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工業高校はデスゲームに最適です  作者: 霧ヶ峰藤五郎
序章 勇者編

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1棟 4幕 蒼き傀儡の勇者

「植木…お前が…PKの…犯人…なのか…?」


震える声で俺は植木に問う。

植木は友達想いの良い奴だったハズだ。

きっと何かの間違いだろう。

そう自分に言い聞かせるが、

植木はケタケタ笑いその暗示を否定する。


「あぁ。あの3年生達は俺が殺した。」


言葉が出てこない。

身内が人を殺していたのだ。

俺の頬を冷や汗がつたう。

その様子に植木は気分が良くなり

話を続ける。


「歩夢、お前はここでモンスターを見たか?

見てないだろうな。

何故ならここではモンスターがポップしないからだ。」

「ッ?!」


唐突に植木が語り出す内容に俺は驚きが漏れる。

さらに植木は続ける



「まぁ正確には“もう”ポップしない。

どうやらここはトラップルームだったようで、

あの3年生達が足を踏み入れた途端入口が閉まり

あの3人は閉じ込められた。

そしてこの狭い部屋にライカンが50匹沸いた。

苦戦しつつも3人で協力し

50匹のライカンを倒して一件落着。」


短剣をゆらゆら動かし芝居を始める植木。

俺はその行く末に目が離せなかった。


「だが、悲劇は終わらなかった。

俺が“うっかり”吉田先輩を殺してしまう。

するとどうだろうか、

さっき倒したライカン50匹分の経験値が

俺に入ってくる。

そう、この世界で最も効率のいいレベリングはPK!!

その後そこにいる林が濱田先輩を殺す。

もちろん俺が手に入れた経験値と同じ量入ってくる。

そこで俺は実験した、

2人で同時に殺したらどちらに経験値が入るのかと。

結果は双方に等倍の経験値が手に入る、だ!

これを使えば俺は最速でレベリングができる!」


両手を広げ狂気の満ちた顔で笑い、

早口で告げる植木に俺は

嫌悪感を隠せなくなる。

狂ってる…自分のために人殺しなんて…

演説を終えた植木は改めて歩夢に向かって

短剣を向ける。


「なぁ歩夢、お前も馬鹿じゃないだろ?

少し考えればわかるんだ。

犬っころ50匹倒すより、

ヒトを殺す方が早くレベリング出来るんだ。

まだ間に合う。俺と一緒にこい。」


そう言って手を差し伸べる植木。

確かに何匹もモンスターを狩るより

人を数人殺した方がレベリングも早く終わるだろう。

俺は差し伸べた植木の手を見て、


「俺は…人殺しと肩を組んでは歩けない。」


俺は効率より人の道を選ぶ。

その様子に植木は肩を竦め

俺に呆れつつ答える。


「そうか、なら死んでくれ。」

__________________________________________


歩夢と植木の戦闘が始まった。

横で見ていた俺だったが、

林の突進に気づくのが遅れる。


「余所見厳禁っ!!」


逆手持ちの短剣での突きを短剣と腕を

持っていかれそうになるが何とかいなす。


俺は俺の戦いに集中しなければ。

林は通常時は植木程のスピードは無いが、

表情や殺気から、

次の一手を読みやすい植木に対し

コイツはフェイントが上手い。

こちらの警戒が切れたタイミングで

的確に奇襲してくる。

それに先程から見せる突進。

あの突進の速度が驚異的だ。


やり辛ぇったらありゃしねぇ。

俺は戦闘系じゃないってのに。

等と考えてる隙に、

林は宙に飛んだかと思うと

天井を発射台にして突進してくる。


俺はそれを手札からシールドカードを使い防ぐ。

先程からずっと直線的な突進の繰り返し。

コイツの戦い方はまるで…


「弾丸…」


そう呟くと林は目を見開き驚いた後、

顔に手を当てて笑う。


「はははっ!よく分かったな!

