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妹なんかじゃないっ。(「おれと彼女は義理のきょうだい!?」改訂・完全版)  作者: 紺野たくみ


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第2章 その1 伊藤さんちの冷蔵庫事情

         1


 お久しぶり!

 この物語の主人公、山本雅人だ。


 走るのがちょっと速いこと、料理ができるくらいで、スポーツはするより観戦するほう。これといって得意なこともない高校一年。


 入学式の日に出会った伊藤杏子さんに一目惚れした。

 従兄弟で幼稚園からの腐れ縁の親友、沢口充も、同じ日に杏子さんの親友、並河香織さんに恋をした。

 それがすべての始まりだった。


 いろいろあって、なんだか不思議なできごとにも巻き込まれて、やっとのことで、気持ちを打ち明けて。

 そしたら彼女も、同じ気持ちだって。


 めでたく両思いだってわかったのがほんの先頃のこと。

 リア充バンザイ! ハッピーだ!


 ……時々、自分で言い聞かせてないとわかんなくなりそうでさ。

 いったい人は、無条件で自分の人生の主人公たり得るのかな?


 ……おれもずいぶん弱気になってるな。


 というのも、おれは、ぶっちゃけ、生命の危機を感じているからである。

 現在進行形で。


 どうしよう?

 目の前に並んだ料理。

 ものすごく危険なにおいが漂ってるんだけども。

 これを作ったのは伊藤桃枝さん。


 おれが恋してる伊藤杏子さんの、母上である。


         ※


 そもそも予感はしていたのだ。

 おれの彼女(つきあっていると思っているのはもしかしたらおれだけかもしれないのだが)で同級生、伊藤杏子さんから相談を受けていたのである。

 ちなみに伊藤杏子さんはクラス一可愛い。しかも成績優秀でスポーツ万能という、できすぎなくらい完璧なカノジョなのだ。

 しかし腑に落ちない。

 不満なことがある。


 好きですって告白して両思いとわかった、そこまでは最高ハッピー。

 おれたち、思い切ってクラスで『交際してます宣言』をした。

 しかしその直後。


 沢口充と並河香織さんが『婚約宣言』をしたのだ! 

 高校に入学してまだ一ヶ月なのに!


 おかげでおれたちの交際宣言なんてかすんでしまった。

 そのせいか、クラスの誰も、おれには「やったな馬鹿野郎」「うらやましいぜ」的な生暖かいツッコミを入れてくれないのだった。


 ……まいっか、杏子さんは世界一だし! 

 おれと杏子さんは、充と香織さんの家族との婚約を祝う懇親会にも参加した仲であるのだ。


        ※


 そんなこんなで、四月も半ば過ぎ。


「ねえ雅人。雅人! 雅人おにいちゃん?」


 小さい頃の杏子さんとの縁で、おにいちゃんと呼ばれるのも悪い気はしないんだが。

 本音を言えば、おにいちゃん、じゃなくてさ~。


 家族になるのは最終目標だけど。

 その前に、カノジョになってほしいわけだよ。


 もっとカレシカノジョな甘い雰囲気になりたい。


「んあ」

「やっぱり聞いてない!」


 しまった! 怒らせた。

 うだうだ考えてたら杏子さんの話にいいかげんな返事をしてしまっていたのだ。

 しかし、怒った顔も可愛くて……困る。


「だからね。うちのママのことなんだけど」

「ふむふむ」

 ちなみに杏子さんは吉祥寺の一軒家にお母さんと二人暮らしだ。

 お父さんは……写真を見せてもらったけど優しくてまじめそうなイケメンだった。杏子さんが八歳のときに病気で亡くなったと聞いている。


「最近、ママ、料理教室に通ってるのよ」


「料理!?」

 思わず驚いてしまったおれを、責められないと思う。だって知ってるんだ、杏子さんのお母さんは料理をしない。杏子さんもだ。

 伊藤さんちの冷蔵庫に入ってるのは飲み物だけなんだ。


「そうなのよ! 雅人おにいちゃんも驚くでしょ!?」

 机をたたいて立ち上がりそうな勢いで杏子さんは言った。


「あたしもママも料理できないのよ! おいしい料理はわかるけど、作れないの」

 そこで口ごもった。

「……お父さんが料理上手だったの。ママは……台所に立てなくなって、何年も……」


 これ、聞いてよかったのか?


「でも、今、もしも、料理を作れるようになりたいって思ったのなら、なにか、ふっきれたのかなって。そしたら、いいことよね?」

 目を伏せる。

 ああ、やばい。

 もう一度、恋に落ちた。おれ。


 おれと親父が伊藤さんの手料理でもてなされる予定だとわかったのは、その数日後のことだった。


 五月一日。

 浮かれきった親父はどうなったってかまわないが。


 その日、いったい、おれの胃袋はどうなってしまうのだろうか!?

 充に打ち明けたら、香織さんとの婚約以来めっきり忙しそうになってる充は、こう言った。

「無事を祈る」


「おお。かたじけない」


「……ていうかさ、雅人。自衛手段も考えといたら?」


「はぁ?」


「人事を尽くして天命を待つ」


「……はぁ!?」


「やれることやっとけば? ほら、胃薬持ってくとかさ!」


 いつもの軽い調子で、笑う。童顔の美少年キャラである。


 あ、なんかほっとしたぞ。

 カノジョができたら男の友情なんてなくなると懸念していたのだが、やっぱり充は充だった。


 幼稚園から一緒だからな!

 よし、がんばるぞ、おれ。


 伊藤さんちのお母さんには、今のところ気に入られてるみたいだし、良好な関係でいたいのだ!


ひさしぶりの投稿です。こちらもがんばります!

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もしよかったら見てみてくださいね
ファンタジーです。別バージョンの、充くんと香織さんも出てきます。

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