日陰者
なるみちゃんは可愛い。でも、私はちっとも可愛くない。私たちはなんだかんだ言いながら仲良くやってきたけど、今回はもう無理、限界だった。
放課後に二人で一緒に帰っていたところに自動車が突っ込んできて、私は重傷、なるみちゃんは軽傷だった。そのときは、ああ私でよかった、なるみちゃんじゃなくて、って。心の底からそう思った。私は入院してなるみちゃんはすぐ家に帰ることができた。
次の日、なるみちゃんはお見舞いに来てくれた。それはとても嬉しかったけど、すぐに悲しみと悔しさに変わった。
クラスメイトたちがお見舞いに来たのだ。彼らはなるみちゃんの心配ばかりして、私には何も言わなかった。まるで、そこに私がいないみたいに。
「出てって」
なるみちゃんは人気者だ。今まで、何度なるみちゃんと一緒にいることを責められたか分からない。
「出てってよ!」
なるみちゃんはみんなのものなのだ。私以外のみんなの。
「出ていってってば!」
クラスメイトたちは思いつく限りの悪口を置いていき、しらけたとばかりに病室から出て行った。舌打ちが聞こえた。
残ったのは怒鳴り散らして興奮している私と、少し怯えたように小さくなって泣きそうななるみちゃんだった。なるみちゃんが何か言う前に私は先手を打った。置かれた悪口を散らかすようにイヤミを言う。私はなるみちゃんがクラスメイトたちに囲まれて困った顔をしていたことに気づいていたけど、意地悪な気持ちは止められなかった。
「なるみちゃんも出ていけばいいよ」
なるみちゃんは何も言わずに出ていった。
なるみちゃんは可愛い。でも、私はちっとも可愛くない。