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工業高校はデスゲームに最適です  作者: 霧ヶ峰藤五郎
序章 勇者編

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8/18

1棟 8幕 烏丸大和の意地

俺は小さい頃からやりたいと思ったことは大体出来た。

物事を苦戦するということもなく、勉強も出来たし、運動もそこそこ出来た。

俺はこのまま何となく成功するのだと思っていた。

何も努力せず、明るい未来が俺を迎えてくれると

心の底から思っていた。

だがその思想を砕かれたのは早かった。

俺が中学に上がった直後、

俺は周りと違うのだとイキって回った。

だが、現実はもっとずっと恐ろしかった。

勉強しなければろくに点数も上がるわけがなかったし

運動も続けなければ出来なくなっていく。

俺自身が頭のおかしい行動を続けてたのもあって、

俺は少しづつ周りから人が居なくなって行った。

何が起点だったのかは分からないが

女子からは相当に嫌われていたと思う。

隣の席になるだけで騒がれ、時に泣かれ、先生からはそれについて怒られた事もあった。

俺は齢13にして理不尽を味わった。

席は先生が決めて、

俺は何もしてないのに泣かれたのに悪者は俺。

俺は当時泣きそうになりながら謝ったのを覚えている。


多分その日からだろう。

他人を嫌いになったのは。

所詮他人だから俺に何をしても何を言っても

知らん振りが出来る。

だからあれこれ俺に口出しをする。


もっと勉強しろよ。

努力しろよ。

お前は努力なんてした事ないんだから。


よく兄に言われた言葉だ。

兄は見てない所で試行錯誤した俺を知らない。

だから俺は努力してないのだと決めつけ努力が足りないだと吐かしやがった。

ふざけるな。

俺は俺なりに精一杯やったつもりなのに、

自分なりに頑張ったのに頭ごなしに否定された。

結果が全ての世界ではそれが正解なのだろう。

兄のもっと努力しろという言葉も正論なのだろう。

だけど俺は俺の全てを否定されたのだ。

兄はきっと俺のことが嫌いなのだ。


バカのくせに何言ってんだ。

運動出来ないのに?

