1棟 2幕 初陣
「まずは装備を整えるか」
3年生がそう告げる。
突如行われた神「ロキ」の暇つぶし。
それにより今、俺たち越後信越工業高校の
生徒約400人が通い慣れた高校に
閉じ込められている。
無論、この世界で死ねば家に帰ることは叶わない。
それ故に生き残るための立ち回りをする事が
大事になってくる。
そのためこの武器選択箱を皆使い、武器を手に入れ
最初に与えられた500セル(ここでの通貨らしい)で
防具を揃える。
武器選択箱から出てくるの武器には
星が2つ付いている。
恐らくこの世界での武器のランクは星の数に
よるのだろう。
空欄の星が8つ、埋まっている星が2ということは
最大で星が10なのだろう。
講堂の出口にウィンドウが示す限り、
今の適正は星1つ。
その状況で星2つの武器と星1つの防具は
かなり安定する。
というかそれを想定しているはずだ。
しかし俺は悩んでいる。
武器選択箱を使うべきか否かを。
小川と俺は使う前に見つけてしまったのだ。
武器選択箱の説明を。
そこには
「ウェポンボックス
使用すると好きな武器種を手に入れる事が出来る。
出てくる武器は種類こそ選べるが、
特性やステータスはランダム。
ランクは今の適正のひとつ上の武器が入手出来る。」
と書いてある。
そう、この最後の今の適正の1つ上というのがネック
なのだ。今の適正が1だから2の武器が出ているが、
もし終盤の7~8で使えばかなり強い武器を
ノーリスクで手に入れる事が出来る。
正直な所武器を買う金を節約できるというのは
かなりでかい。
使わなかった500セルで防具や
ポーションが買えてしまう。
だがもしここで選択箱を使わず
金で武器を買うとする。
1番安い武器で基本短剣の450セルだ。
あまりは50セル。
ポーションが1つ75セルだから
ポーションも買えない。
当然防具も買えないから
ダメージへのリスクが高まる。
だが、そのデメリットを無視出来るほどに終盤の
リターンが大きすぎる。
どうする…
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悩んだ結果、俺と小川は基本短剣を購入し、
選択箱を残す方針にした。
全員が何となく装備が揃った辺りで片手剣を持った
3年生が号令をかける。
名前は確か…「高田 純一郎」だったか。
「よし!なんとなく全員装備が揃った所で
ひとまずこの講堂の先を視察しようと思う。
視察に参加する人は集まってくれ!」
俺と小川は二つ返事で行ったがやはり、
命がかかっている状況ではそんな勇気が出る人は
あまり居ないだろう。
最終的に
俺、小川、クラスメイトの相良、同じく大和
が第1視察隊。
そしてまたまたクラスメイトの
清水と、塚野が第2視察隊。
最後に高田先輩、濱田先輩、吉田先輩の3人で
第3視察隊となった。
何となく人選が出来た所で俺たち4人はスキルの
共有をした。
俺たちはインベントリを開いた時にスキルの欄に
それぞれ1つ「メインスキル」というのが
ある事を知った。
恐らくこのメインスキルと共に攻略していけと、
言うことなのだろう。
ちなみに小川はカードスキルらしい。
右の腰の辺りにデッキが生成され、
自分の左手の辺りにカードが5枚浮いている。
中身は自分しか見れない。
カードの使用には魔力を使用するが、
カードの一枚を左腰に移動させることで
仮魔力を補充出来て、1枚ごとに100追加される。
そのうちカードが無くなるのでは?
