1棟 終幕 地ノ守護者
スキル 『チャージ』
同じ体制を取り続ける限り一時的に筋肉を増強させる。
代償として増強した筋肉を使用した場合、
その筋肉が身体にある筋肉諸共爆発し、
使用者は一定時間動けなくなる。
増強させる筋肉は自身で指定可能。
使用者 佐藤颯人
涼しく、静かな夜。
季節設定は秋なのだろうか。
鈴虫が鳴いている。
好きか嫌いかで言えば俺は虫の鳴き声は好きだ。
教室の窓に寄りかかり、半月を見上げる。
あわよくばこの静かな夜に月をみながら1杯…
と行きたいが、今から1層に一人で戻るのはリスクが
あり過ぎるので却下。
人界歴1年の6月なのに秋とはこれ如何に。
まぁ俺たちが勝手に言い出しただけだしな。
図書館にはそういう類いのもんあんだろうけど
開かなきゃ探れもしねぇ。
というのも、3層に着いた時図書館で情報を
手に入れようとした俺たちは無事に場所には着いたの
だが、入口に結界が張ってあり何人たりとも侵入
出来なくなっていた。
トロールを倒した時に手に入れた
この神代の遺物、
深淵の腕輪が使えないかこっそり試しに行ったけど
意味が無かった。
4層になにかあれば良いな、なんて考えて
目を閉じる。
合体も見れたし俺らン教室も取り返したし、
とりあえずは上々。
歩夢たちのレベリングも兼ねて1層で待ってるアイツらを連れてくるかな。
なんて考えていたら次第に眠気が襲い、
気がついたら俺は夢の中にいた。
__________________________________________
ぐっすり寝ていた俺と大和だったが
小川の呼び掛けで起こされる。
「おい!大和!歩夢!起きろ!教卓に変なのがある!」
眠い目をこすりながら教卓を見ると
そこには横幅15cm、縦30cm程のクリスタルが浮いていた。
不思議に思いつつクリスタルに触れてみるとウィンドウが現れる。
__________________________________________
ワールドクエスト 序幕
地ノ守護者の殲滅
大地の化身が生み出した守護者。
闇を取り込み暴走し、見境なく暴れているという。
亡き大地の化身に代わり、暴走を止めてやろう。
受注可能時間 残り43分12秒
クエスト報酬
+50000exp
+300000セル
神代の遺物
深淵の指輪
__________________________________________
「な…なんだこれ…」
俺は顎に手を当て、考え込む。
ワールドクエスト?
そもそもここに来てからクエスト自体初めて見た。
発動条件は恐らくこのクリスタル。
だがこのクリスタルの出現条件が分かって居ない。
考えがまとまらず、歩き出す。
まずは条件の洗い出しだ。
1つ目、この部屋に来たら時間で出現
無いとは断定出来ないが可能性は低いだろう。
もし、この部屋に来るだけでクリスタルが
出現するならこの部屋に来た時点で
クリスタルを置いておけばいいからだ。
2つ目、ここでなにか特定の行動を起こした場合
まぁ1番可能性があるのはこれだろう。
この部屋に来てからした事は
屁
飯
寝る
クソ!ダメだ条件が分からん!
そんな冗談はさておき、おそらくトリガーは
あのトロールだろう。
トロールの足元に鎖が巻き付けてあり、
後藤のロッカーの前に刺さっている杭と繋がっていた。
あいつとは戦わなくても先に進めたのだろう。
現に今もこの先にダンジョンが続いている。
だがまだ確定した訳じゃない。
実証したいが検証のしようも無いと…
「いつまで無視すんだ!歩夢!」
大和からの怒声と拳骨で我に返る。
殴らなくていいだろ。
とボヤきながら立ち上がると
小川が通信ルーン石を使い、講堂で待っている
他のメンバーに報告しているところだった。
大和が俺に向かい
「どうする?多分ボスクエだぞ。
多分クエを受けたらボス部屋に転送されるタイプだ。
俺のゲーマーとしての勘が言ってる。
残り時間も少ない。
ここからアイツらが来るのに2時間はかかる。
アイツらが来るのを待って、
ダンジョンを攻略してからボスに行くか
すぐに転送されるのを覚悟で受けるか。」
そう言われて俺はまた考え込んでしまう。
正直1棟最後のボスの情報は欲しい。
何せここが終われば遂に2棟。
分かりやすく前進できる。
それに転送されるのならばこの先のダンジョンを
攻略しなくても良い。
もしかしたらこのクエスト報酬は
ボス報酬と別かもしれない。
だが、ここにいる3人で1棟最後のボスを倒せるのか?
