出会いの日 3
お待たせしております。
夜会の広間を出たシャロンは、今日の夜会の主催者から割り当てられた客室へと戻る。
侍女に部屋の明かりを灯してもらうと休みたいからと伝え寝室へ向かい、ベッド隣のサイドチェアーへと腰かけた。
目の前に浮かぶのは離れた所からピアを見つめるミルトニアの姿。
今日の日を迎える前から、今日の夜会に来るであろう彼女の姿を探さない様に見つけない様に自分に言い聞かせて来た。
万が一、出会った時に平常心で笑って対応できるように何度も頭の中で繰り返し想定した。
諦めていた時は彼女とピアの仲睦まじい姿を見ても、少しの胸の痛みとささやかな嫉妬心はあれど恐怖なんて感じなかった。
なのに、ピアと想いが通じた瞬間から彼女に会うのが怖くなった。
また最初の頃のように嫉妬に心を焼き尽くされた自分に戻ってしまうのではないか。
同じ過ちを繰り返したら今度こそピアは愛想をつかすだろう。
私の行動1つでピアが離れていくのが怖い。
私への愛より、ミルトニアへの愛が勝ってしまうのが怖い。
ピアのことを信じていないわけではない。
私が人に愛されるという自信がないのだと思う。
私を愛する人より、ミルトニアを愛する人の方が多いだろう。
彼女は純真で美しい娘だから。
彼女が近くにいると自分の醜い部分を浮き彫りにされるようで嫌だった。
どんなに着飾っても取り繕えば繕うほど彼女のようになれないと思い知る。
それが嫌で、苦しくて、辛くて、憎くて。
だから最初の人生では彼女にあのような酷い仕打ちが出来たのだろう。
人生を繰り返す内に私は変わろうと思った、変わったと思った。
でも、この心に宿る妬みは私が何一つ変化できなかったことの証。
(私は私以外にはなれないのね。)
そして、私は逃げた。
ミルトニアからピアから、醜い自分から。
正面から対決する自身も勇気もなく、何も見なければ知らなければ一番楽だから。
「・・・嫌な女ね、私。」