と俺が質問すると、
小川は続ける。
敵からの攻撃をパリィ、またはガードする事でカードが1枚追加される。
それと、カードの効果にドローの効果があるらしい。
相良のスキルはと言うと
最大HPの割合10%回復という、シンプルな能力だ。
大和は…
武器収納って言ってたっけ。
手、もしくは足で触れた物に武器を
仕舞う能力なんだそうだ。
俺はと言うと、
スキル 捕食者
対象を喰らい、経験とスキル及び魔法を会得する。
ルール用紙には魔獣の肉は基本的に汚染されており、
牛型や豚型等の動物系の肉以外を食うと
麻痺毒と嘔吐毒が付与されるそうだ。
つまり、俺の能力は動物系の魔獣しか食えないという
なんとも使いづらい事この上ない能力なのである。
大和は「リムルみたいでかっこええやんけ!」と
褒めてくれたがリムルのそれと根本的な何かが違う
気がするのは黙っておこう。
能力の共有が終わり、
方針及びフォーメーションの確認となる。
基本的に俺、大和が前衛、
小川が魔法攻撃の中後衛、
相良がヒーラーの後衛という事で満場一致した。
星1…マリオで言う最初の平原エリアの敵と戦いに行く
様なものなのに俺は異様なまでに緊張していた。
足は軽く震え、余計な考えが浮かぶ。
「もし俺が抑えきれずに相良がやられたら?」
「そもそも適うのか?」
余計な思考を巡らせてる時、不意に背中に衝撃が
伝わる。
大和が喝を入れてくれたらしい。
「んな緊張すんなって。俺らなら大丈夫だろ?」
そう言って俺の肩に手を回しケラケラ笑う大和。
コイツの能天気に救われる時があるとは…。
と軽く心で笑いつつ俺は
「おうよ!」
と返し大和とグータッチする。
そして深く息を吸って覚悟を決めて、
「行こう!」「「「おう!!」」」
号令をかけると講堂の出入口に手をかけ、
重い扉を押し開ける。
扉の隙間から漏れ出る光に目を軽く瞑りながら
人が入れる程度まで開ける。
講堂から出てまず目に入ったのは廊下の横幅が
少し広くなってた。
元々俺たちの学校の廊下は人4人が並んで歩ける位
だったが、その2~3倍ほどまで
横幅が広くなっていた。
もちろん天井も高い。戦闘のしやすや故だろう。
だが今までの学校と圧倒的に違うのは5mほどで
すぐ壁にぶつかることだ。
左手側を見ると部屋に繋がる出入口があった。
恐らくここからぐるっと回って向こうの廊下に
行けるのだろう。
資材倉庫と書かれた入口の戸を開け資材倉庫にしては
物が端に寄りすぎている部屋に入る。
そしてそれよりも最も特徴的なのは、
「これが…チュートリアルエネミーか…」
そこには「Lycaon Lv1」と白文字で書かれたタグを
頭上に浮かせた狼だった。
「グルグルグル…」と喉を鳴らし、こちらに歩み寄る。
4人が戦闘態勢に入る。
こちらの動きを待つかのようにライカンは静止する。
俺たち4人も初撃を与えるべく向こうの出方を待つ。
ライカンが痺れを切らし突っ込んで来る。
狙いは俺。
俺の喉笛を食いちぎるため、ライカンが飛びかかる。
俺はそれを寸前に左に避ける。
体制を崩したライカンに右手の短剣で
下から切り上げ、反撃を与える。
だが位置が悪く、浅い。
バックステップでライカンと距離を取る。
ライカンは痛みで涎を垂らしつつ
「グルルルァ…」と鳴いている
もう一度同じ手を…と考えていると
ライカンのネームタグの下辺りに
ライカンのHPバーが現れる。
それによるとライカンのHPは残り8割程度。
今の浅い攻撃で、2割削れた。
という事実に少し驚きつつ、次の一手を考えていると
突然後ろから火球が飛んできてライカンに直撃する。
爆風と共にライカンが吹き飛ぶ。
突然のことに驚き火球が飛んできた方を見ると、
小川がグーサインをこちらにする。
小川のカード魔法を使い、放った魔法の様子。
だが、ライカンのHPは削り切れておらず、
残り4割程度残っていた。
それに小川が
「うーんやっぱり知能値依存だから威力出ねぇな…」
と顎に手を当て独り言をつぶやく。
確かに少し考えればあれだけ大きなエフェクトにも
関わらず、実際のダメージは俺が浅く切った短剣の
およそ2倍適度の威力しか出ていない。
魔法を食らった反動から起き上がったライカンが、
こちらに威嚇する。
俺は軽く萎縮してしまうが、
大和はそれを無視するかの様に突撃して、
俺は置いてかれないよう追いかける。
ライカンの飛びかかりを大和は上に飛んで避け、
落下した勢いでライカンの背中をつき刺す。
HPバーのゲージが削りきれ、
ライカンが力なく倒れる。
ふぅーっと息を吐き佇む大和。
大和に美味しい所を持っていかれたので
文句を言いに行きたいがそんな事をここは許さない。
奥の廊下に繋がっているであろうドアから
ライカンが3匹ほど入ってくる。
俺はニヤリと笑い、
「手筈通りに頼むぞ!」「「「おうよ!」」」
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「成程…これが最初の敵か…」
高田先輩にライカンの死体4つを見せると
顎に手を当て少し考えている様子。
そして少しして高田先輩は俺たちに質問をし始める。
「1匹辺りの経験値は?」
「およそ20。
レベルアップに必要な経験値が50なので
3匹狩れれば上々です。」
「そうか…」