俺のスキルは『ヒューマンバレット』

直線的な突進に置いてスキル内最速を誇る。」

「最速ぅっ?!!」


なんつースキルだ。

これがもし、終盤だったらと考える。

今はまだコイツのレベルが低いため(それでもコイツらは12)AGI値も控えめだ。


だが、もし終盤なら。

終盤ならAGI値は平気で100や200を超えてくる。

そんな時に最速と謳われるこれを喰らえば、

対処の「た」の字もなく殺されていただろう。


序盤で助かったな。

そう思うことにして俺は武器を降ろし林と向き合う。

林は突然構えるのをやめた小川を見て

苦い顔をする。


「何してる。武器を構えろ。

まさか戦いを諦めたのか?」


少し声を荒げ林は小川に問う。

それに対し小川は笑いながら首を横に振る。


「はっ!まさか!短剣が合わなかっただけの事よ。

そもそも魔法系が

正面戦闘してんのがおかしいんだ。」


そう言ったかと思うと小川は右手で

デッキからカードを5枚引く。

引いたカードを左胸の辺りに浮かせて

林に啖呵を切る。


「行くぞ!ラウンド2だ!」

「はっ!魔法使い如きが図に乗るな!」


2人の魔法と剣がぶつかり閃光が散る。

__________________________________________


小川が林と戦っている横で俺は

植木の圧倒的な速度に押されていた。

植木が俺に突進をするが

先程、壁に刺さっていた片手直剣で弾く。

恐らく、この剣は高田先輩のだろう。

剣がデカイのはアドバンテージだが、


「まだ…押されてるか…」


Lv差もあるが、やはり植木のスキルが強い。

スキル「疾走」

自身のAGIを3分間80%上昇させた後

6分間VITが60%低下する。


俺の捕食者や小川の熱き決闘者と違い、

常時発動ではなく、任意のタイミングで発動する。

いわばアクティブスキルだ。

だが、その分効果が桁違いすぎる。


ただでさえLv差で広がっているステータス。

そのうち対人戦で最も重要とも言えるAGIが

1.8倍になるのだから。


ライカン100匹分の経験値で

植木のLvは12になっている。

先程から時々反撃が当たってはいるが、

植木のHPバーが減ってる感覚は無い。


などと考えていると突然

「グルルルルゥ…」

と鳴いてライカンが来る。

俺を食うべくライカンが飛びかかるが

短剣を投げて、ライカンを壁に刺す。

もがき苦しんでいるが、そんなのは関係ない。

俺は片手直剣を植木に向けなおす。


今の俺のHPは2800。

相打ち覚悟で一撃入れられる!

