息をするように
確か、高校二年の時分だったと記憶している。
「まあ、人って死ぬけどさ。死んだ瞬間にまた生まれてくるとしたら、どうする」
死に魅せられつつもそれに怯える僕を知ってか知らずか、試すように問うた彼は、この時のことを覚えてくれているだろうか。
彼の発言は僕にとって衝撃的だった。
僕の返しはこうだった。
「そんなのは恐ろしい。人生と人生の間に、ちょっとくらいは休憩がほしい」
僕が覚えていないだけかもしれないが、死に関する話はそれきりだった。この話を僕が思い出すのはもうちょっと後になってからのことだ。
誰に言われたのかはもう曖昧だが、台詞はよく覚えている。
「まあ、人は死ぬ運命にあるけど、どうせ死ぬなら後悔だけはしたくないだろ。特に死ぬ直前」
死ぬ直前に後悔することを想像してみる。
「ワシにはまだまだやりたいことが……(パテッ)」
「せめて、嫁さんだけでも大事にしたかったのう……(パテテッ)」
「最後に、ハンバーグ、食べたかったねえ……(パテテン)」
恐ろしすぎた。彼の発言の比ではない。だが、想像してみればそれはとてもリアルで、自分の死のシーンに後悔なんて一番ありそうな形であった。
逆に考えれば、死んだ瞬間にまた生まれてくるなんてスーパー○リオブラザーズよりもハイパー都合がいい。何度でも挑戦できるじゃないか。
いや、何かで息をするように行動ができなければならないとあった。そういう精神で人生に臨まなければいかん。後悔する人生を歩んだ者は同じ道を辿るに違いないのだから。