表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オプト・オプス  作者: ほんめじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/9

7.収入源

彼は今、街中を歩いている。あっちを見たりこっちを見たり。誰が見ても、お上りさんだと思うだろう。

大方事実であるが。


彼が組織に属していた頃は、プライベートで街中を練り歩くことなど終ぞなかった。

しかも前回ここに来た時は、上空を飛んでいたわけで。

彼が自由に街を出歩くのは、おそらくこれが人生で初めてだろう。

となればそれはもうウッキウキになるのも頷ける。表情に現れることはないが。


ところで彼は何を目的に街を歩いているのかというと、簡潔に言えば市場調査だそうだ。

ここまでの道中、何を食べようかだとかどこに泊まろうかだとか楽しそうに呟いていたのだが、そこで彼は気づいてしまった。

自分が無職であることに。

それ自体は大して問題視していないが、収入の目処がないことは問題視したようだ。


そこで着目したのが、施設や廃墟で漁った物を売ること。

その辺り、すでに現代ネットワークを通じて調べていたりもするようだ。


現代では、廃墟を遺跡と呼ぶことや、そこに残る物は遺物と呼ばれているようで、大なり小なり価値があることを確認している。

そして実際に、それを生業にする人々を目撃しているし、それ専門の組織があることも把握している。

しかし、せっかく自由を得たのに再び組織に属することには抵抗があるようで、個人での取引ができないかと模索しているところのようだ。


故に市場調査。

もちろんネットワーク上で取引価格などの情報は入手している。

今回は実際にどの店でどのように取引されているか、詳細を把握するために調査を行うのだ。


そのはずなのだが、残念なことにただ街をぷらぷら歩いているようにしか見えない。

いや、目的を忘れて本当にただ物見遊山な可能性も否定できないが。



「あー。そろそろ探すかー。」


しばらくしてようやくやる気になったらしい。そう言うや否や、雑貨店のようなところへ入っていった。


「すませーん。遺物の買取ってやってますー?」


声をかけると年配の女性店員が姿を見せた。


「はいはい、遺物ね。お兄さんシーカーかい?」

「違いますけどー。シーカーじゃないとだめですかー?」

「そうだよ。悪いけどね、ユニオンとの規約でそういうのがあるからね。」

「なるほどー。ちなみにそれってここだけですかー?」

「いーや、普通の店はだいたいどこも同じだよ。その方が得しかないからね。」

「そうですかー。じゃあ帰りますわー。」

「はいよ。シーカーになってまた来ておくれ。」


そんなやりとりをして店から出てきた。

どうやら個人でまともな取引を行うには、シーカーの身分が必要になるようだ。


遺跡探索を生業とする者は一般にシーカーと呼ばれ、シーカーズユニオンに所属することで公的にシーカーとしての身分が保障される。

当然それには一定の条件をクリアする必要があるのだが、所属することで得られる恩恵が大きいため、遺跡に潜る者は皆一様にシーカーを目指すのだ。


シーカーになる最も大きな恩恵は、モンスターを討伐した際に報酬が支払われることだろう。

シーカーズユニオンは、対モンスターの前衛的防衛組織としての側面も併せ持つため、都市から防衛費が支払われている。

また企業や研究機関との連携により、モンスターの死骸を活用して利益を上げている。

そうした背景もあり、シーカーズユニオンはモンスターを討伐したシーカーに報酬を支払うことができるのだ。


もし仮にシーカーでない者がモンスターを討伐したとして、得られる物は何もないとは言わないが基本的には金にならない。

例外的に、企業や研究機関に売る伝手があるならば、シーカーでなくてもモンスターを討伐すれば金にできる可能性はある。

しかし、企業や研究機関はモンスター素材の入手のほとんどをシーカーズユニオンに委託している。

そのため個別に取引をするには、よほどの希少なモンスターでない限りは不可能だろう。


そういうわけで、遺跡探索のついでにモンスターを討伐すると金になるシーカーという身分は大変に魅力的なのだ。

もし遺物が見つからなかったとしても、モンスターさえ討伐できれば暮らしていけるのだから。


もちろん他にもシーカーになることで得られる恩恵は多くある。

遺物取引では的確かつ豊富な流通網を活かし、安定した価格での一括買取を行ってくれる。

また、企業や研究機関からの遺物収集依頼の斡旋も行ってくれる。この場合、単純な遺物売却額に加えて依頼料も上乗せされるのだ。

依頼といえばモンスター討伐も依頼として発行されることがあり、この場合大抵は高額となる。

そしてシーカーとして得た利益を管理しておくための口座も開設してくれるし、発行された身分証を介して電子通貨の利用もできる。

シーカーズユニオンと提携する店では、身分証の提示によって、商品の購入に割引が効くし、もちろん電子通貨も利用できる。

提携店には、優先的に遺物が卸されていたり依頼が受理されたりといった優遇措置があるため、都市にはかなり多くの提携店が存在する。

その他には、怪我や病気をした際の保険的な役割や、病院への斡旋もしてくれる。

とにかく遺跡に潜るならシーカーにならなければ損だと言わんばかりに盛りだくさんだ。


シーカーズユニオンだけでなく、提携店でももちろん遺物の買取を行っている。

この利点は、シーカー側はユニオンに売るより若干売値が高くなることで、店側は通常より若干仕入れ値が安くなることだろう。

間に流通だの卸売だのを介していないため当然であるが。

他の利点としては、身分証を介することで公正な取引が担保され、その内容がシーカーの実績として評価される。

具体的には、ユニオンのシステムに取引履歴が残る仕組みになっている。つまりはユニオンに監査されているわけだ。

これにより店側は武力に怯えたり、シーカー側はぼったくられたり、というリスクを回避できるのだ。

また電子通貨で取引できるため、いくら高額になろうと支払い能力さえあれば瞬時に取引が完了するのも魅力的だろう。



こうした背景から、遺物を取り扱う店のほとんどがユニオンと提携しており、その利益にあやかっている。

そして、シーカーでない者が遺物を売ることができない理由としては、ユニオンが提携店にシーカー以外との個人との遺物取引ができないという規約を設けているからだ。

これは、ユニオンによるシーカーの社会的地位向上のための戦略でもある。

独占的で強権的に見えるが、そもそも前提として遺物収集をする者は基本的にシーカーであるわけで、提携店側に全く損はないのだ。


そういうわけで、所謂普通の店ではシーカーでなければ遺物取引はできない。

逆を言えば、普通ではない店ならばシーカーでなくても遺物取引できるということだが。


彼は今後、そういう店を探していくことになるだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