異世界でおっさんを餌付けしてはいけません
「よかったら貰ってください」
「……なんだお前は」
「ポトフです」
「ああ?」
「私のポトフ……」
「あ、ああ……?」
突然仕事の依頼が入って、その日の内にここを発たなければならなくなった。
困ったのが朝から煮込んでいたポトフ。
私がポトフを作る時はいつも大きな寸胴いっぱいに大量に仕込む。
寸胴にたっぷり水を入れて肉を投入。ふつふつと沸騰したら丁寧にアクを取り、人参と玉葱それからセロリを加えて弱火でことこと煮込む事2時間。この時絶対に沸騰させないのがポイントだ。肉が柔らかくなったらじゃが芋を加え、じゃが芋に火が通ったら塩と胡椒で味を整えて完成だ。
本当はブーケガルニがあれば完璧なんだけど、残念な事にこの世界あまりハーブは流通していないのだ。
初日はそのままのポトフを楽しむ。大きなスープ皿にたっぷりよそってパンと一緒に。
次の日はパスタを足して、スープパスタ風に。
途中で焼いたソーセージを入れるのも好きだし、味に飽きたらトマトを入れてもいい。ルーを足してホワイトシチューに変えるのも有りだしリゾットにしても最高だ。
大量に仕込めば1週間は色んなポトフを楽しめる。つまり1週間は食材の買い物に行く必要はないし、夕飯のメニューに悩むこともないのだ。ポトフって素晴らしい!
そう、これは断じて手抜きではない。引きこもりの私が考えた大切な生きるための知恵なのである。
とにかく大量の1週間分のポトフを前に私は困っていた。
依頼を終えてここに戻って来るまで少なく見積もっても2週間。
この世界冷蔵庫なんて便利なものはないし、ファンタジーな世界でよくある時間停止、無制限かつ何でも入るアイテムボックスみたいな都合の良い物もない。
ということは今すぐこの1週間分のポトフを食べる事が出来なければ、これは全部捨てるしかないのだ。
……なんて勿体無い!
そして私は熟考の末、向かいに住む住人にポトフをまるっと進呈することにした。
折角作ったものを食べもせずに捨てるなんて、とてもじゃないけど私にはできない。
住んでることは知っていても今までロクに挨拶すらしたことのない住人だけど、背に腹は替えられない。
私が住む長期滞在者用のフラットは、半年毎に契約できるバストイレキッチン付きの2LDKだ。
一月辺りの家賃に換算すると、日本円で大体5万位。それぞれの部屋の間取りも広くしかも5万で2LDKが借りられるなんて、この世界の住宅事情は日本では考えられない位恵まれてると思う。
だけど唯一のネックは半年分の家賃の一括前払い。多少の割引はあるけど、月5万の家賃、つまり半年分約30万の一括払いはなかなか厳しい。
その所為かどうかは定かではないけど、ここに住む住民は数える程しかいない。だから当然そこに心温まる住民同士の交流なんて素敵なものは存在しない。
諸事情で自分の性別や素性を隠している私には、ある意味とても好都合な住処だったのだ。
ーーそう、私があの日ポトフを隣人にあげるまでは。
あの日私は大量のポトフが入った鍋を向かいの部屋に住むおっさんに託し、泣く泣く依頼に出かけたのだが、もしあの日に戻れるなら私は自分に言ってやりたい。
躊躇するな。鍋一杯のポトフを捨てることなんて、己の身の安寧と比べればなんの比較にもならない。
異世界で餌付け、ダメ。ゼッタイ。
予定より時間がかかり、3週間ぶりにフラットに戻った私は旅装もそのままにベッドに倒れこんだ。
今回の依頼はとにかく時間がかかり、普段引きこもりの生活をしている私には体力的にも精神的にもハードだった。
疲れた……そしてお腹すきすぎて気持ち悪い……もう私のライフはゼロ……
だがしかし! 今日の私には肉があるのだ! しかも超高級食材、ジャイアントバッファローのサーロインの塊が2キロ!