大和は頼りにならないからいいや。


よく弟に言われた言葉だ。

弟は俺をよく知らない。

深く関わらなかったし、関わろうとしなかった。

お互いにそれでいいと思っていた。

だがそれを知ってか知らずか、

弟は2つ上の兄の意見を全て鵜呑みにして行動する。

兄はそこまで頭が良くない。

勿論経験がある分俺より頼りになるのは間違いないが

それでも間違う事もある。

俺はそれを指摘した事があった。

その時は兄ではなく弟がツッコミを入れていた。

大和は分からないんだから黙ってろよ。

弟は俺をきっと尊敬も信頼もしてないんだろうと

その時悟った。

なら俺はもうコイツに何も言わない方が

良いのかもしれない。

あいつもそれを望んでるだろうと決めつけ、

俺は弟と距離を取るようになった。

弟は俺が嫌いなのだ。


兄弟ですら嫌いになるのだ。

友達なんぞ出来るはずも無い。

勿論遊んでくれる人はいたが、

俺のことを理解してくれるやつは居ないとその人達と壁を作ったのだ。

俺は自ら孤独の道を歩んだのだ。

その時から俺は死に場所を探してたんだと思う。

他人に迷惑をかけずに自分らしく死にたい。

そう思って色々模索した。

だがそう思い2年経っても理想の死に方は見つからなかった。

首吊りは清掃業者と建物の持ち主に迷惑がかかるし、

山に潜っても土地の持ち主に迷惑がかかる。

海は土左衛門を見つけた人に迷惑がかかる。

薬も結局掃除があるから迷惑がかかる。


俺は迷惑のかからない死に方など無いのではと

思い始めていた。

その時だ。

俺はこの世界に飛ばされた。

この世界でなら、

人と肩を並べて戦い、時に助け、助けられ

迷惑をかけずに死ねるのではないだろうか。

戦闘での死者なら迷惑はかからない。

仕方なかったと言うやつで片付く。

パーティを組んでいる間は俺が抜けたら

アイツらが困るからきっかり戦うが、

1人なら別にいいよな。


だからだろうか、

2層の偵察に行った優太と永井、西潟が

トラップにかかり、ボス級の敵に殺されたと聞いた時

俺はようやく死に場所を見つけたからなのか、

人が死んだというのに笑みがこぼれた。

__________________________________________


2層に飛び込んだ俺はまず見つけたのが

クモとカマキリの死体だ。

恐らく優太達が殺したのだろう。

2層は虫がテーマの層らしい。

正直デカくなった虫はどちゃクソに気持ち悪いが

そんな事を言ってる場合じゃないので無視しよう。

虫だけに。





話を戻そう。

1棟の2層は機械実習の教室がメインだ。

そしてロキによって部屋の構造が変わり

各部屋を渡って行き、

奥まで進んでいくという構造になっている。


まるで迷宮だな。

まずこの層にきて思った事だ。

敵のレベルも1層と比べて上がったし、

1層が割と簡単な構造だったこともあって

難易度は1棟2層の時点で星2。

このペースで難易度が上がって行くと仮定したら

4棟の難易度なんて考えたくも無い。


第二偵察隊の報告にあった部屋まで俺は走る。

迷宮内は狭く、2人横に並んで歩けるか否か、

その程度しかなかった。

こんな密閉空間で素早いクモやカマキリと

戦わねばならない。

理不尽さに心で悪態をつきながら走る。


2層に着いて2分ほど走っただろうか。

報告のあった第二電気実習室に着く。


「ここが…」


もしかしたらここで俺は心の底から戦闘を楽しみ、

死ねるかもしれない。

俺は扉が外れた入口から部屋に入る。

部屋は広く、一般的な学校の体育館ほどあった。

すぐ近くにホワイトボードが貼ってあり、

その目の前には教卓と思しき横長の机。

内に1つ、外に5つ椅子が置いてある。


教室の後ろは机とパソコン、椅子が

3つずつ置いてあり列を作っている。

それが3列。

そして教室の真ん中にはあからさまな宝箱。

恐らくこの宝箱を開けると罠が発動するのだろう。

3人はこれにかかったのだ。

壁や床にぐちゃぐちゃになった肉の塊と

血がべっとり付いている。

3人の死体だろう。

これは偵察隊の人が

死体の回収は不可能というのも納得だな。

肉が壁にこべり着いて取れやしない。

短剣で肉と壁の境を突いてみるが効果なし。

諦めて短剣に着いた血を払う。


何のトラップにかかって死んだのかは伝えないとな。

そう口に出しながら俺は宝箱を開ける。

すると案の定宝箱は空っぽでアラートが鳴る。

部屋がアラートの赤い光に包まれたかと思うと

天井が開き、大きな黒い物が落ちてくる。

その正体は


「へぇ…カブトムシ…それもヘラクレスオオカブトか。」


巨大なカブトムシだった。

出てきたのは1匹のみ。

名前は『Hell Beatle』

直訳で地獄のカブトムシ。

カッコよく言うなら獄甲虫ってとこか。

Lvは95。

はっきり言ってふざけてる。

1層のフロアボスで15だからそれの7倍。

Lvの上昇幅から推測しても4棟クラスの敵だ。

普通なら逃げが正解だろう。

だけど、俺は違う。

ここでなら。

ここでなら出来るかもしれない。

俺の理想の死に方が。


直剣を構えカブトムシに走り出し、

そのまま斬りあげる。

が、殻に弾かれる。

カブトムシがその隙に突進してくるが俺は

受身を取り、剣を振り下ろす。

カブトムシはそれを角で受けて、

しばらく鍔迫り合いをするが俺が根負けして

弾かれる。


「ぐっ?!」


声を漏らし体制を崩す俺。

そのままカブトムシの追撃が俺を襲う。

死を覚悟して目をそらす。

するといきなり身体を捕まれ放り投げられる。

驚いて顔を上げるとそこには

剣でカブトムシの角を抑えている歩夢が居た。


「何やってんだ!死ぬぞ!」


歩夢が剣で角を弾いた後、

俺の身体を掴んでその場を離脱する。

俺は何がなんだか分からないまま抱き抱えられ、

講堂まで運ばれた。

__________________________________________


さて…大和も救出出来たし2層の攻略を進めなきゃな。

幸いあのトラップ部屋は正規ルートを

大きく外れている。

まっすぐ行けば遭遇しないだろう。

等と独り言を呟く歩夢に俺は叫び、胸ぐらを掴む。


「どうして助けた!

余計な事しやがって!」


歩夢が驚いて目を丸くしているが構いやしない。

俺はさらに捲し立てる。


「お前が助けたせいで!

