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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

最後の手紙

作者: 石津 紫黒
掲載日:2026/04/18

少し、内容が重く、暗いので苦手な方はブラウザバックをおすすめします。

貴方は私の明星(みょうじょう)でした。

これが彼が私に残した最後の言葉だった。


彼は私の人生を狂わせた最低最悪なクソガキ、、、いえ私の教え子でした、、、

私の名前は金宮 星架(かなみや せいか )月花(げっか)大学に勤めるしがない教員です。

私が初めてこの大学で講義をしていたとき、私は天使に出会いました。

「あれ?先生変わっちゃったの?あのおじいちゃん先生好きだったのに、、、」


アルビノの彼の名は城咲 銀河(しろさき ぎんが)。大学に来て二度留年している子でした。

何も不良生徒というわけではありません。

誠実とも言えない子でしたが、、、、。

ただ、彼は持病とアルビノの影響で、学校に来ることができる日が少なかったのです。

私が、彼と出会ったその次の日に倒れて入院してしまうほどに。


その頃新人で、使いっ走りにされていた私は、彼の様子を見に病院へ通う事になりました。


「城咲 銀河君調子はいかがですか?」

そう問いかけると、彼はキラキラと輝く長いまつげを(またた)かせて、不思議そうにこちらを振り向く。その姿はどこか焦っているようにも見えました。

「あんた誰?」

彼の儚い可憐な容姿に似合わない、荒々しい言葉が飛び出してきたことに驚いているうちに彼はさらに言葉を紡ぐ。

「あぁ思い出した!昨日のぱっとしない先生でしょ!」

本当に失礼な子です。まぁ確かに彼とは違って茶色く無造作に伸びて目にかかっている髪も、そのへんから取って来たような服装もみすぼらしくはあるのですが、、、

それでもいきなり初対面の人に向かってぱっとしない、は無いでしょう、、、

まぁそんな事を言ったって何も始まりませんから、良いのですが。

「はい、君が昨日先生が変わって残念そうにしていたときの助教です。

先輩方に君の様子を見に行くよう言われたので来ました。で、調子はどうなんです?」

そう聞くと、彼は少し目を伏せ、悲しそうに言いました。

「俺はもう退院できないんだって、余命ももう1年もないみたい」

私は息を呑みました、私よりも10つほど離れている彼が、あと1年もしないうちに命を落としてしまうなんて、、、

「そうですか、、、すみません酷なことを聞いてしまって」

「ふふっ、せんせー優しいんだね。名前何ていうの?」

「金宮 星架です。」

「ふ〜ん」

彼は生返事を残して黙りこくっている、と思えば唐突に喋り始めました。

「じゃあ先生で!先生明日暇?」

「名前覚える気ないじゃないですか、、、暇ですが?」

「そ〜んなことなぁいよぉ。ねぇ先生!明日もお見舞いに来てよ!病院なんて退屈でやんなっちゃう!」

私は彼の言葉に少し呆れながらも、彼の寂しそうな目に思わず了承してしまった。


その日から私は毎日彼の病室を訪れるようになった。

私の専攻教科である国文学の勉強を教えたり、絵を描いたり、彼の好きな天体の話をしたり。

なんだかんだ私は彼のことを気に入ってしまい、最近は自分の意志でお見舞いに来ている。


「金宮さんこんにちは。今日も城咲さんのお見舞いですよね、今別の方もいらっしゃっていますがどうなさいますか?」

「そう、なんですね。では、病室の近くで待たせていただきます。」

「分かりました、それではどうぞ」

彼の病室へ進むように促され、私は素直に前に進む。

私が彼の見舞いに来るようになってから5ヶ月が経つが、私以外のお見舞いが来ているのは初めてだ。

私は彼の病室の前にあるベンチに腰掛ける。



「それでは、もう貴方に用はありませんので帰らせていただきます。さようなら」

冷たい声色とともに彼の病室から出てきたのは私よりも一回り年上といった感じの厳しい空気を纏う女性でした。


「城咲くん?大丈夫かい?」

「っ、うん、大丈夫」