自分ではとてもだけど手が出せないこの高級肉は、今回の仕事が成功したお礼に依頼者から贈られたもの。
この塊は全部焼いてローストバッファローにして食べてやろう。ぐふふ。
そうと決まったらこんな事してる場合じゃない。肉を焼くには時間がかかる。私はベッドからむくりと起き上がると早速調理にとりかかった。
今回は2キロの塊だけど、いつもロースト肉を焼くときはもう少し小さな塊で仕込む。
美味しいローストを作るポイントは、とにかく肉を常温にしておくこと。これで中心が冷たく生焼けなんてことは大抵回避できる。
たっぷりの塩と胡椒を肉に擦り込んだらしばらくそのまま放置して馴染ませる。
その間にオーブンを高温に温めて、まずは15分程高温で焼く。それから今度は低温にして30分程じっくり焼いて、あとはオーブンから取り出して30分放置しておけば完成だ。
初日はまず肉そのものの味を楽しむ。贅沢に1センチ位に分厚くカットして、たっぷりとグレービーソースをかけて。
次の日は薄くスライスした肉をパンに挟んでサンドイッチに。いや、せっかくだから白いご飯を炊いてメガ盛りローストバッファロー丼にしてもいいかもしれない。
切り落とした端はサラダに入れてもいいし、細かくして炒飯やリゾットの具にしても最高だ。
塊り肉を焼けば数日は色んな種類のロースト肉料理を楽しめる。つまり数日間は食材の買い物に行く必要はないし、夕飯のメニューに悩むこともないのだ。肉のローストって素晴らしい!
そう、これは断じて手抜きではない。引きこもりの私が考えた大切な生きるための知恵なのである。
しばらくするとオーブンから肉が焼けるいい匂いが漂ってくる。うう、堪らん!
せっかくのいい肉、付け合わせのサラダも作っておこうと私は窓際に植えてある鉢からハーブをぷちぷちとちぎった。
この世界であまり流通してないハーブを自家栽培しようと、鉢に数種類の種を適当に蒔いて育てている。でもいつも乾燥させて粉にする程は収穫できない。成長しきる前に食べてしまうからだ。それ位新鮮なハーブのベビーリーフは美味しい。
ちぎったベビーリーフをざっと洗ってサラダボウルにこれでもかという位大量に入れる。これでサラダの準備はお終い。
後は食べる直前にお土産で買った固いチーズをナイフで薄く削って、オリーブオイルと塩胡椒を軽く振れば完成だ。
家にいていつでも新鮮な生野菜が手に入るなんて、ハーブって素晴らしい!
これは断じて手抜きではない。引きこもりの私が考えた大切な生きるための知恵(以下略。
サラダの準備が終わった所でちょうど肉が焼き上がった。
オーブンから肉を取り出して皿に移し、アルミホイルの代わりに大きな葉で上から幾重も肉を巻いて保温しておく。こうやって時間をかけて余熱で中まで火を通すことで、焼き過ぎで肉が固くなるのを防ぎ、かつ生焼けも防いでくれる。
オーブンの天板に残った肉汁は小鍋に移して、ワインを加えて煮詰めてソースにしておく。
ここまでしたら後は30分ただ待つだけ。私は今のうちに汗と埃を落としにシャワーを浴びに行った。
……やばい、視界が回って嫌な汗が出てちかちかする。無理やり転移で帰ってきた所為で魔力を使いすぎたかもしれない。典型的な魔力切れの症状だ。……はやく何か食べないと……。
シャワーから出た私はふらふらになりながら着るのが楽なマキシワンピを着て、濡れた髪を適当に編んでまとめるとよろよろとキッチンに行った。
肉、肉、と呪文の様に呟きながら震える手でロースト肉の塊にナイフを入れる。
まずは端を切り落として中を確認、のついでに一口ぱくり。……流石高級食材ジャイアントバッファローのサーロイン。赤身に脂のさしが綺麗に入り、とろけるような脂の甘さがじゅわっと口に広がる。
うまい! むちゃくちゃうまいよこれ! 端っこでこのうまさなんだから、分厚くカットしたらどれだけ美味しいか……!
