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プロローグ その3 自己紹介は大事

         3 


 何組に、なったのか。

 驚いたことに、並河香織さんの予言通りだった。


 おれ、山本雅人。

 幼なじみで悪友の沢口充。

 桜の樹の下で出会った、ステキな彼女。伊藤杏子さん。

 彼女の親友、背の高い美人な並河香織さん。

 4人とも、同じ一年C組になったのだった。


 校門を入って正面に見えるのは、赤レンガ造りの旧校舎である南校舎で、職員室や特別教室がある。一般生徒の教室は、その奥にある3階建ての新校舎だ。


 おれたちの教室は1年C組。新校舎の3階にあった。


 教室は騒がしかった。

 高校で初めて顔を合わせる生徒が多いし、女子も男子もいっぱい。

 興奮しないわけがないのだ。

 気になる女子。目立つ男子。寡黙そうなヤツ。さまざまだ。

 クラスには男女併せて40人くらいかな。もうちょっと少ないか?

 普通科で、2年になってからは成績で分けられるって噂だ。


「あー、みんな席について!」

 背広姿の、若い教師が入ってくると、教室内は静かになった。

「あ、まだ席決めてなかったか。てきとうに座れ。俺が担任だ」

 頭を掻く、担任。


「え~、適当って」

「アバウトすぎ!」


 担任は、黒板に名前を書いた。

 あまりきれいな字ではないが、大きく堂々としていた。

 振り返ると、黒板に書いた文字をチョークで、カツッと叩いて。

岸和田保きしわだ たもつだ。30歳、独身」

 わりとよく通る声で、言った。


 きちんとしたグレーの背広姿に紺色のネクタイが、ま~似合わない。

 本当はジャージの方が合うんじゃないのか?

 痩せていてひょろっと背が高い。ちょっと貫祿には欠けるが、ま、いっか。

 濃すぎる熱血教師とかだと嫌だし。


「みんな自己紹介をしてもらおうか。出席番号順に名前を読み上げるから、返事をして、いちおう立って顔を見せてくれ。男子からだ」


 正直、野郎に興味はなかった。

 おれは山本だから、当分呼ばれないしな。


 あんまり聞いていなかったので、目立つやつとか、注意を引かれたやつしか、覚えていない。

 何人かの男子が、当たり障りの無い自己紹介をして座った後のこと。

「川野昭二」

「はい」

 立ち上がったのは、ものすごいイケメンだった。人気のある若手俳優にちょっと似てる。イケメンは、出身中学などのことを言ったあとで、付け加えた。

「音楽好きで、友人達とバンド始めました。まだコピーバンドですけど」

 爽やか笑顔である。なぜか気になった。


 あとは、やせて背の高い小林七生こばやしななおは、バレー部に入りたいとか。


 ボクサー体型、スリムなヤツ、竹内司たけうちつかさ


 小柄で小学生に間違えられますといって笑いをとってみせる、沢口充。


 テニス好きな進藤佑太郎しんどうゆうたろう


 メガネのひょろっとした繊細そうな美少年、名越森太郎なごえしんたろうは、ラーメン食べ歩きが趣味。


 がっしり筋肉タイプの宮倉宗一みやくらそういちは、カメラが好きだという。



「山本雅人」

「はい。無趣味です。スポーツ観戦は好きです」

 つい、なんとか趣味をひねりだしたくなって、こう言った。スポーツは好きなのだが、自分ががんばって選手になるとか、イメージできない。


 次は女子だ。


「秋津直子」

 日焼けした少女が、にこにこ顔で立ちあがった。

 ちょっぴりぽっちゃり。ふっくらした両頬に、くっきりえくぼが浮かぶ。肩まで伸ばした髪を二つに分けて、耳の下で束ね、細いリボンを結んでいる。

「うち岡山生まれじゃけど、転校ばっかりしとったけん、岡山弁も怪しくなっとる!」

 この子も笑いをとる系か~。


「伊藤杏子」

 おれの一目惚れした彼女が立ち上がる。

やっぱり、どうしても目をひきつけられてしまう、とびきりの美少女だ。

「えっと。スポーツ好きです」

 杏子さんは、にかっ、と。

 まるでいたずらっ子みたいに、笑った。

 うん、足が速そうな感じだ。


「上村洋子」

 メガネをかけた、真面目そうな女の子。

「取っつきが悪いと思われがちだけど、おしゃべり好きです。浅草生まれで、三社祭には血が騒ぎます」


「神崎美穂」

「ケーキバイキング大好きで~す」


「中野靖子」

「焼き肉バイキング大好きで~す」


 気があいそうな子たちだな。



「並河香織」

 彼女が立つと、期せずして、クラス中の男子も女子も、ほお~っと、歓声ともため息ともつかない声があがった。こう見て来ると可愛かったりキレイな女子がたくさんいるクラスだけど、並河香織さんは、まるっきり別格の美貌であったのだ。

 しかし彼女は、自分がそれほどの美人だと自覚があるのかは、疑問だな。

 口を開くと、ちょっぴり控えめに、伏し目がちに、こう言ったのだ。

「動物が好き。小さい頃から、大きな犬を二匹飼ってます」


「大きな犬を飼ってるんだって。いいな。それにやっぱ……彼女、キレイだな。なぁ雅人、そうだよな」

 充は、並河香織さんから目を離せない。


「おれに同意を求めるな」

 香織さんはすっごい美人だけど、おれは……伊藤杏子さんが、気になる。

 どうしても、目が彼女を追ってしまうので、おれも充のことは言えないのだった。


 そんなこんなで始まったばかりの高校ライフ。

 どうなるんだろう。


 伊藤杏子さん。


 少しでもいい、伊藤さんと仲良くなれないかな……。



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もしよかったら見てみてくださいね
ファンタジーです。別バージョンの、充くんと香織さんも出てきます。

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