そう覚悟して俺は“敢えて”剣を下げ、隙を見せる。

植木はさほど頭は良くない。

この策に引っかかるはず。

大丈夫だ。

そう、自分を励ましその時を待つ。


植木は歩夢の掛けた網にかかり、

歩夢の見せた隙に飛びかかる。

ここまでは完璧だった。

だが、歩夢が早く動きすぎた。

不意打ちに気づいた植木は歩夢の剣を弾いた後、

後ろに大きく飛び、歩夢の攻撃を避ける。


「畜生…去り際に短剣投げやがって…」


植木は後ろに飛んだ時に歩夢の胸に目掛けて短剣を

投げたが、それに気づいた歩夢が咄嗟に腕で防ぎ、

軽傷で済ます。


「軽傷つってもHP500は持ってかれたな…」


腕に浅く刺さった短剣を引き抜き、植木の方を向く。

歩夢の残りHPは2242。

もう無駄にダメージを受けたくない。


植木はひと笑いして変則的な動きを始める。

床を蹴り、壁を蹴り、さらには天井までも。

その動き方はスーパーボールを思い出す。

それに1秒に4回は何処かで反射している気がする。

あの速度で何処から来るか分からなくなる。


「慣れてるな…」


そう愚痴を零した刹那、植木がこちらに飛んでくる。

さっきまでは何とか食らいつけた。

ここはいなして━━━━━


「ごふぁっ!!」


植木は想像を上回る速度で歩夢の腹を切り裂く。

臓物に当たったのだろう、歩夢は大量の血を吐く。

植木が短剣の血振りをして、バックステップで

歩夢と距離を取った時には、

歩夢の足元に血の湖が出来ていた。

遠くから何か聞こえた気がしたが

歩夢の耳には届かず、歩夢は震える声で


「植木…何だ…今の…さっきまでそんな速度出てなかった…じゃないか…」


口から血を出しながら植木に問う。

それに植木は得意げに答える。


「基礎短剣術 下位 イノセント ヴォーパル。

突進単発技さ。俺のスキルと相性最高でね。」


今のを何発も喰らえばやばい…

今の俺のHPは272…今のスキルで1970削れた…

体力満タンでもツーパン…

ふざけすぎてるな…


俺は絶望的状況に

もはや笑うしか出来ない。

腹から血が漏れ出ているからか、

視界もどんどん不鮮明になる。


すると突然グシャァと言う音を立て俺は地を舐める。

植木がワザと急所を避けて突き刺した短剣を引き抜き


「もう終わりだ。歩夢。」


植木が歩夢に勝った瞬間だった。

歩夢は心で己を罵倒する。

畜生…俺が…もっと強ければ植木を止められた…

クソ…クソクソ…

歩夢の心はズタボロになり、もう戦えるマインドでは

無かった。


歩夢にトドメを指すべく、

短剣を持ち歩み寄ってくる。

強者の余裕なのか、植木は飛びかかれば早い物を

ゆっくり足音を立てながらこちらにやってくる。


俺は植木がやってくる足音に恐怖する。

呼吸が浅くなる。

手が震えてくる。

吐息混じりに血を吐き出す。


俺は死ぬのか…?

ここで…こんなところで?

嫌だ…死にたくない…

死にたくない…死にたくない…

死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!!