私は肉の厚さを2センチに変更してカットすると丁寧にお皿に盛りつけ、ソースは別の小皿に用意する。それからサラダボウルの上でチーズを削って、オイルと塩胡椒をふったら準備は完璧。後は食べるだけだ。ナイフとフォークを手に取って、
……という所でドアをノックする音が聞こえた。
私がここに住んでる事を知っているのはこの家を斡旋したギルドの職員だけ。
そしてこの世界で私に仕事繋がりの知人はいるが、友人はいない。だから訪ねてくる人間などいる筈がない。
ーー誰だ、私の食事の邪魔をする奴は。何人たりとも私の食事を妨げる奴は許さん!
私は数秒の熟考の後、その闖入者を無視する事にした。
今は目の前の肉が大事だ。そう、汁をたっぷりと滴らせてまるで私を誘っているかのようなこの赤い……
「おい、帰ってるんだろう? 俺だ。向かいの住人だ。鍋を返そうと思って来たんだ」
ア・イ・ツ・か!
私はふうっと諦めの溜息をついた。そうか、鍋か。確かにあの鍋は大事だ。私がわざわざドワーフの親父に頼んで再現してもらった寸胴だ。……しょうがない。
私は重い腰を上げると玄関へ行きドアを開けた。
目の前に立っているのは確かに私がポトフを託したおっさんだ。赤銅色のつんつんした短い髪に同じ色の目、筋骨逞しい身体をした、むさくるしく且つ厳つい目つきの悪いおっさんだ。そしておっさんは細い目を少し開いて驚いたような顔をして私を見ている。
「……お、おう、嬢ちゃんすまないな。俺は向かいに済んでるレオンっていう冒険者だ。その、怪しいもんじゃねぇ」
「はあ」
「その、なんだ、3週間位前なんだがこの部屋に住んでる兄ちゃんからポト、いや、鍋を預かったんだ。だから鍋を返そうと思ってな。嬢ちゃんはその、兄ちゃんの知り合いか?」
「はあ……」
知り合いも何も私が本人だと言いたい所だけど、普段は私は男で通してる。このフラットでも男と言っておいた方が無難だろうか。
それにしてもこのおっさんいきなり自己紹介始めるし、そわそわしてて怪しい事この上ない。この手の輩は関わらないに限る。
私はてっとり早くお引き取りいただこうと思い、伝家の宝刀ジャパニーズ愛想笑いを華麗に披露した。
「あの、お鍋をわざわざ持って来ていただいてありがとうございました。助かりました。じゃあこれで……」
「あ、ああ……」
だけど鍋を受け取った所で私はその重さで思わずぐらりとバランスを崩し、無様にも鍋を床に落としてしまった。
スローモーションのように私の大事な鍋は落ちていく。
そしてガシャンという大きく派手な音と共に、憐れにも鍋は石の床の上に転がった。
わ、私の大事な鍋が、鍋がぁぁぁぁぁぁ……!
私が素早くしゃがんで鍋を取ろうとすると、おっさんは何を勘違いしたか慌てて私の肩を支えるように掴んだ。
「おい! 大丈夫か!」
「大丈夫、じゃない、です……(私の大事な鍋があぁぁぁ、高かったのにいぃぃぃ)」
ショックのあまり思わず涙目になってしまった私に気が付いたか、おっさんは大げさなくらい狼狽えている。
落ちた鍋を前に呆然とする私とオロオロするおっさん。
かなり笑えるシュールな絵面だと思うが、その時何を思ったか金髪碧眼のおっさんが廊下の向こうから颯爽と登場した。長身で所謂細マッチョ、昔はさぞオモテになったんでしょうねって感じのおっさん。だがしかし私の知らない人だ。誰だこいつ。
レオンのおっさんはすかさず私を後ろ手に隠し、庇う様に前に立つと剣を抜いた。ってここで剣出すか、おい!
