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妹なんかじゃないっ。(「おれと彼女は義理のきょうだい!?」改訂・完全版)  作者: 紺野たくみ


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第1章 その38 春はまだ始まったばかり(少し直しました)


         38


 宴会はまだまだ続いた。

 明け方近くまで。


 その夜、桃枝さんに窘められたあげくに態度が悪いと殴り倒された親父と、おれは、自宅がすぐ近くだというのに並河さんちの車で自宅まで送ってくれるというのに甘えてしまった。

 親父が倒れたまま起きないし。

 ぜったい、恥ずかしくて起きられなかったのに違いない。


 仕事人間すぎる親父、バカだな。

 桃枝さんに一目惚れしましたと、なぜ正直に言えないんだ。


 実は言ってもらっても困るけど。

 なぜって息子のおれは、伊藤桃枝さんのお嬢さんである同級生の伊藤杏子さんと、恋の告白を同時にして、両思いだとわかったばかりなのだから。


 親父こそ、おれの恋のお邪魔虫なんだよなー。


 面倒な話である。


         ※


 翌日、おれ、山本雅人と沢口充、伊藤杏子さんと並河香織さんは、連れだって登校した。並河さんちの車が迎えに来たのだ。

 香織さんと充は、車の中でも隣同士に座り、しっかりと手を握り合っていた。

 もう甘いムードを醸し出している。


 二人とも高校一年生だ。婚約したことを、すぐには公表しなくてもいいかな、なんて。並河さんちも沢口家も、そう思っていたらしいんだ。


 けれど婚約の件は、その日の朝っぱらから校内に広まることになった。

 香織さんが話したのだ。


 原因は、充が意外にモテたから、だった。


 登校すると女子達がわらわらと集まって来た。

 昨日、充が学校内で大きな二頭の犬に襲われて、よだれまみれになるという事件のあとだからな~。


「沢口くんだいじょうぶ?」

「もう学校にこれるの」

「心配したわ」


 その光景を間近で見ていた香織さんは、顔を赤くしていた。

 しばらくはこらえていたんだが、やおら、我慢の限界にきたようで、いきなり充に飛びついて、ぎゅっとだっこした。

「これは、おれのだから! きのうの夜、婚約したの!」


 クラス中が、唖然とした。

 次に、騒然となった。


「え! どゆこと!?」

「婚約!!!」


 やがて誰かの声が、クラス中の意見を代弁した。

「あの~ごめんなさい、並河さんなら、もっとすてきな人が、いくらでもいるんじゃないの?」

「ねえ、婚約だなんて早まらなくても」


 香織さんは涙目でかぶりを振る。

「沢口くんは顔もいいし性格もいいし、強くて頼りになって、かっこいいよ! もてないわけない! だけど、もう、おれのだからね!」


 それを見たクラス中は、どよめいた。


「強くてかっこいいって! でも沢口くんって、顔はいいけど~ 腕力なさそうじゃない!?」

「並河さん、目を覚ましたら?」


 よかれと思って忠告してくれているようだ。


「ちがうもんっ」

 香織さんの目は真っ赤だ。

「だれよりも、充は、素敵なんだからっ」

 そう言い放つと共に。

 充のほっぺに、軽く触れるくらいのチューをした。


「だからおねがい。充を取らないで」


 教室に大きく広がる、どよめきは、やがて、静まっていった。

 あまりに香織さんが真剣だったから。


 とどめに、充が、言った。

「オレ、並河香織さんと婚約しました! 彼女が大好きだからです。成人したら結婚します!」


「……大好き」

 感激した香織さんが充に抱きついた。


 教室中は、拍手に包まれた。


「おめでとう!」

「そんなに本気だったなんて」

「うらやましい……」

「よかったね香織さん」


 女子達が立ち上がって、香織さんに駆け寄った。

 男子達は充を囲み、「おめでとう!」祝福したり「式はいつなんだ」とからかったり。



 これが、おれ、山本雅人の従兄弟で幼なじみで悪友にして、顔だけはいい沢口充と、同じクラスの美少女、並河香織さんが婚約した顛末である。


 いや~、めでたい!


 4月半ばのことだった。


 おれたちの高校一年の生活は、始まったばかりなのである!


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もしよかったら見てみてくださいね
ファンタジーです。別バージョンの、充くんと香織さんも出てきます。

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