俺はアイツと戦って死ぬつもりだったのに!

ようやくこの苦痛から開放されるハズだったのに!

お前が!

お前が助けたせいで…

俺は…まだ地獄だ…」


俺は歩夢の身体を掴んだまま泣き崩れ涙を零す。

歩夢は俺をしばらく見た後、しゃがみこみ

俺の肩に手を置いて話し始める。


「俺はさ、

馬鹿だからお前が今どんだけ辛いか分かんないし

今お前にどんな言葉を掛ければいいのかも分からん。

何なら今話しかけていいのかすらも分かんないけど、

1つ確かな事がある。

お前はお前が思っているより周りに必要とされてる。

もっと自分を労われ。

もっと自分を出してくれ。

もっと欲張れ。

俺はそう思うね。」


歩夢の言葉が胸を突き刺し、

俺はその言葉に涙が溢れ、止まらなくなり、

久しぶりに声を出して泣いた。

あぁ、声に出して泣くってこんなにも

心が安らぐのか。

もっと早く気づけば何か変わったのかな。

_________________________________________


「それじゃ行ってくる。」

「本当に一人でやるのか?

今からなら3人は連れてこれるぞ?」


トラップ部屋まで小川と歩夢と俺の3人で来た後、

小川が俺にそう提案するが、

俺は手を突き出して首を横に振る。


「この戦いだけは俺の力で終わらせたいんだ。

頼む。」


俺は頭を下げて小川たちに頼みこむ。

小川は「まぁ死ななければ良いよ。」と承諾して歩夢も

「危なくなったら助けるからな。」と渋々承諾した。

俺は背中から愛剣の「ウルフ・ファング」を抜き、

腰に差してある「小兎の血塗れ短剣」も抜く。


ウルフ・ファング

狼王の牙から作られた直剣。

重量の割に頑丈。

兎、蛇、鳥型に対して補正。

AGI+5

耐久値 456/456

重量 9.0


小兎(リトルラビット)の血塗れ短剣

リトルラビットが持っている短剣。

耐久性は無いが出血毒が常時付与されている。

人型に対して大きく補正。

耐久値 128/128

重量 3.5

出血毒の蓄積(38)


出血毒

蓄積値が対象の耐性値を上回ると

最大HPの割合出血ダメージを与える。

出血ダメージはDEX INTを上げると上がる隠し補正値

ABNによって上昇。


俺は二振りの剣を持ち、トラップ箱を蹴って開ける。

ヤツが天井から落ちてくる。

床に衝突する時の衝撃波だけで圧倒されそうだ。

俺は短剣を逆手持ちにし、

顔の前で腕をクロスするように構える。


「来い!」


そう叫ぶと獄甲虫は雄叫びを上げ、突進してくる。

俺はそれを飛び避け、ヤツの背中に回転斬りをする。

手応えはない。

殻が硬すぎる。

殻を剥がすか無力化しないと

ダメージが入らないだろう。


「はっ!面倒くせぇ。」


殻はダメージが通らないのなら!

俺が走り出すと獄甲虫は角を振り上げて攻撃するが、

俺はそれをスライディングで避けヤツの左に抜ける。

そのままヤツの左前脚の節を剣で叩く。

半ばまで入るも切れない。

だったら!

俺は反対側に短剣を思い切り叩きつけ、

獄甲虫の脚を斬り飛ばす。


脚を斬り飛ばされた獄甲虫は雄叫びを上げ、

体勢を崩し、羽が開くと、

殻の無い生身の肉体が現れた。

俺はすかさず生身の肉体に、

1層フロアボス討伐時に獲得した新スキル

下位双剣術 「クロスゲイン」を放つ。

5連撃のスキルが獄甲虫の肉を裂き、

出血毒の蓄積も溜まる。


行ける!勝てる!