「おいお前! 彼女からその汚い手を離せ!」
「……お前こそ何者だ」
それを見て金髪碧眼のおっさんも剣を抜いた。なんなんだこの二人、一体何がしたいんだ。
「有名なSランクの冒険者がこんな所で何をしている。か弱い女性に無体な真似をするとは……卑怯者め!」
「お前は確かギルマスの……白銀の遣い手か。お前こそここで何をしている」
「俺はここに住んでいる住人だ。さっきの音はなんだ。なんで彼女は泣いてる。お前が何かしたんだろう! 早くその女性から離れろ!」
「ああ? 俺だってここに住んでる住人だ。それに彼女は俺の知り合いだ!」
「嘘をつくな!じゃあお前××××……!」
「お前こそ××××……!」
ああ、なんか後ろでごちゃごちゃ言ってますねーわーなんか出来の悪いドラマでも見てるみたいーヤメテーワタシノコトデアラソワナイデー(棒読み)
私は後ろの存在を無視して鍋を拾う。そっとさすって確認するが、どこもへこんでないようだ。ああよかった。
この銅鍋は私の大切な思い出の品。ここに住んでしばらくしてどうしても日本で使っていた分厚い銅の寸胴が欲しくなった私は、鍛冶屋のドワーフの親父に頼み込んだのだ。
こちらの世界では銅を鍋に使う事はないらしく、親父は最初かなり渋った。それを1週間毎日店に通って、拝み倒す勢いで粘りに粘って作ってもらったのだ。
完成まで1か月もかかったし、それこそ目玉が飛び出るほど高額になったけど、そのおかげでこの鍋で作るポトフも赤ワインをまるまる1本使った煮込みも、お肉が信じられない程ほろほろと柔らかく絶品になる。今では煮込み料理にこの鍋はかかせない。ああ、我が愛しの銅鍋ちゃん、あなたが無事でよかった!
それにしても私はお腹が空いてもう限界だ。鍋も帰って来たしこの二人なんだか知り合いみたいだし、私、もうここにいなくてもいいよね?
私は鍋を抱えて立つと、ぎゃあぎゃあ怒鳴り合ってる二人に向かって伝家の宝刀ジャパニーズ愛想笑いを再び披露した。
「あの、なんだかよく分かりませんが二人の邪魔しては悪いので私はこれで失礼します。レオンさん、お鍋ありがとうございました」
「……え?」
「あ、ああ……。いや待て嬢ちゃん、さっきあんた倒れただろう。もう大丈夫なのか?」
「なっ、倒れただって? それはいけない! 私が部屋まで運んでさしあげます」
「えっ!」
いやちょっと待て、部屋まで運ぶって部屋はここだ! そんな私の心の葛藤をよそに、二人のおっさんはいきなり見事な連係プレーを披露した。
レオンのおっさんが私の部屋のドアを勝手に開けると、流れるような動作で私を横抱きにしたもう一人のおっさんがするりと部屋に入る。その後ろからちゃっかりレオンのおっさんも一緒に部屋に入るとドアを閉める。……おまえら本当は仲良いだろう。
二人は物珍しそうに私の部屋をぐるりと眺めると、目線をテーブルで止めた。そしてどちらかの喉がごくりと鳴るのが聞こえた。
「あー、その、これから彼氏でも来るところだったか。邪魔して悪かったな」
「……ああ、そうなんですか。さっきからこのフロアに良い匂いがしてたのはこれだったんですね。私も早とちりをしたようです。申し訳なかった」
「いえ、特に来客の予定はないんですが……。あの、降ろしてもらえますか」
「ああそうか、これはすまない」
私はテーブルの椅子に降ろしてもらうと改めて二人のおっさんを見た。おっさん達は明らかに挙動不審になっている。どうした、何を照れてる。おまえら乙女の部屋がそんなに珍しいか。
「その、嬢ちゃん、改めて自己紹介させてほしい。俺はレオン・マーカスター。ソロの冒険者だ。レオンと呼んでくれ」
「私はフッツベイの冒険者ギルドでギルドマスターをしてるアルバード・コーネリアスです。アルと呼んでください。お嬢さんのお名前を伺っても?」
「……アマリーです」
「アマリーか、可愛い名前ですね」
「ところでアマリー、体調はどうだ? 横にならなくて大丈夫なのか?」
「いえ、今日は旅行から帰って来たばかりで疲れてるのと、後は単にお腹が空いているだけなんです。食べれば大丈夫ですから……もう心配しないでいいですよ」
いや、せっかくの御馳走を前にして寝るって有り得ないでしょ。
おっさん達の名前とかそんな情報どうでもいい。だから可及的速やかにおまえら帰れっていう私の心情を言外に匂わせてみる。
でも当然ながらおっさん達はそんな細やかな言い回しは全く理解できなかったようだ。そして妙に嬉しそうなのは何故だ。
「そうか、食べれば大丈夫か。それはよかった。実は鍋のお礼に良い赤ワインを用意してあるんだ。今すぐ取って来るからちょっと待ってろ」
「お腹が空いていたのですね。それは申し訳ない事をしました。私も丁度これから食事しようと思ってニコで焼きたてのパンを買って来たんです。よかったらアマリーに差し上げましょう」
「はあ……」
おっさん達はいそいそと部屋から出て行くとあっという間に赤ワインとパンを手に戻って来た。
なんだその嬉しそうな顔は、そしてその期待に満ちた目は。
これはもしかして赤ワインとパンを提供するから飯を食わせろってことか? そうなのか?
