2棟 3幕 古室と細川
スキル スロースターター
時の力により力が倍増していく。
常時ステータスが60%になる代わりに
時間経過により最大120%まで上昇。
「何カッコつけてんだ?お前、気持ちわりぃ。」
「うるせぇ!かりんとう!」
互いを罵りあう大和と古室。
仲がいいのか悪いのか。
まだギャーギャー罵り合っているが全部書いていると
それだけで数百文字とか行っちゃうから割愛。
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「ちっ!もういい。やるぞ、細川。」
そう言って後ろを向く古室。
その言葉を聞いて
ゆっくりと背中に担いでいた槌を取り出す細川。
「はいはい。」
その言葉が火蓋となり、
古室が大和の方へ向かう。
何度も掌で触れようとしてくる辺り、
スキルに頼りっぱなしのひ弱なもやしなのだろう。
それを大和も煽るかのようにギリギリで避けている。
問題は…
「ううっらぁっ!」
3年生の大剣の直撃を食らってもピンピンしてる、
このデブの方だ。
細川が大剣の直撃を受けた腕を押し出し、
カウンターの要領で槌を横振りする。
3年生の橋本先輩は声にならない悲鳴を出し、
槌の横振りをジャンプして避け、
大剣を引き抜いて細川と距離を取る。
その隙に後ろから1年生の神田くんと谷くんが追撃するが、
細川は軽くいなす。
PKで高レベルになっているとはいえ、
総力戦で戦えているレベル。
タイマンは正直考えたくないな。
いや、
あそこでもやしとタイマンしてるキチガイがいたな。
そう思い出した俺は大和の方をチラリと見ると
溶けたであろう短剣の残骸が10は転がっていた。
そして、少し息が浅くなっている大和と
余裕そうに笑っている古室。
状況は一目瞭然だった。
そんな時、古室が大声で話し始める。
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「驚いたか!!俺のサブスキルに!!
俺のサブスキルは『スロースターター』!!
戦闘開始から時間経過で少しづつ
ステータスが上昇していくスキルだ!!
お前がいくら早かろうとそのうち追いついてやる!!」
そんな言葉を聞いた俺が古室を鼻で笑う。
「はっ!俺の速度に追いつく前にてめぇを殺してやるよ!!」
そう言って俺は背中に背負っていた鞄から
1本の直剣をスキルで取り出し、構える。
そのまま直剣で4連撃スキルを放つ。
古室はそれを掌で受け、剣を溶かす。
それに俺は驚きもせず、
更に剣を取り出し突きスキルを放つ。
古室はそれに反応できず、左頬が切り裂かれ、
そのまま刃は耳まで届き、古室の左耳に穴が空く。
古室は痛みに叫びながら剣を溶かし、俺と距離をとる。
「クソっ!!ひ弱なかりんとうの筈だろ!!」
古室が耳を押えながら大和を罵倒する。
その言葉を俺は鼻で返し、短剣を取り出す。
「はっ!!こっちに来てから鍛えてばっかなんでね!!」
その言葉に憤慨した古室が、俺に突進を繰り返す。
俺は古室を斬り付けながら回避をし続ける。
ステータスの差こそあれど、
こっちに来てからの実戦の経験の差が、
それを縮めていたのだ。
だが、俺が4度目のカウンターをしたその時、
古室が先読みで裏拳を繰り出し、
カウンターのカウンターをしたのだ。
咄嗟に短剣で受け、短剣がまた溶ける。
その名に恥じないスロースターター。
少しづつ動きが良くなっている。
古室も実戦に慣れ、更にスキルでステも上がっている。
このまま続けば負けてしまうだろう。
舌打ちした後、
距離を取りつつ溶けた短剣を古室に投げつける。
その後、短剣を取り出そうと鞄に触れるが、
違和感に気づく。
「基本短剣のストックが!!」
切れていた。
古室戦だけで12本。
在庫がもつ筈なかった。
俺が気を取られている隙に古室が俺の肩に触れると、
俺の鞄の肩当部が溶け始める。
俺は急ぎ距離を取り、鞄を投げ捨てる。
鞄から直剣を抜き取るのを忘れずに。
古室が俺に突進してくるのが見える。
なら、俺は全方位スキルで迎え撃つ!