「俺も…」

「主人公になりたかった…」


歩夢は目を瞑り、強く拳を握りしめる。

植木が歩夢に短剣を振り下ろし、

歩夢の物語はここで潰えた。

__________________________________________







かと思えた。

だが歩夢はいつまで経っても

衝撃が来ないことに気づく。


恐る恐る目を開けると

植木が短剣を振り下ろしている所で静止している。

歩夢は驚き周りを見渡すが

小川も、小川と対峙している人物も、

宙を舞うプリントですら静止していた。


「どういう事だ…?」


そう呟き、首を傾げた後さらに驚く。

この静止空間の中で自分は動けるし意識もあるのだ。


ひとまず体を起こし、

不思議に思っているとウィンドウが現れる。

そこには


「称号を獲得しました…称号名…ラッキーセブン…?」


俺は首を傾げる。

前からこういうのはあった。

ライカンを10匹倒したタイミングで、

“狼殺し”と言う称号が手に入ったからだ。

だが、その時はこんな風に自分だけが動ける

空間になったりはしなかった。


あれこれ考えてる内にウィンドウがまた現れる。

そこには


称号 「ラッキーセブン」獲得確認。


新スキルを付与します。


と書かれたウィンドウが。

それに歩夢は歓喜する。


「おぉ!新スキル!」


だが、どう言った経緯で新スキルが与えられてるのか

それを確認したかった。

歩夢はウィンドウを開き、称号一覧を確認する。

そこからラッキーセブンの称号を見つけ、触れる。

目的はラッキーセブンの獲得条件の確認だ。

その獲得条件は


「Lv7に到達ぅ?…あぁあん時のライカンか。

なるほど。俺の傷が治ってんのもそれか。」


そう、あの時乱入してきたライカンのおかげで

今、助かっているのだ。

手を合わせ壁で消えかかったまま

静止しているライカンに感謝をした後、

新スキルを確認するべく、

最初のウィンドウに目を向ける。

ウィンドウの文字が変わる。


貴方は世界の主人公になる事を望みました。


貴方は仲間と力を合わせ、魔王を打ち倒し、

世界を救う勇者になる事を望みました。


貴方には異世界の勇者一行の技を与えます。


その力で勇者になるのも魔王になるのも、


貴方次第です。


最後の文字が変わり

新スキルの名称が現れる。

そのスキルの名は…

__________________________________________


その時が来たのはすぐだった。


俺はPKをさらに行うために

共犯の林とあの教務室で会議をする。


「なぁ植木。

お前、これがバレたらどうすんだよ。」


林が俺に問う。

俺は林の質問に大きく笑った後答える。


「簡単だ。殺せばいい。」

「でもよぉ、知り合いや友達だったらどうすんだよ。」


林は負けじと俺に再度質問をするが

俺は返答を変えない。


「その時は、ソイツも殺すだけだ。

例え、それが大野や歩夢だったとしても…な。」


俺は歩夢にトドメを刺すべく短剣を振り下ろすが、

手応えが無い。

慌てて短剣を振り下ろした場所を見るが、

人の「ひ」の字もない。


そんなわけない…あいつは瀕死のはずだ。

そんなスグに避けられる訳が無い。


俺は顔を上げ見渡すと、

背後に歩夢がいた。

先程まで血を流し、地に伏せていた男が

背後に立っているのだ。


俺は恐怖、焦り、動揺。

全ての感情が押し寄せる。


逃げなければ…

そう、本能が告げる。

歩夢と距離を取るために後退りをした刹那、

2回。

斜め十字で2回の高速切り上げを食らう。

俺はそれに血を吐きながら頭が真っ白になる。

速さもだが、その威力だ。

一撃、一撃が俺のイノセントヴォーパルと並ぶ。

何故突然こんな剣技を…


「あのライカンか!」


短剣を構える。

歩夢の新スキルが何か分からないが、恐らく

片手直剣系のスキルだ。

片手直剣の速度と、短剣の速度。

どちらが速いかなど、言うまでもない。

あのスキルを発動させぬ間に速度で潰す…!!

__________________________________________


何故だろう。

先程まで、あんなに躊躇っていたのに。

あんなに植木を殺す事に躊躇があったのに。

今は、不思議なくらい、


「何も感じない。」


突進してきた植木の短剣に片手剣を引っ掛け、

上に弾く。

宙を舞う植木を目で追いながら一つの策が浮かぶ。

アレを使ってみるか。


植木の着地のタイミングに合わせ、

左手で足に“凍結魔法”を使う。


「アイスショック」

「ッッッ?!!」


突然足元が凍りつき、

慌てて短剣で氷を砕き始める植木に、

もう一度片手剣技を使う。


「クロススラッシュ」


血を吐きながら宙を舞う植木。

残りMPは44だが、

ポケットから魔力結晶を取り出す。

昨日の昼、ライカンを狩った時偶然手に入った物で、

魔力を回復するものだった。

俺は戦闘系だから使わないと思っていたが、

こんな所で使うとは。


俺は魔力結晶を口に放り込み、魔力を回復させる。


「畜生ぉぉぉ!!」


体制を立て直した植木が、

壁を起点に俺の方へ飛んでくる。

俺は植木よりも高く空に飛び、

植木を向こうの壁にぶつける。


しかし、受身が間に合ったようで、

植木は再び俺に飛んでくる。


「死ねぇぇ!!!歩夢ぅぅ!!!」


短剣を逆手持ちにして、

俺の喉に突き刺さんとする植木。

だが、俺も剣を構え魔力を込める。


「ごめん。植木。」


俺はそのまま剣を斜めに振り下ろし、

魔力を込めた斬撃を飛ばす。

その斬撃で胸から腹にかけて大きく裂けた植木が、

血の噴水を見せながら床に落ちていく。


ベチャ

という音と共に床に叩きつけられる植木。

直剣を植木の腹に突き刺そうとした刹那、


「まだ…負けてない…!ここで殺して体力を━━」


そう植木は口に出し、右手で俺の背中を掴み、

左手で短剣を刺そうとする。


短剣の先が歩夢の背中に当たった瞬間、

高速で何かが、植木の左手を飛ばす。

植木がその方向に目を向けると、

既に戦闘を終えた小川が短剣を投げていたのだ。

小川は植木に


「お前の負けだ。潔く死ね。」


と言ったかと思うと、植木の腹に直剣が貫通する。

身体中に残った血液を吐いているかのような量の

血を吐き、植木は捨て台詞を吐いて絶命する。


「はっ………この………人殺し………」


命の灯火を失った植木の身体を抑える歩夢。

その歩夢を慰めるために歩み寄るが、

言葉が見つからない小川。


勝者のみが教務室に残る。

だが、歓喜の声など無く、

2人の吐息のみが、静かな部屋を包んでいた。

高橋 歩夢 Lv14

HP 8500

MP 100

STR 30

VIT 30

DEX 15

AGI 30

INT 10

スキル

捕食者

蒼き傀儡の勇者


小川 翔太 Lv9

HP 4500

MP 1500

STR 15

VIT 10

DEX 25

AGI 15

INT 25

スキル

熱き決闘者

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