断言しよう。
否。
もちろん俺達もレベルが上がって小川と俺はレベル25。
大和は27。
最初の頃と比べてだいぶ高レベルになった。
だが、ここのボスより簡単であろう3層のボスですら
ギルドメンバー7人でギリギリの戦いだった。
あそこからレベルは2つしか上がってない。
そんな状態で3人でボスなんて不可能に近い。
でもボスクエは受けたい…
そんな風に考え込んでいると、
ふと頭にひとつのアイデアが浮かぶ。
「小川。」
「ん?」
「確か、召喚魔法使えたよな。」
__________________________________________
「ほい、了解した。
ここでリーダー全員同時にクエストを
受ければいいんだな?」
「はい、お願いします」
残り時間は12分。
間に合った。
小川のカード魔法に召喚魔法があったのと、
人間も召喚出来たのが奇跡だったな。
今回のレイドリーダーはどうしようか。
多分俺達が最初に辿り着いたから俺たちの誰かが
やるんだろうけど、
俺たち未熟な勇者のメンバーの殆どがアタッカー。
レイドメンバーを操れるほど頭の良い奴なんて…
いた。
アイツにしよう。
という事でそんな噂の人物の元へ突撃訪問!
「では、
今回のレイドリーダーに選ばれた感想をお願いします。
相良はん。」
「俺かよ!!」
__________________________________________
なんやかんやあってレイドの準備が整った俺達は
レイドパーティー4つのリーダーを
クリスタルの前に集め、クエストログを出す。
後2分。
何とか間に合いそうだ。
相良が俺たちに告げる。
「それでは、
向こうに行ったら説明もクソもないかも知りません。
もし、
速攻ボス戦だったらそれぞれで対処をお願いします。」
「「「「了解!」」」」
「せーの!」
息を合わせクエストを受注して
俺たちの教室に集まったレイドメンバーおよそ25人が
青白い光に包まれる。
目を開けると洞窟のようになっていた。
目の前には大きな扉があり、
おそらくボスフロアだと思われる。
全員ワープしたのを確認した相良が
扉の前に立つ。
「皆さん聞いてください。
遂に1棟の最終ボスです。
ここさえ、ここさえ倒してしまえば2棟へ。
ようやく、
このクソみたいな世界で1歩進むことが出来るんです。
だから、皆さんお願いします。
俺達に力を貸してください。」
「「「おぉぉおおおおおお!!!!!!」」」
3年生、2年生、1年生が
声を合わせ大きく咆哮する。
3年生の1人がレイドメンバーに混ざりながら叫ぶ。
「野郎ども!!
武器を持て!!
騒ぎ立てろォ!!」
「「「「「うおおおおぉおぉぉおおお!!!!!!」」」」」
さらに鼓舞されたレイドメンバー達は
半ば興奮状態だ。
その興奮が収まらないうちに相良が
「行きましょう」と言って、扉を開ける。
中は暗く、歩みを進めても明るくなる様子はない。
真ん中まで歩くと四角い塊が置いてある。
見た感じ俺の知っている岩でも金属でも無い。
3年生が近づいて行く。
誰かが止めてもお構い無しに塊の前まで来てから、
1発蹴る。
何も起きないので、3年生もレイドメンバーも
頭に?マークが浮かぶ。
不思議に思い目を凝らして塊を見ると、
そこら中に魔法陣が組み込まれている。
まさか!と思い、駆けた時には遅く、
塊が分解され、組み立てられ、
みるみるうちに5mはあるゴーレムが目の前に現れる。
ゴーレムは大きく叫ぶと近くで腰を抜かした
3年生の方を向く。
3年生はというと恐怖で動けないでいる。
俺は攻撃が当たる前に駆け出す。
だが、間に合うかどうか…
ゴーレムが拳を振りあげる。
俺と3年生がほぼ同時に目を瞑る。
だがその刹那、風を切る音が聞こえたと思ったら、
3年生を抱えた塚野が俺の横に立っていた。
ゴーレムは大和と清水、小川が抑えている。
その隙に俺は3年生を本隊に戻す。
部屋中が明るくなる。
ここは…演劇部の部室か!
物が多くて足場も狭いっ!
