表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/8

第七話:法則の歪み、王都への侵略

カインは、無限の魔力から錬成した**『信仰』によって、リーフ村の法則を恒久的に書き換えた。この法則の操作は、世界の定数に歪みを生じさせ、教団の神官の常識として知られる異物、『世界のバグ』の出現を招く。

カインとエリカが、リーフ村の復興を見守っている時だった。


突如、空間が引き裂かれるような甲高い「音」と共に、漆黒の靄を纏った異形の影が、村の広場に現れた。それは、村に満ちる高濃度の信仰エネルギーに引き寄せられた、世界の歪みそのものだった。


「エリカ。村人を安全な場所へ避難誘導しろ」


カインは魔物を睨みつけながら命じた。


エリカの怯えきった顔を見つめて伝えた。


(この娘は、目の前の異形が神官の常識として知られる『世界のバグ』だとすら知らないのだろう。ただ一心に祈ることしか教えられなかった……この「ただの駒」に、俺はなぜ意識を向けているのか)


カインの脳裏に、一瞬の自嘲が走る。自嘲を振り払い、エリカが避難誘導に走り去ったことを確認したカインは、すぐさま無限の魔力から錬成した信仰の質量を、魔物へと叩きつけた。


「【神力錬成】。権能『法則操作』を発動。法則:『魔物の負の存在法則を、人間の肯定的な存在法則へと強制的に上書きする』」


純粋な信仰の奔流が魔物を飲み込む。信仰の奔流が収束し、そこに立っていたのは、燃えるような真っ赤な髪を持つ、魅惑的な一人の女性だった。


女性は、カインへ向けて、挑発的な笑みを浮かべた。


「お前みたいな、世界を書き換える法則を扱う奴が、なぁーによ?…この程度の法則の中に閉じ込められているのか?」


女性の言葉に、カインは即座に反応し、支配下に置くための王都への転移を命令した。


「ターゲット:【元・世界のバグ】。お前は今から、俺の支配下にある。共に王都の教団本部裏路地へ瞬間転移するぞ」


女性は、その命令を聞き、冷笑した。


「ふふ、私に命令?お前は法則を知らないのねぇ」


「お前は俺の命令に従う『法則の依代』として行動してもらう」


カインは、女性と共に権能『瞬間転移』を発動させた。


一瞬の浮遊感の後、カインと女性は王都の寂れた路地裏に降り立った。


女性は、王都に満ちる神々の薄い信仰の層と反発し、苦悶の表情を浮かべた。王都に転移したその瞬間、女性の体が光を放ち、快活な少女へと変貌した。


カインは、その光景に驚愕する。


「あんた、ボサッと立ってないで!早く行くわよ!こんなところで油売ってる場合じゃないでしょ!」


少女はカインの手を引こうとする。


カインは驚愕し、即座に少女を抱え、リーフ村へ瞬間転移で戻った。


王都での実験は予期せぬ変質という結果に終わった。


リーフ村に戻った瞬間、少女の体が再び光を放ち、元の魅惑的な女性の姿へと戻った。


「なっ――」


この現象を目撃したカインは、脳内でステータス画面と、王都での魔物の反応を照合し、真の原因を考察し理解した。

「――なるほど。王都では、周囲の信仰濃度と俺の与えた信仰がぶつかった影響で法則の上書きが不安定になり、人間の『年齢の法則』が不安定に変換されたのだと理解できる。リーフ村の濃厚な信仰に戻ったことで、肉体の法則が女性の姿に定着した、というわけか。命令を忘れていた…これは恐らく記憶――『世界のバグ』としての記憶領域――も後退していた可能性もある」


女性は、カインが法則を理解したことを察し、口角を上げた。


「お前はさっき、私に王都への転移を命令したよねぇ?あの純粋な聖女の前で、いや、王都でばらしてしまおうかしらぁ?」


世界を書き換える法則を扱う奴という発言から究極権能への手がかりとして生かしておかなくてはならない、が王都程の数が敵にまわるのはまずい。


カインは手元に置くことを最終決定した。


「お前はパラレと名乗れ。人間としてな」


魔物――否、パラレを人として法則の上書きしたのだ。


その後、避難誘導を終えて戻ってきたエリカへと向き直った。


「エリカ。行くぞ。この者は、俺が新たに手に入れた依代だ。お前は、引き続き俺の法則を運用する聖女として、共に旅立ってもらう」


「代理執行者様!はい、喜んで!」


エリカはカインの隣を歩き出した。


カインの異端の旅路に、新たな殺せない道具である女性(魔物)が加わった瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