質問に答えた俺。それに高田先輩はまた考え込む。
また少しした後、よし!と言った後、清水と塚野に
「2人も奥を見すぎないよう、
3匹だけ倒して来てくれ。」
そう提案し、2人は了承する。
だが、正直あの2人は3匹で我慢出来るだろうか。
俺たち4人でさえ、あの戦闘を楽しいと思えた。
そんな楽しい事をあの2人は
すぐに終わらせるだろうか。
等と考えていると2人は講堂から出ていった。
まぁ考えても仕方ない。
レベルアップしたし、ステ振りしよう。
そう心の中で唱え、
指を振り下ろし、ウィンドウを出す。
ウィンドウは声で呼ぶ他に指を2本立て、
下に振り下ろす動作をすると現れる。というのを
さっき小川が発見した。
俺たち4人は役割が違う。
俺と大和は前衛。
前衛でも俺はVITを上げ、軽戦士ビルドに、
大和はAGIとSTRを上げ、DPSを高める方針。
とは言っても、序盤の敵でそこまでVITが必要になる
とは思えないため、
俺はスキルポイント5をSTR3 AGI2で振り、
大和はAGI4 STR1で振った。
小川と相良はと言うと2人は魔法系故知能値を高める
事に特価するらしい。
小川はAGI1 STR1 INT3で上げ、
相良は INT4 VIT1で上げる。
ひとまずステ振りを終えた俺たちは
ライカンの死体の前に集まる。
今回の戦闘で手に入れた280セル。
そのうち250セル使って、
講堂の真ん中に焚き火を配置する。
ライカン死体から皮を剥ぎ取り、
肉を1口大に切り分けて串に指し、
焚き火で焼く。
パチパチと音を立てて狼の肉を焼いている焚き火。
焼けるにつれ肉汁が垂れていき、俺たちは
食欲をそそられる。
4分ほど焼いた後、
俺たちは全員で一斉に肉を喰らう。
その味は…
「「「「う…美味ぇぇ!!!」」」」
狼の肉なので匂いがキツイかと思っていたが、
匂いがキツイなんて事は全くなく、
むしろ肉の香ばしい香りが咀嚼する度に
口いっぱいに広がる。
噛めば噛むほど出てくる旨みと肉汁、
心地よい舌触り、
程よい弾力。
どれを取っても100点とは言わずとも90点は取れる。
これを俺たちだけで独占するなんて勿体ない。
俺たちは自分の分を食べた後、残っていたライカンを
剥ぎ取り、よく焼いた後ここにいる人に配る。
全員が美味そうに頬張るのを見ると
こちらも嬉しくなる。
これが料理人の気持ちなのか…等と考えていると
2人が帰ってきた。
その背中には9匹のライカンが担がれている。
あちゃー。やっぱり3匹じゃ我慢できなかったか。
と思っていると高田先輩は2人に注意し始める。
だが2人はそんなの目もくれずこちらにやってくる。
「なんだ!その美味そうな肉!」
俺はその狼の肉だと答えると2人は大いに喜び、
狼の皮を剥いだ後、肉を焼き始める。
2人が口に沢山詰め込んで頬張っていると、
高田先輩が
「じゃあ俺たち第3隊の出番だな」
と言った後、講堂から出ていった。
それを見送った後俺は
肉を頬張る2人に質問をしてみる。
2人の今のレベルとスキルは何かと。
2人の口から出たのは
俺たちの出鼻を挫くものだった。
今のレベルは3 清水のスキルは「戦士の血統」
常時STR VIT AGIに80%のバフを付与。
塚野に至っては「剣聖の加護」
剣を装備している間STRとAGIに
120%のバフがかかり、
装備してる剣の剣術が、
一時的に最上位になるらしい。
そう、まんま俺たち前衛の上位互換なのだ。
初っ端からアイデンティティを
失った俺立ちだったが、
俺、小川それに大和はこの2人に対して
とても大きなアドバンテージがある。
そう選択箱の有無だ。
ひとまずはそれでメンタルをケアしていこう。
でなきゃこの先やってけねぇよ…
と空の涙を流す。
それにしても…
「高田先輩…遅いな…」
「どっかでうんこでもしてんだろ」
と言ってケタケタ笑う大和。
もはや能天気すぎて引っぱたきたくなる。
俺はでかけた右手を引っ込めるが、
やはり高田先輩達の安否確認は大事だろう。
そう決意し、俺は3人に
「高田先輩達の安否確認に行こう」と提案する。
3人は了承し、(大和はしぶしぶ)再び外に出ていく。
資材倉庫に入る。
居ない。
資材倉庫を抜けて廊下に出るも、
先輩達の影すらない。
ここの廊下は2つ部屋が付いている。
左から確認していこうと3人に言って慎重に
戸を開ける。
だがそこには先輩達の影はもとより、
敵の姿すらない。
恐らくここは2人が狩り尽くしてしまったのだろう。
こっちはハズレか…まぁ良かったのかもしれない。
「すれ違ったんじゃね?この部屋見たら帰ろうぜ」
と大和が言いながら右の部屋に入る。
それに続き俺達も入ろうとするが何かにぶつかる。
大和の背中だ。
俺は文句を言いながら大和の横を通る。
「おい!急に止まったら危ないだ…ろ…」
言葉に詰まる。
そこには、
高田先輩達の無惨な死体が散乱していた。
1人は壁に貼り付けられ、
1人はバラバラで、
1人は出血で海を作っていた。
俺たちはその悲惨な現場を
見ることしか出来なかった。
高橋歩夢 lv2
HP 1000
MP 100
STR 13
VIT 10
AGI 12
INT 10
DEX10
小川翔太 lv2
HP 1000
MP 300
STR 11
VIT 10
AGI 11
INT 13
DEX 10




