよ。雅人が気にしてどうなるってことじゃないだろ」

「そ、それは」

「現実逃避してるだろ」

「……」

「雅人は、自分のやるべきことを、やらなきゃ」

「……」

「勉強だ、なんて、オレは言うつもりない。親父さんの恋愛よりもさ。杏子さんだよ。雅人が一番に向き合って大切にしていかなきゃいけない相手は」


「交際宣言は、したぞ」


「クラスで浸透してる? いっそ婚約すれば」

「自分が婚約してるからって! 余裕だな!」


「オレに余裕なんかないよ」

 充は、緑茶を飲みほした。

「でも覚悟なら」

 首元に掛けている銀のチェーンを引き出した。

 チェーンにつながっているのは、銀色の指輪だった。青い宝石が、きらりと光った。


「婚約指輪か!?」

「学校はアクセサリー禁止だろ。チェーンにつないで首から下げるならって許可もらってる。香織さんもおそろいの指輪を贈ったよ。48回払いのローンだけどね」


「自分で買ったのかよ」

「もちろん。あ、未成年だから親父に保証人になってもらったけど」


「おまえ、すげえな」

 おればベンチに座りなおした。姿勢を正す。

「尊敬する!」


「じゃなくて。雅人、杏子さんに、正式に申し込んでないだろ。なし崩しにしてそうだもん雅人なら」

「……う!」

 事実そうだったので、おれは何も言えない。


「将来結婚したいくらい好きなら、ちゃんと、言いなよ」

「は、はい!」


 なんということだ! 同い年の従兄弟で童顔で、弟みたいに思っていたこいつに、人生の先達のような貫録を感じるとは!


「……それは、ともかく」

「ともかくって!」


「オレも悩みがあるんだわ。まあ、ささやかだけど」

「なんだ?」


「香織さんのいとこが、イギリスから来る」


「は?」


「香織さんのお父さんのお姉さんが。イギリスに移住して、むこうで結婚して、子供がいるんだって。日本に興味があるから、来たいって。留学か観光か、まだはっきり決まってないけど。年齢は、二つくらい上だったかな……」


「まじか!」


 これが、五月の嵐(台風的な)の幕開けだったのだが、おれたちはまだ知る由もなかったのである。


「で、美人か!? だよな香織さんのいとこなんだろ!」


「雅人、バカだろ!」



ひさしぶりに更新しました。この後のエピソード、五月の話なので!せっかくです、続けて更新していくつもりであります! どうぞよろしくお願い致します。

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もしよかったら見てみてくださいね
ファンタジーです。別バージョンの、充くんと香織さんも出てきます。

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リトルホークと黒の魔法使いカルナックの冒険

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