そう言ってこちらを見る彼の表情はあからさまに落ち込んでいた。

「城咲くん、本当に大丈夫ですか?」

「っっ、、大丈夫っ、、ていってるじゃん、、、」

彼の大きな瞳から涙が溢れ落ちる。

「忘れてあげますから、全て吐き出してしまいなさい」

私はベッドに腰掛け、彼を抱きしめる。

「っ、おか”あさんがっ、も”うっ、あん”たなんていら”ないって、

治りもせずに、お金がかか”るだけだってわ”かってたら産まなかったのにって

も”っとお金がかかる前にさっさと逝きなさい”って、、、」

「そうかい、それは酷いねぇ」

「俺だって、迷惑かけ”てるってわ”かってたけど、、き”っと、、、きっと愛してく”れてるって”思ってた”のに」

「うん、、、」

彼の悲痛な声が耳元で発せられる。段々と生きが荒くなっていく彼になんと言えば良いのかわからない。でも、、、彼をこのまま放って置くことはできなかった。



「ごめんね先生迷惑かけて」

「、、、何のことですか?」

彼は私の答えに目を見開く。そして少し悲しそうに微笑んで「ありがとう、、、」と呟いた。



それから1週間後私が書類の整理をしていると、突然私の携帯が震え始めた。

「もしもし金宮 星架です」

「こちら  病院です。ただいま__________」

「は、、、」


私はすぐに電話を切り、車に乗る。

いやだ、信じたくない。どうして、まだ半年も経っていないではないか。昨日だって、私と星の話をしていたのに。

こんなときに限って道路が渋滞している。クソッこれなら走ったほうが早い。

私は車を乗り捨てて急いで病院へ向かう。


「城咲くん!」

「、、、、せんせ、、なの?」

彼の口から漏れ出るような小さな声がする。目が見えていないのか声の出どころを探るように手を伸ばす。私はその手を握った。

「ああ、私だ」

「せんせっ、、あのね、、、俺、幸せだったよ、、、

せんせが、毎日来てくれて、、、いろんな話聞かせてくれるの、、、楽しくて、、、

今まで、ありがとね、、、」

彼の苦しそうな喘鳴が聞こえる。

「いやだ、そんな言い方をするのはやめなさい!」

「あは、せんせが怒ってんの、、、初めて、、みたかも」

そう言いながらも彼の手の力はだんだんと抜けていく。

「ああ、せんせ、、、泣かないで、、、せんせの、、せいで、、、、俺、、、、、死にたく、、、、」

_________________心電図の警戒音が鳴り響く。


それからの記憶は、あまりない。

彼の心臓はもう動かなくなってしまって、死亡宣告。

彼の体が拭かれ、葬送の準備が始まる。

親族に連絡をしたらしいが、誰も応えなかった。

彼は生前私に葬儀をしてほしいと話していたそうで、彼の望み通り、私一人の目の前で火葬された。

私は彼の遺骨と、病院から預かった彼の遺書を両手に抱え、夜の海に出た。



海の真ん中で、ところどころインクの滲んだ遺書を開く。

『先生へ

貴方がこれを読んでいるということは、きっと私は死んでしまったのでしょう。なんちゃって、。

先生、俺の死目には会えたのかな。』

「会えたよ、、、すごく怖かった」

『俺、先生のお陰で幸せだったよ。

ほら、俺親があんな感じだからさ、小さい時から愛?ってやつを感じたりすることがなかったんだけど、先生だけは毎日俺に会いに来てくれて、愛ってこんな感じなのかなって思えたんだ』

「あぁ、愛してたさ」

『俺も先生の顔見たり、声聞いたりしたら嬉しくなって目の前が明るくなって。あぁ恋って、愛ってこういうものなんだって思って。

俺の初恋先生になっちゃって、男同士で恋なんて気持ち悪いだろうけど、知っててほしかったんだ』

「変じゃないよ、私も愛してる。」

『ほんとありがとね先生、星架先生はずっと俺にとっての明星だったよ』

「適当な文章書きやがって、、、、」


俺は彼の遺骨を腕に、ボートの縁に立つ。

「さて、君が居るなら私は銀河の果てだって追いかけましょうかね」



誰も知らない夜の海で、揺れの落ち着いた水面には輝く満天の星空が映っていた。

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