相良が魔導書を開き、左手に持つ。
そのまま魔導書を持っていない右手を
ゴーレムに向け、叫ぶ。
「攻撃ッ!!開始ッ!!」
__________________________________________
「クソ!武器が!」
「これを!」
大和が剣を投げる。
剣は回りながら塚野の足元に飛んでいき、床に刺さる。
剣を床から引き抜き大和にお礼を言った塚野が
再びゴーレムにスキルを放つ。
かれこれ37分程戦っているが、
ゴーレムの5段あるHPバーは2段しか削れておらず、
3段目も9割程残っている。
流石に疲労も溜まってきた。
それが顕著に現れてるのが大和だ。
そもそもスタミナがないのに37分も戦闘しっぱなし。
汗を滝のように流し、顔色は悪く、唇は変色して、
過呼吸気味に息を吸って吐くのを繰り返している。
小川もさっきから動きに疲労が見える。
約40分戦って半分以下。
硬すぎる。
何かカラクリがあるとしか思えない。
何かないか。
探せ。
探し出せ。
そう心に言い聞かせ、攻撃を弾きつつ、
攻撃を通す策を模索するため、
ゴーレムの攻撃をいなしつつ観察する。
関節部、
裏を除いて硬い装甲に守られている。
頭部、
丸くなっているが湾曲した装甲だと思えるほど硬い。
目の役割をしているレンズ部分はガラスが硬すぎる。
ラピッドチェインを撃っても割れないほどに。
胴体、腕、脚
1番硬い。
魔法陣が光ったり消えたりを繰り返している。
ゴーレムは人型に近く、細身だ。
だがその分スピードとパワーを兼ね備える。
さっきから攻撃を与えても防いでも剣の耐久値が
ゴリゴリ削れているのが分かる。
何か…弱点を見つけないと…
俺たちやゴーレムより先に武器がダメになる。
思い出せ、ウィークポイントはどうなっている…
色んなゲームを思い出せ。
頭…コア…内臓…紋様…
…
……
………っ?!
そうか!
「お前ら!身体にある光る魔法陣を叩け!」
レイドメンバーがいきなりの声に驚いてこちらを向く。
塚野と清水、小川を初めとしたギルドメンバーや
一部の人たちは直ぐに理解して行動に移そうとする。
そして、タイミング良く魔法陣が右脚で光り出す。
それを見た清水が脚で光った魔法陣を
叩こうとするが、寸前で移動してしまう。
だが、魔法陣が胸の部分に移動した途端
魔法陣に短剣が刺さる。
俺達もゴーレムも驚き、
ゴーレムは大きく咆哮した後、短剣を引き抜く。
HPバーを見ると3段目の8割まで削れている。
あんな短剣の投擲で一段の1割削れている。
確定だ。
あのゴーレムのウィークポイントは…
「魔法陣だ!光る魔法陣がウィークポイントだ!」
俺が伝える前に大和が叫ぶ。
剣を杖代わりにして何とか立っているのに
そこまで叫べるのは最早才能なのだろう。
だが、短剣を投げたのは素直に感謝するぜ。
俺は下がり、大和の元まで行き、耳打ちする。
「助かった。早く息整えて戻ってこい。」
「はっ!当然。」
大和は即答して、大きく息を吸い込み、吐き出す。
それを見た俺はゴーレムの元まで走り出す。
そこからは早かった。
それぞれが、光る魔法陣を見かけた途端叩き、
それ以外でもスキルで削る。
魔法陣のカラクリを見つけてからものの数分で
HPは最後の1段まで削った。
腕にあった魔法陣が消え、胸に移動する。
恐らく固定化されたのだろう。
だが、そういう時は決まって動きが変わる。
警戒しつつ剣を構える。
ゴーレムが大きく咆哮すると、
身体中に青白く光るラインが現れ、蒸気を吐き出す。
すると演劇部の美品入れから
小さな岩の塊が現れる。
みるみるうちにその岩はゴーレムへと変貌する。
130センチ程の小さなゴーレムが6体。
相良が叫ぶ。
「雑魚は俺達がやっておく!歩夢はボスを!」
「了か…」
言い終わる前にゴーレムが足に力を込め、突進してくる。
「ッ!!」
超速の突進撃。
それに奴の怪力が乗ったパンチ。
俺は咄嗟に剣で受け流す。
だがその勢いで剣が砕ける。
直撃していたら死んでたな…
だが一息つく暇もなくゴーレムが強く脚で地面を叩く。
すると岩の槍が連続的にこちらに向かってくる。
早めにローリングをしてもギリギリ。
それがほぼノーモーション。
「ふざけてるな…」
だが魔法陣は固定化された!
俺はインベントリから予備の剣を取り出し、
剣を構え、奴に向かう。
すると相良が俺たちに向かって大きく叫ぶ。
「お前ら!!最後の一段!!全員で削りきれ!!
各々が持てる最大火力を打ち込んでやれ!!」
「おぉぉおおおおおお!!!!」
3年生が撃った中位水魔法 『水槍』が直撃する。
間髪入れず追撃を与えるため俺は駆け出す。
3年生のメイジはこっちに来てたのか。
ありがたい。
水槍が当たり、体勢を崩したゴーレムにもう一度
魔法が直撃する。
大野が撃った上位炎魔法 『ミリセントフレイム』だ。
大野は直撃し、怯むのを見たらもう一度炎魔法を撃つ。
更に体勢を崩し、遂に膝を着いたゴーレム。
今だ!今しかない!
