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オプト・オプス  作者: ほんめじ


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8.遺物取引

「うーん、外寄りかなー。」


あれからそこらにある普通の店を探しても無意味だとわかったため、今度は都市の最も外側にある区画に向かうことにしたらしい。

その辺りはスラム街とまでは言わないが、比較的貧困層が暮らしており、外側に向かうほどそれが顕著である。

また煩雑な土地の性質故か、犯罪組織の巣食う無法地帯としての側面も併せ持つようだ。

そしてそれが都市に見逃されている点も着目すべきであろう。

治安が悪化することを許容してでも取り締まらないのは、それだけの価値があるということだ。その区画が全く整理されておらず、再開発の気配もまるで見られないことも同様の理由だと思われる。


その区画は人も建物も、都市が手を加えなくとも勝手に増えていく。

そうして出来上がるのは無料の防壁。いくら個として脆くとも、数が増えれば強固になる。モンスターという外敵から都市を守るため、予算を割かなくても分厚くなっていく防壁なのだ。

そしてそれは本来守るべき城壁内からは程遠く、城壁内への治安悪化の影響は全くないのだ。

外聞が悪くなりそうなものだが、どこの都市も似たような状況ならばその心配もないだろう。

であればそれを利用しない手はないわけで。

今後、再開発の目処でも立たない限り都市は我関せずを貫くことになるだろう。


そうした区画であるからこそ、彼の探している店も存在する可能性がある。

そのため足を運ぶのだ。多少の危険は覚悟してでも。



「なんか囲まれたなー。」


しばらく歩いていると、何者かに周りを取り囲まれたようだ。

だが気づくのが早かったため、その者達との距離はまだまだある。逃げようと思えば容易だろう。


「ちょうどいいやー。聞いてみよー。」


いったい何を聞くつもりなのだろうか。

まさか遺物取引ができる場所でも聞くつもりだろうか。

どう考えても答えてくれるわけがないというのに。

少々理解に苦しむが、逃げることはせずに待ち受けることにしたようだ。

そう決めるやゆっくり歩みを進め、あえて人通りのない路地裏に入り込んだ。


「おい!兄ちゃん見ねえ顔だな!」


しばらくすると追いついてきた男達のうち、最も体格の良い男が声をかけてきた。


「おー。まーねー。ところでこの辺に雑貨屋ってないー?」


相手への返事は適当に、一方的に話題を転換して用件を伝え出した。


「あ?わけわかんねえこと言ってねえで金出しな!それからその荷物も渡せ!そうすりゃ命だけは助けてやるよ!」


男がそう言うと、周りの男達も含め全員が銃を突きつけてきた。


「あー、それ向けたら終わりだねー。」


その刹那、男達全員の首が飛ぶ。


「ニオスフありがとー。」


いつの間にか展開されていたNiosphが、ブレスレットに格納されていく。


「教えてくれなかったねー。」


それは予想通りであるが、こうもあっさりと会話を諦めるとは。

もとより大して聞く気はなかったのかもしれない。


「またぶらつくかー。」


男達の死体はそのままに、気にする素振りすら見せずにその場を立ち去っていく。

改めて遺物取引ができる場所を探すつもりらしい。

はたして見つけることができるのか、そもそも存在するのかどうか。

先が思いやられる始まりであった。



「うーん。よくわからんねー。」


あれからというもの、何も見つけられずに最も外側まで来てしまった。

ここに来るまではかなりあっさりとした道中で、本当に探すつもりがあるのかと疑いたくなるほど、ただただ真っ直ぐに進んできた。


この無法地帯のような区画は都市の最も外側を取り囲むように存在するわけで、本気で探すつもりならばぐるっと一周しなければ話にならない。

あるいはもっと聞き込みをするなりして効率よく探すべきだろう。

そうしないということは、やはり大して探すつもりはないのかもしれない。


「めんどくさくなっちゃったー。」


どうやらそういうことらしい。

ならばどうするつもりなのか。収入がないことを問題視したはずだったのだが。


「空から降ってこないかなー。」


こいつは何を言っているのだろう。

頭がイカれてなってしまったのかもしれない。

ただでさえそう都合よく見つからないというのに、そんなことあろうはずもない。


「おー?あれなんだろー。」


最も外側の区画のさらに外。そこから完全に荒野との境目とわかる位置。都市中央からずっと続く大通りの出口とも言えるその場所に、複数のトレーラーが集まっている。

そしてそこはまるで市場のような賑わいを見せている。


「おー?おー。いいねー。」


近づいてみると、そこにあるトレーラーはそれぞれが店舗になっているのがわかる。市場という表現はまさに然りであった。

なんと都合のいいことか。空から降ってくることはなかったが、投げやりになった途端にこれだ。


「おっちゃんここって買取やってるー?」


目についた1台のトレーラー。その店主であろう壮年の男性に声をかけた。


「おいおい、俺はまだおっちゃんってほどの歳じゃねえよ。まあいいか。それで買取か。金になるならなんでも買ってやれるぞ。」

「おー。じゃあシーカーじゃないけど遺物の買取ってできるー?」

「おお!そういうことならお安い御用だ!なんせここらに住むやつらはそうやって稼いでるやつも多いからな。」

「そうなんだー。じゃあこれお願いー。」


そう言って彼が出したのは、組織の施設に保管されていた女性用の下着である。

彼の属していた組織の特性上、衣類は全て戦闘向けの特注品が支給されていた。

そのため施設の中にはかなりの量の衣類が保管されており、その中で無事だったものは全て持ち出したのだ。

性別関係なく持ち出したのは、はたしてこうして売ることまで想定済みだったのか否か。

ただの蒐集癖だった可能性の方が否めないが。


それはさておき、とりあえず様子見なのか出す品はそのひとつだけのようだ。


「これは…パッケージの絵柄から察するに下着か。未開封だし状態は良いな。わかっちゃいると思うが、ここで売るとかなり安くなるぞ。それでもいいか?」

「うん、へいきー。よろしくー。」

「はいよ。査定は専門のやつに依頼すれば時間はかかるが高く買い取ってやれるかもしれねえ。すぐに買い取ってほしけりゃ10万コールってところか。どうする?」

「すぐでいいやー。」

「おいおい、俺が言うのもなんだが交渉する気ねえのかよ。」

「うん、そういうのめんどいからー。」

「そうかいそうかい、そのうちぼられても知らねえぞ。」

「そうだねー。」

「そうだねって、お前さんほんとにわかってんのかよ…。それより現金でいいか?」

「うん。どーもー。」


そんなやり取りを経て、なんとか売却を終えた彼はその場を後にした。

取引価格など気にしないような素振りだったが、予めネットワーク上での調査はしていたようだし、ある程度は納得した取引だったのだろう。

本当にめんどくさがった可能性もあるが。


「あー。宿探さないとねー。」


どうやらなかなかに重要なことを思い出したようで、すぐに次の目的地が決定した。


「今日はどこでもいいかー。」


本来ならこういうものは安全面や清潔感、食事の良し悪しなど色々と環境面を調べるものだが、今日は時間も遅くなってきているためそのあたりは諦めるようだ。

ちなみにそうした環境が整った宿の相場は、朝晩食事付きで1泊1万コール前後。

もちろん環境面を妥協すれば、素泊まり1000コールの宿も存在するらしい。

はたしてどんな宿を選ぶのか。何にせよ今日の稼ぎがあれば問題なく宿泊できそうである。


その後はしばらく都市中央に向かって歩みを進め、再開発区画で目に留まった宿に迷うことなく入っていった。

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