出会いの日 2
「殿下、カーライル嬢はいかがされましたか?」
「ロード。シャロンは疲れたから控えの部屋に下がると。」
制止の言葉をかける間もなく足早にシャロンが立ち去った後、ロードとカリカが傍に来て声をかけられる。
ピアはシャロンが去った方向を見て答えるがシャロンの姿はもう見えなくなっていた。
「今日の彼女は少し様子が変だった。」
「そうか~?いつもと変わらないけどな。」
ピアには今日のシャロンは『以前のシャロン』のように思えた。
言葉や態度がどこか余所余所しく心に壁一枚隔てられたように感じられ、シャロン自身も何かに怯えているようにも見えた。
瞳の奥が恐れと不安が覗こうとするのを必死に隠しているような。
(・・・シャロンは何を見ていた?)
先程シャロンが見つめていた場所へ視線を移す。
どこをみても色とりどりの人の群れがある、ただそれだけの場所ばかりだ。
1つだけいつもと違うのは、人波に紛れてふわりと吹いた風にすらさらわれてしまいそうなドレスを纏った少女がピアを見つめていたことだった。
「・・・・ミルトニア。」
ピアは柔らかく波打つ金の髪と済んだ空色の瞳を持つ少女の名を小さく口にした。