第二話:信仰の錬金術師、無関係な神に「信者」を付与する
森を『聖域』に変えたカインは、自身の『信仰』ステータスと、周囲の空間に浸透した信仰エネルギーに満足していた。半径10キロ圏内は、カインが発動する神聖魔法の威力が跳ね上がり、彼にとっての世界となった。
しかし、この力の使い道はまだ序章に過ぎない。
カインは、誰もいない空間に向かって語りかけた。
「さて、次は実証実験だ。信者を介さずに『信仰』を生成する俺の力が、他者、特に『神』と呼ばれる存在に対してどのような影響を与えられるか」
彼は再び隠しステータス画面を開き、**【神力錬成】**のメニューから、特殊な機能を選択した。
[機能:『信仰』の外部譲渡・付与(ターゲット指定必須)]
通常の神官にとって、信仰は集めるものであり、操作の対象ではない。ましてや他者に、それも特定の神に、自分の作った信仰を注入するなど、神への冒涜であり、技術的にも不可能だ。だが、カインのユニークスキルはそれを可能にする。
「ターゲット:【衰退の女神・リリス】。理由:神格が弱まり、信者も絶えた『無力な神』への介入は可能なのか…」
カインは、自身の『信仰』ステータスから、わずかな量を消費するコマンドを入力した。
[システム:『信仰』 100,000 を消費します。] [システム:ターゲットへ、消費分の信仰エネルギーを『熱心な信者 100人分の信仰』として付与します。]
その瞬間、カインの体から抽出された『信仰』のエネルギーが、金色の光の奔流となって森の上空を貫き、どこか遠い神界へと向かったのがカインのみは視認できた。
カインは手を止め、結果を待った。彼は知っていた。これはただのエネルギー譲渡ではない。カインが作った『信仰』は、それがどの分類であろうと、信者の祈りそのものと同じ効果を持つ。
数分後、カインの頭の中に、甲高く、しかし微かに震えた女性の声が響いた。
『な、何が起こった!?この温かい力は……信仰!?この時代に、なぜ突如として、100人もの熱心な信者が私を……?』
「成功だ」カインは口元を緩めた。
「俺は、信者がいない神に、信者を介さずに信仰そのものを与えることができる。『信仰の錬金術師』とでも呼ぶべきか」
次にカインは、さらに複雑な操作を試みた。
「ターゲット:【教団長アルヴァロ】。理由:教団を牛耳る俗物。自身の信仰ステータスは高いが、神への忠誠心は低い」
[システム:『信仰』 5,000 を消費します。] [システム:ターゲット【教団長アルヴァロ】へ、『狂信者 1人分の信仰エネルギー』として譲渡します。]
この信仰は、神へではなく、人間自身へと直接譲渡される。付与された信仰は、対象の自我や価値観に干渉し、その人間が信仰する神への影響を歪ませる。
その頃、王都の教団本部では、豪華な書斎にいた教団長アルヴァロが、突如として顔を覆い、苦悶の声を上げていた。
「う、うあああ……我が神よ!ああ、何と浅ましい!私はなんと永きにわたり、貴方の純粋な教えを歪めていたのか!全ての権威、財産、全ては無意味!神の教えは、もっと純粋な貧困と苦行の中にあるべきだ!」
カインは森でその精神的な波紋を感じ取った。
「よし。狂信者の信仰の力は、個人の理想を神に投影する。教団長は今後、狂信者として教団の教えを貧困と苦行へと歪め、自滅に向かうだろう」
カインは手を下すことなく、無限の魔力から錬成した『信仰』を操作することで、遠く離れた人間と神の運命を自在に操り始めた。彼の力は、世界の法則だけでなく、信仰という根源的な概念すらも書き換える、真の異端の力だった。
[FIN]




