第1章 その20 エイプリルフールお花見頂上合戦!(結)超常現象事件ファイル
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※ 超常現象事件ファイル file No.00xxxxx ※
『横浜富豪令嬢誘拐事件・守護精霊目撃譚』
2010年3月29日
横浜で三代に渡り廻船問屋から貿易会社を営む並河泰三社長の一人娘、香織さん(7歳)と、一緒にいた親友である伊藤杏子さんが誘拐された。
事件現場には警察に報せるなと言う書き置き及び香織さんの飼い犬二頭の死体が遺棄されており、警告と思われた。
身代金十億円が要求され即日支払われたが、二人の身柄は不明のまま。
三日後に、横浜山下公園近くの民家で不審人物と共にいると近隣住民より通報があり、警察が踏み込んだ所、殴り合い、また、銃で撃ち合うなどして負傷していた容疑者3名を現行犯逮捕した。高額の身代金の配分を巡り仲間割れしたと思われる。
香織さんと杏子さんは衰弱し意識不明であったが保護され入院。無事に回復した。
容疑者は罪状を認め、依頼人に頼まれたことだと供述した。
だが刑務所に護送される途中、2名は事故死。残る1名は逃走し、事件発生から八年を経過した現在も、発見されていない。
事件の背後関係は突き止められなかった。
当時の報道によれば並河貿易社長への商売敵による妨害説が有力視されていた。
事件後、並河貿易は業務を縮小し東京都内へ本社を移転した。
それに伴い住居も都内へ引っ越し、再スタートとなった。
※追記 ※
香織さんと杏子さんが監禁されていた現場に警察官を導いたのは、香織さんの二頭の飼い犬であった。この後、香織さんの近辺には常に二頭が、まるで護衛するかのように付き従っていた。
事件発生当初に発見されていた二頭の死体は、あとかたもなく消えていた。仮死状態にあったものが蘇生したと推測されるが、説明のつかない不思議なことである。
※追記 2 ※
なお、香織さんと杏子さんは、「守護精霊が、二頭の犬に導かれた二人の護り手を遣わしてくれた」と語った。極限状態にあった少女たちは幻覚を見たのだろうか? 具体的には『護り手』がどのような姿形をしていたのかを彼女たちは思い出すことができなかった。
ただ、守護精霊は、青みがかった銀色の長い髪をした美少女であったという。




