出会いの日 5
よろしくお願い致します。
会場の外にあるバルコニーから見える広間の中央では奏でられた音楽に合わせて色鮮やかなドレスが舞っていた。
その中でも一際目を引く対となった紺色の衣装を着た男女を見つめている少女にカリカは声をかける。
「気分もよくなったみたいだね。」
逃げるように退出したシャロンを追いかけたピアからカリカは、バルコニーで体調不良の者が居るならば介抱するようにと命を受けていた。
ピアの言葉を不審に思いながらもバルコニーに出てみると言葉通り体調が優れない状態の少女がそこにいた。
命に従い介抱した少女をピアの愛人とも疑ったが、一切の見覚えのなさとピアのシャロンへの溺愛ぶりから可能性の低さを感じた。
「はいっ、大分良くなりました。ご迷惑をお掛けしまして申し訳ありません。」
「気にしないで。」
恐縮した様子の少女にカリカは柔らかく笑いかけた。
それに肩の力を抜いた少女は再び空色の瞳を輝かせて広間へ視線を戻す。
「・・・気になる方でもいるのかな?」
「はい。皇太子様と婚約者様のお二人がとても素敵で・・・。」
広間で踊るピアとシャロンの姿に見惚れている少女からは憧憬しか感じられなかった。
「ミルトニア、そこにいるのか?」
「お父様っ。」
バルコニーへ出てきた男性の姿に少女は腰掛けから立ち上がって男性へと歩み寄りいくつか会話を交わす。
男性は少女に労わるような表情をした後、カリカの方へと歩いてきた。
「娘を助けていだだき感謝いたします、カリカ様。男爵を拝命しておりますダレルと申します。」
「お気になさらないでください、偶然居合わせただけですから。」
「娘は身体が丈夫ではなく、本日初めての社交場ではしゃぎ過ぎたようでして。」
困った顔で笑う男爵に、ミルトニアと呼ばれた少女は顔を赤くして俯いた。
「大事に至らなくて良かったですよ。それでは、私はこれで。」
「ああ、お引き留めして申し訳ありません。本当にありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
深々と頭を下げるダレル男爵親子に軽く会釈を返してカリカは広間へと戻っていった。