プロローグ ~タウン〇ワークの横のやつ~
「今日までお世話になりました」
深々と一礼する。
「あぁ、お疲れ様」
白髪頭の店長は一言だけそう言った。
ふぅ、ようやく辞められたよ。
やつれ顔のこの男、白木臣は半年ほどやっていたコンビニのバイトを辞めた。
今回で7個目のバイトか…結構長かったな、そんな物思いに老けているが、高校卒業してから大学へは行かず、就職をしたのだが見事に落ち、来年には就職しよう、とずるずる引きずり、今年で23歳。
フリーターと呼ばれる人間だった。
そろそろ本気で就職しようと、中途採用のあるバイトに就いたが、仕事が出来ず昇格はできなかった。
ハロワ行くか…、新しいバイトを探しに、ハローワ○ークに向かうことにした。
ハロワに向かっている途中、スーパーのタウン○ワーク等が置いてあるケースの所に、一際異質の雰囲気を漂わせる汚い冊子が目に入った。
普通の人は絶対に手を伸ばすことはないだろうその冊子が、臣はとてつもなく気になってしまった。
なんとなく手に取ったその冊子を開いてみた。
「特定人物:護衛…報酬銀貨3枚…?」
意味が分からない。
時給ではなく報酬?それも円ではなく銀貨?いつの時代だよ。
ほかにもたくさんの仕事?みたいなのが書いてある。
『危険指定モンスター:討伐』『危険指定モンスター:捕獲』など、難しいそうなのだったり、『紛失物:捜索』『未到達ダンジョン:探索』等々、いろいろあった。
「モンスターとか、ダンジョンとか異世界かよ!くだらないものを見てしまったなぁ!」
とか言いつつ、冊子をバッグにしまってハロワに向かった。
結局、良い仕事は見つからなかった。
「ただいまー。疲れたぁー」
まとまった金もない臣は、未だに親と一緒に住んでいる。
「かーさん、いないのー?」
やけにしーんとした家は臣の声が響いた。
買い物でも行ってんだろう、臣は二階にある部屋に向かった。
ダッダッダ、階段をゆっくり上がる。
自分の部屋のドアを開けた。
バッグを適当にベットへ放り投げ、着替えを始めた。
着替えが終わった臣は、ベットに投げたバッグから飛び出した冊子が目に入った。
あ、そういえば持って帰ってきてたんだ。しっかり読んでみよう。
パラパラと、ページを捲る。
なんかの冗談か何かと思っていたが、かなりしっかりとした詳細が書いてあったり、聞いたこともない地名っぽいものなどが記載されていた。
かなり集中して見ていたところ、知っている住所を発見した。
「○○市○‐○‐○か、『気になった際はお尋ねください』か、結構近いな」
臣は後日行ってみることにした。
仮にそんな建物が存在しなかった場合や、怪しい組織だった場合などは一切考えなかった。
ただただ好奇心のみで行くことにしたのだった。