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ルンバと掃除機の戦い※喧嘩するな

作者: 山崎 桜
掲載日:2026/04/09

マジで聞いてほしい。

僕の家にはルンバがある。そう、あのルンバだ。で、掃除機もある。ダイソンのコードレス。で、ここからが本題なんだけど――この二つ、なぜか敵対してる。


ある朝、リビングに行ったら、ルンバが部屋の真ん中でじっと止まってて、その向かいにコードレス掃除機が直立不動で立ってた。コードレスなのに、なぜか“構え”がプロ。ルンバは「ピッ…」って電子音で威嚇してるし、掃除機は「ブォォ…」って低音で返してくる。いや、家電同士で威嚇し合うなよ。


僕はコーヒーを片手に、二台のにらみ合いを眺める。最初は「またか」くらいの気持ちだったんだけど、今回は違った。空気が西部劇の決闘みたいに張り詰めてる。どう見ても勝負をつける気満々だ。僕は慌てて止めに入る。「ちょ、喧嘩すんな!掃除する前に部屋汚すな!」でも二つとも聞いてない。


ルンバは突然くるくる回り始め、掃除機は急にターボモードに入って床のホコリを吸い上げる。吸引力と自走のコンビネーションが噛み合わないせいで、ホコリが舞って舞って、結果的に部屋は掃除前より汚くなった。カーテンの裾に溜まってた綿ぼこりが空中散歩を始め、僕は咳をしながら「何やってんだよ」と呆れる。隣の部屋から猫が飛び出してきて、舞うホコリに向かってジャンプする。猫は得意げにホコリの一部を捕まえるが、すぐに「これ掃除の邪魔だな」とでも言いたげに去っていった。


で、ここが一番笑えるところなんだけど、僕が真顔で説教すると、二つともピタッと止まるんだよね。家電なのに反省してるみたいな空気を出してくる。ルンバはゆっくり回転を止めて「ピッ」と小さく鳴り、掃除機はブォォの音をフェードアウトさせる。妙に律儀で腹が立つ。僕はついでに「お前ら、掃除の意味わかってる?」と続けて説教する。すると掃除機が軽く震えてバッテリー残量を示すランプがチカチカし、ルンバは充電ドックの方をちらっと見る。要するに、二台とも“見栄”で張り合ってただけだった。


驚いたことにほんの数分で部屋はきれいになっていた。ルンバが家具の下や角をくるくる回ってホコリを集め、掃除機がその集められた塊を一気に吸い込む。動きがシンクロして、見ていると漫才の掛け合いみたいにテンポがいい。ルンバが小さく回って合図を送り、掃除機がそれに合わせて前進して吸い取る(まあ僕が動かしているんだけども)。まるで長年のコンビのような息の合い方だ。


僕はコーヒーを淹れてソファに座り、部屋を眺める。なんだかんだで、役割分担がはっきりしていると効率がいい。ルンバは細かいところを拾い、掃除機は一気にまとめて吸う。僕は心の中で小さく拍手した。家電の喧嘩は面倒だけど、結局は「得意なことをやる」って話で落ち着いた。


そんな日々の繰り返しが続くうちに、僕は気づいた。家の中の小さな争いは、僕にとってはちょっとした娯楽であり、癒しでもある。二台が張り合うたびに僕はツッコミを入れ、二台が協力するたびに僕は安心する。ルンバと掃除機の小さな戦争は、結局は僕と家電たちの共同作業になっていった。


夜、充電ドックに収まったルンバと、充電スタンドに立てかけられた掃除機を見ながら、僕は思う。明日もまたどんな騒動を起こしてくれるのか、と。少し面倒だけど、退屈しない毎日がここにある。家電たちの小さな喧嘩は、僕の生活にちょっとしたスパイスをくれる。だから今日も、僕はそっと電源を切り、明日の決闘に備えてコーヒーを淹れるのだった。

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