古室が間合いに入ったその時、
俺は上位直剣スキルの『クロスサークル』を放つ。
だが、古室には当たらず巧みに避けられた。
そればかりか接近を許してしまう。
古室の掌と俺の顔の距離が数センチという所まで。
「まずっ…」
流石に死を覚悟した。
その時、古室の顔面を火の矢が突き刺す。
古室は変な悲鳴を上げながら吹っ飛ばされる。
俺はその火の矢の出元を目を動かし探す。
そこには、
白い息を吐きながら手をゆっくり下ろす
小川が立っていた。
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さて…俺はこのデブを抑えないとな。
そう口に出し、俺は細川の方に目を向ける。
細川は動きが鈍くて攻撃が当たっていないが、
こちらの攻撃もダメージが入ってる様子は無い。
動きはアレ程凶悪じゃない。
単調な縦振りや横振り。
だが、何度か斬ったが
手応えだけならアースガーディアンを優に超えている。
単調なモーションでもお釣りが返ってくるほど
防御力が圧倒的だ。
約12分間、総力戦で攻撃を受けても、
HPバーの1割程度しか削れていなかった。
そして総力戦が故に颯人もスキルを打ちずらい。
攻略組が純粋な力押しで圧倒されている。
レベルは俺たちが28~26って所。
向こうは31。
それほど差は無いはずなのにこの差はなんだ。
攻撃力も防御力も向こうが俺達の倍はある。
何かカラクリがあるとしか思えない。
そのカラクリを解明すべく、俺は駆け出す。
細川の槌の振り回しを剣で弾き、流しつつ
懐に入り込み腹に手を当て、叫ぶ。
「アイスソーン!!」
詠唱と共に氷の茨が細川を包み込む。
細川に氷の針が食い込む度、奴の顔が歪む。
その隙に俺は細川と距離を取り、話し始める。
「アイスソーンは凍結により防御貫通。
有効打になりうるハズだ。
HPもさっきよかモリモリ減ってるな。
このまま行けば…」
そこまで言った刹那、細川が氷の茨を砕き始めた。
時間にして2秒。
直当てで2秒しか拘束出来ない。
その事実を噛み締め舌打ちが漏れる。
細川が俺の顔を見た途端、
体に着いた茨を払いながら口を開く。
「良い技だな。
茨の耐久値が高けりゃ危なかった。」
その言葉を聞いた俺は一瞬目を丸くし、
口角を上げ細川に返す。
「そっちこそ硬すぎんぜ。」
細川に突進を繰り返す。
その度俺の剣と細川の槌がぶつかり合う。
何度も。
何度も。
何度でも。
細川の素早い横薙ぎ払い。
俺はすかさず縦振りで対応。
カウンターで✕スラッシュ。
縦ガードで対応される。
細川のカウンターで下振り上げ。
何とか横振りで弾き。
更にカウンターで突き技。
細川の目にあたる直前。
ほんの数センチの所で
槌で逸らされる。
そのまま俺は体勢を崩してしまう。
「まずいっ?!」
細川の左アッパーがみぞおちに直撃した。
内蔵が悲鳴をあげている。
そのまま槌で横払いをくらい、壁に叩きつけられる。
腕の骨が折れ、内蔵も傷つき、俺は吐血する。
そのまま細川は周りにいるヤツらに
槌を振り回し、頭を潰していく。
1人、また1人と頭がぐしゃっと言う音と共に弾け飛んでいく。
クラスメイトの光も死んだ。
他の奴らが細川を斬りつけても
蚊に刺さたかのように動じない。
7人死んだ辺りで我慢できなくなった大野の炎魔法と
3年の島田先輩の氷魔法で爆発が起き、
水蒸気の煙幕が出来る。
今はこの煙幕で細川も動けないが、それも時間の問題。
「何か食って回復しなきゃ…」
そう口に出し、俺は這って進んでいく。
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「小川…なんで…ここに…」
ガクガク震えてる足で何とか立ちながら声を絞り出す。
その言葉に小川は少し溜めた後、口をゆっくり開く。
「どうしてもアイツは…古室は俺が殺したかったんだ。」
そう言って腰から短剣を引き抜き古室に駆け出す小川。
俺は小川の背中を少し目で追った後、
古室の方へ走っていく。
古室はというと頭を掻きむしりながらこちらを睨む。
その顔は右頬を中心に目元や首筋まで焼け焦げていた。
「てめぇらぁぁ!!!!
ぶっ殺してやるっっ!!!!」
そう言って古室は暴れるように手を全方位に振り回す。
俺はそれを躱し距離をとる。
運動神経皆無の俺と古室。
こっちではステータスでなんとか出来るが
本来の運動神経が無くてはその体の動かし方も分からないままになってしまう。
俺は山口や清水達に教えて貰えたが、古室はどうだろう。
最初から講堂に籠り、
出たとしても兎や狼を数匹狩るくらい。
その違いだった。
立場が違えば俺は勝てるだろうか。
断言しよう。
否。
古室の動きを見てれば分かる。
力任せに腕を振り回すあの姿。
俺もきっとそうなっていた。
だから。
俺は、
自分と似て不器用な彼の、
自分と同じみっともない男の…古室の左腕を
切り落とした。
左腕が落ち、動きが止まる古室。
その隙に小川は風魔法で古室の腹を裂く。
鮮血が破裂した蛇口から漏れるように噴き出し、
古室はその場に力なく倒れて行く。
はずだった。
奴は寸前で留まり、
カウンターの突進で
小川の左足に触れる。
「小川っ!!!!」
そう叫ぶのとほぼ同時に、
小川は決意を固めたように左足に短剣を突き刺し、
切り落とした。
切断面から血が噴き出し、小川はその場に倒れる。
魔法で傷は焼いているが、出血は酷い。
痛みもある、前線には戻って来れないだろう。
でも、アイツは2発入れた。
たった2発で古室のHPの6割を削り取った。
アイツが来てくれたおかげで、俺は。
迷わなくてすむ。
「烏丸ァァァ!!!!!!」
口から血を飛ばしながら叫ぶ古室。
俺は口角を上げ、大きく足踏みをしようとした
その時。
唐突に部屋が明るくなる。
俺も古室も光の方を向くと、
煙の中で光る人影がゆらゆらと揺れていた。
お久しぶりです、霧ヶ峰藤五郎です。
間もなく古室、細川戦が終わります。
短いようで長かったです。
魔王が敗れたとて、
深淵は常に貴公を見ている。
魔を打払い闇を飲み込め。
さすれば貴公は真なる勇者とならん。