そう思った刹那、

獄甲虫の左前脚が再生した。

なっ!と声を漏らす俺の腹を獄甲虫の角が突き刺す。

吐血してHPバーがみるみる減っていく。

くそったれ…ここまでか…

歩夢達が走って向かって来るが間に合わないだろう。

あぁ…もっと上手くやりたかったなぁ。

意識が遠のいていく。

そのまま俺は瞼を閉じた。


「逃げるな。

今頑張らないでどうする。」


声が聞こえた。

父の声だ。

確か受験前に言われたんだっけ。

結局そのまま勉強せずに受験を受けたんだっけ。

まぁ分かってはいたが志望校に落ちて工業(ここ)に来た。

仕方ないじゃないか。

努力したくなかったんだ。

なぁなぁで生きて行きたかったんだ。

今楽しいんだから、それで…


「今やらなかったら確実に後悔する。

逃げ癖が付くぞ。

集中力を維持するには休憩は大事だ。

休んだっていいが逃げるな。

最後までやりきれ。

お前の悪い癖だぞ。」


うるさいなぁ。

出来ないんだから仕方ないだろ。

勝てなかったんだ、俺には。

生き残ったところでどうしようもない。

そのうち俺は使い物にならなくなるんだ。

だったらまだ手足が残ってる内に役に立ちたかったんだ。

でもダメだった。

俺は弱かったんだ。

結局父親からのプレッシャーで潰れて

腕、切ったんだけっけ。

あぁ、だったらあのまま死んどけば良かったなぁ。

惜しいことしたなぁ。


「お願いだから先に死なないでね。

私は部屋に引きこもってたとしても生きてて欲しい。」


母だ。

母の言葉だ。

腕を切った事が担任を通じてバレた時に

泣きながら訴えてきた時の言葉だ。

どうしてだろう。

父の方が正しい筈なのに。

父の方が何度も言ってきた筈なのに。

どうしてこんなにも涙が止まらないのだろう。

もっと早く吐き出せれば。

もっと早く相談していれば。

母から言われた時に何度も考えた事だ。


「あぁ…クソ。

俺ぁ親不孝者だな。

親より先に死のうとするなんて。」


歩夢だってああ言ってくれたのに。

なんで忘れてたんだ。

まだ死ぬ訳には行かない。

死ぬなら役に立ってから死ね。

今、どんな一撃を受けようとも。

根性だ。

忍耐だ。

意地だ。

耐えて見せろ。

烏丸大和。


新スキル獲得

「戦士の意地」

__________________________________________


覚醒した俺はすぐさま獄甲虫の複眼に短剣を突き刺す。

獄甲虫が大きく叫び、部屋が揺れる。


「大和!」


叫びながら歩夢達が来るが俺は叫び返す。


「来るな!」


俺は短剣を押し込み獄甲虫の片目を破壊する。

同時に出血毒が蓄積したようで獄甲虫のHPが一気に減る。

だがそれだけでは足りない!

ならば!


「その首寄越せぇぇえええ!!!!!」


短剣を引き抜き、直剣と短剣を獄甲虫の頭部と胴部を繋ぐ節に交差に差し込む。

そのまま横に引くように剣を引く。

獄甲虫も断末魔を上げ、振り払うように走り回る。

全身が痛い。

喉に血も溜まって苦しい。

このまま行けば俺の腹は裂けるだろう。

それでも!

俺は根性で!

耐えてみせる!


「うあああああああああああ!!!!!!」


硬い!

殻じゃなくてもここまで!

両腕だけじゃ足りない!全身を使え!

脚はコイツに引き摺られてズタズタだ!

使い物にならない!

なら!

筋力値がそのまま反映される空の腕で!

俺は背中から不可視の腕を出現させ、剣を引く。

俺の雄叫びと獄甲虫の断末魔が交差する。

ダメだ!

全身と空の腕じゃ足りない!

もっと!もっと強く!

もっと力を!


新スキル獲得

「背水の陣」


うああああああああああああああああ!!!!!!!!

ギシャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!


バスン!!と音がなり獄甲虫の頭部と胴体が分離する。

そのまま獄甲虫は力なく倒れ、

その身体が灰となって消滅する。


「大和…」


と近寄ってきた歩夢の前で

俺は短剣を持ったズタズタになった左手を高く上げ

歩夢に告げる。

その声は弱々しくも力強く歩夢に響いた。


「見たか…歩夢…

これが…烏丸大和の意地だ。」


プレイヤーネーム 烏丸大和

Lv15→27

獲得アイテム

獄甲虫の双角

獄甲虫の殻鎧破片

獲得アーティファクト

深淵の器

お久しぶりです

霧ヶ峰藤五郎です

まずは更新が遅くなり申し訳ございません

それもこれも全てエ〇デンリングが

楽しすぎるのが悪いです

冗談はさておきまずは今回初の名前回でしたが

いかがでしたでしょうか

好評であれば色々なキャラを掘り下げて行きたいと思います

それではまた会う時まで

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