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オプト・オプス  作者: ほんめじ


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5.情報源

「おー。ニオスフおかえりー。」


音声データ収集のために放っていた、彼の装備Niosphが戻ってきたようだ。


「標本足りるねー。いいねー。」


どうやら満足いく結果だったようだ。


「あとは文字かー。街じゃ少なそうだなー。」


次は文字を学習するために、データ収集をしたいらしい。

街中で簡単に目につく文字といえば、精々看板くらいだろうか。飲食店に行けばメニュー表くらいあるかもしれないし、何か取引すれば文章を目にすることもできるだろう。より多くの文字に触れるなら本を買うか、あるいは図書館なんかがあればそれを利用するのがいいだろう。

しかし、どれもこれも街をぶらついて手に入るものではないうえに、得られる文字データ量に比例して手間がかかるだろう。しかも、十分なデータを得られる確証はどこにもない。


「今ってネットないのかなー。」


確かに、現代人が利用するネットワークがあって、それに接続できれば十分なデータ収集が可能だろう。

まずその存在の有無の確認と、接続手段の確認と入手が必要になるわけだが。


「昔のネットには情報ないなー。」


彼の時代のネットワークでは、現代ネットワークに関する情報は載っていないらしい。


「音声で拾ってたらラッキーかー。そっちからやるかー。」


どうやら先に、収集した音声データの解析と言語学習を進めることにしたようだ。

ついでに現代ネットワークに関する情報が得られたら御の字ということだろう。


「ニオスフ手伝ってー。」


そう言いながら、彼はサングラス型のディスプレイを装着する。

音声を認識したNiosphは、そのうちの一つが彼の片耳の上、サングラスとの接触部位に付着し形を変えていく。

そして現れたのはイヤホン。違和感があるとすれば、サングラスに繋ぎ目なく枝分かれしたかのように接続されていることだろうか。


それ以降、彼は宙を見て黙り込んでしまった。

おそらくディスプレイに映る何かを見ながら、イヤホンから聞こえる音声に集中しているのではないだろうか。


「おー。覚えたー。」


どれほど時間が経っただろう。さすがに10分は経ったはずだ。僅か10分しか経っていないとも言えるが。本当にこの短時間で学習を終えたのだろうか。

薄々わかってはいたが、呆れた学習速度である。


「情報通信端末かー。そのまんまだなー。」


どうやら同時にネットワークに関する情報も得られたようだ。そこで情報通信端末という言葉があったらしい。


「ネットもあるっぽいねー。」


ネットワークの存在も確認できたらしい。となれば、あとは接続手段を入手するだけだ。できればその情報通信端末とやらを入手するのが確実だろう。


「欲しいけどなー。お金ないなー。」


そう、真っ当に入手するには金がいるのは当然である。

そして彼にはそれがない。いや、厳密に言えば資産はある。彼の時代に最も普及した、今では使えるかも定かではない通貨ではあるが。

つまり、今の時代に今すぐ使える金は持ち合わせていないのだ。

金を手に入れるためには、何かを売るかどこかで働くか、最も手っ取り早いのはやはり何か売ることだろう。

そうなると、適正な価格での取引ができるかという話になってくる。しかしここは急を要するため、多少ぼったくられてもそれを許容できればすぐにでも金は手に入りそうではある。

はたしてそれを彼が許容できるかが問題なのだが。

まあ十中八九無理だろう。


「うーん、死体漁るかー。モンスターとかいうの出るらしいしー。」


突然物騒な野郎だ。だがしかし、たしかにそれも一理あるだろう。

昨日、廃墟で戦闘があったことから鑑みるに、戦いに身を置く人々も一定数は居そうである。

また、集めた音声データにモンスターなる言葉があったようだ。これがおそらく主な戦闘相手ということだろう。

ともすれば、遺留品を入手することもあり得ない話ではないのだ。

それが現代の法や倫理的にどうかという問題もありそうだが。


「どっかの廃墟行くかー。」


どうやら彼に迷いはないらしい。そう都合よく、目的の品が残っているかは疑問であるが。


「どこがいいかなー。」


ひとくちに廃墟といっても、昨日訪れた場所だけではない。

単純に都市からの距離によって、辿り着く難易度が変わってくるはずである。

遠くへ行くにはそれだけ能力が必要であるし、極端な話、目の前にあるなら子供でも辿り着けるだろう。

だからといって、近場の方が安全か否かはまた別問題である。


要するに廃墟の危険度も含めた難易度は、また改めて情報収集が必要なのだ。

そして今回は、そうした情報はおそらく入手していないだろうことから、どこに行くのか決めかねているのだと思われる。


「昨日のところでいっかー。」


これは間違いなくめんどくさくなったやつだ。

どちらにせよ情報がない以上は、適当でも決めなければならないのだからそれでいいのだが。



そんなこんなで昨日の廃墟に戻ってきた。

あとは情報通信端末とやらが、遺留品として残っていないか探すだけである。


「人のいるところ見に行こー。」


まずはここに来ている人々を観察するようだ。

確かに、今はまだ生きている彼らが何か残していく可能性もあるのだから、大凡の場所を把握しておくことは効率的である。


「強がってるやついないかなー。」


どうやらある程度は候補をマークしておきたいようだ。有り体に言えば、そういうやつから死ぬということなのだろう。


「おー。戦闘音だー。見に行こー。」


早々に戦闘音が聞こえてきた。

昨日もこの地では戦闘があったし、そこそこ危険な場所なのかもしれない。


「やってるねー。モンスターってあれかー。」


そこに見えてきたのは、巨大な蟻のような生物の大群と、それと対峙する武装した少年少女の集団。それに加えて、保護者のように佇む数人の男性の姿もある。


少年達は銃の火力に物を言わせるように、弾幕を張ることで蟻を寄せ付けない。

しかし蟻側も無限に湧き出るかの如く、仲間が倒されてもお構いなしに次から次に向かっていき、弾幕と拮抗しているようにすら見える。


しばらくすると、弾切れになったようで少年達はリロードに入る。

だがそのタイミングが重なってしまったことで弾幕が途切れ、蟻に接近を許してしまった。

しかもそれで焦ってしまったのかリロードにもたつき、迎撃が間に合わずあわや惨事かと思われた。


しかしそれをカバーするかのように、佇んでいた男性達が一斉に掃射し、圧倒的な火力で鎮圧してみせた。

その後は、散発的に現れる蟻を少年達がしっかりと排除して戦闘は終了したようだ。


戦闘終了後は少年達と男性達が集まり、男性達から何か話をしているように見える。

おそらく、先程の戦闘に関してのフィードバックを行っているのだろう。

男性達は単なる保護者というよりも、指導者のような立ち位置にあるのかもしれない。


「きもい蟻だなー。森のきもい狼もモンスターってことかー。」


彼の関心は別のところにあるらしい。あまり他人に興味はないのかもしれない。


「死ななかったかー。残念だねー。」


いや、ある程度は関心があるようだ。それにしても酷い言い草だが。



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