私は二人の持って来たワインとパンを見て、それからキッチンにあるローストバッファローの塊を見る。
ローストバッファローは全部で2キロある。私と同じ2センチの厚さにカットしたとしても、余裕で半分は残るだろう。メガ盛りローストバッファロー丼は無理にしてもサンドイッチは余裕でいける筈。
レオンのおっさんの赤ワイン、あれはかなりいいワインだ。私だったら高すぎて手が出せない高級品。……うん、いいだろう。
ギルマスのおっさんのパン。ニコのパンは最近街で大人気であっという間に売り切れてしまう。私も目の前で売り切れになって何度涙を呑んだことか。それが焼き立てだと……? うん、焼き立ては直ぐに食べないとだな。
そして私は三度目となる伝家の宝刀を披露した。
「大したものではありませんが、よかったら一緒に食べていきませんか?」
私は1時間後、自分のこのセリフを心から後悔することになる。
「すげぇ! むちゃくちゃ美味いな、この肉! いくらでも食べれるぞ!」
「これは……、もしかしてジャイアントバッファローですか? しかもこの焼き加減、完璧です! アマリーは料理が上手なんですね。こんな料理が毎日食べられたらきっと幸せですね」
「……ありがとうございます」
「確かにアマリーの料理はいつも美味いな。この間のポトフも最高だった。なんつーか、中の肉がとろとろでよ。俺はあんなに美味いポトフは生まれて初めて食べた。……なあアマリー、よかったら俺にポトフをまた作ってくれないか?」
「……無理です」
「アマリーさん、このサラダも美味しいですね。何の葉ですか」
「……そこの鉢の草です」
「このチーズもっと食いてぇな。どこにある?」
「……もうないです」
「ああじゃあ私は肉をカットしましょうか。アマリーさんもお代わりるするでしょう? ナイフお借りしますね」
「おう、じゃあ俺はこのワインでも開けるか。アマリーも飲むよな」
「……それは私のワインだ! ていうかお前らいい加減にしろーーーーーーっ!」
結論。異世界で餌付け、ダメ。ゼッタイ。
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甘利智恵(26)
異世界での名前はアマリー、たまにアマリーチェと呼ばれたり呼ばれなかったり。
元庶務のOL(引きこもり系にして干物女子)だがある日突然異世界にトリップ。異世界でも引きこもり系干物女子を絶賛継続中。
類稀なる引きこもりの才能が異世界で見事開花した結果、こちらの世界での職業は結界士。
あらゆる外敵から身を守る強固な結界(しかも広範囲)が評判となり、気が付いたらAランクに。
黒髪で女だとばれると聖女認定されて大変なので、性別と外見を隠しているという設定。
ちなみに二つ名は「オニキスの護り手」。智恵の結界が見える人によるとオニキスの様に黒く輝いているからとか。でも本人は厨二病的二つ名を嫌ってる。
レオン・マーカスター(32)
向かいの住人でかつての英雄。いまはただの極悪顔のおっさん。実は嫁募集中。二つ名は未定。というか色んな設定が未定。
アルバード・コーネリアス(38)
廊下の端っこの住人で怪我で引退した元Sランク冒険者。現在はフッツベイのギルマス。実は嫁募集中。二つ名「白銀の使い手」の由来は単にミスリルソードを持ってるから。
この後智恵の料理に惚れ込んだ二人は度々彼女の部屋を訪れるが、彼女の強力な結界に阻まれてなかなか料理にありつける機会はない。らしい。
そして二人の実年齢を知った彼女が驚いて、おっさんちゃうやんと呟いたとか呟かなかったとか。