俺は剣に力を込め、魔法陣にスキルを放つ。
一撃目
右下から左上への切り上げ
二撃目
左下から右上への切り上げ
まだだ!
まだ入れろ!
もっと追撃しろ!
「せやあああああああああッ!!!!」
三撃目
右中段から1、2撃目に出来た交差部直線上まで切り上げ
四撃目
三撃目と一撃目を繋ぐように振り下ろし
上位独創スキル 『ブルースクエア』
ゴーレムは外装が砕け、倒れる。
そこに追撃を入れるかのように山口が駆け寄り、
上位格闘スキル 『サマーソルト』で
ゴーレムを蹴り上げる。
空中に上がったゴーレムに清水が飛び上がり、
更に追撃する。
上位格闘スキル 『牙槍突き』
清水のスキルの直撃を食らったゴーレムが
跳ね飛ばされて、その衝撃で飛び上がり、着地する。
ゴーレムはここまでの連撃コンボを食らっても
痛がるフリすら見せず、俺に向かって突進してくる。
だがそれをタンクは許さない。
杵鞭がタンク専用スキル 『挑発』で
ゴーレムのターゲットを取る。
ゴーレムの意識が俺から離れた途端俺は好機と見て、
中位直剣スキル 『天斬』を発動、
ゴーレムの左腕を関節部から斬り飛ばす。
だがゴーレムはそれでも止まらない。
暴走機関車のように攻撃の手を緩めず、
近くに居た俺に何発も右腕の振り下ろし攻撃を繰り返す。
5回ほど避けたところで、流石に俺もスタミナ切れを
起こし、その場で躓いてしまう。
そのままゴーレムは腕を振りおろす。
俺の背骨とゴーレムの腕が当たるまで
あと10cmほどになった時、
二振りの剣がゴーレムの腕の軌道を逸らした。
その剣を見て俺は軽く感動し、
助けてくれた恩人に叫ぶ。
「遅せぇんだよ!」
「悪い!!遅れた!!」
そこにたっていたのは、
たった一人でLv90のモンスターを倒した少年だった。
__________________________________________
「状況は?!」
「ボスのHP残り僅か!
でもあのヤケクソ連撃に近づけねぇ!」
俺が大和に軽く状況を伝える。
それを聞いた途端大和がニヤリと笑い短剣を回し、
双剣を構える。
「右腕は俺が抑える!お前らは!」
「全員突撃ッ!!了解!!」
俺が被せるように答え、
もう一度ゴーレムの元へ駆け出す。
大和は俺より尚早く駆け、
ゴーレムの右腕振り下ろしを双剣でいなしていく。
「凄い、連撃が起こる前に初撃を弾いて連撃に派生しないようにしてる。
流石はAGI 振り!!俺も負けてらんねぇ!!
右腕は大和が抑えてくれる、なら!
脚に力を込めて…一気に懐まで!!」
俺は高速で跳ねて、ゴーレムの懐まで飛んでいく。
「このスピードのまま…コレを活かしたスキルをッ!!」
ゴーレムと直撃する直前で突きスキルを発動。
スピードを活かし、貫通力を上げるッ!!
突きスキルがゴーレムの魔法陣に直撃。
だが、貫通は出来ず剣が砕け、空中に放り出される。
そこにゴーレムの右振り下ろしが被さる。
「まず…」
歩夢は死を覚悟して、目を瞑る。
だがすんでのところで轟音と共にゴーレムの右腕が
弾かれる。
歩夢は恐る恐る目を開けると目の前に短剣が渡される。
「それ使って凌いでくれ。」
ゴーレムの右腕を飛ばし剣を手渡した双剣使いの少年はもう一度ゴーレムに駆け出す。
__________________________________________
大和視点
ゴーレムの攻撃一つ一つが重い…いなすのがやっとだ。
やはりゴーレムの右腕を落とさないと。
ゴーレムへのトドメはアイツがやってくれる。
俺じゃなくていい。
「とは言っても…」
ゴーレムを見上げる。
コイツ相手にそんな手加減もしてられねぇよ…
等と文句を垂れてるとゴーレムの連撃初撃、
右振り下ろしが飛んでくる。
俺は何とか右上に飛んで避ける。
「チッ!!俺のぼやきは無視かよクソッ!!」
着地を狩ってくる二撃目ストレート。
頭の上で放った横なぎでいなす。
いなされるのを前提とした三撃目裏拳。
ここを双剣スキルで強く弾く。
でないとヤケクソ速度のヤケクソ連打に派生しちまう。
裏拳!
ここでクロスアップをッ!
大和は裏拳に合わせてスキルを放ったが、
奴の作戦に負けた。
その裏拳はフェイントだったのだ。
当たる直前に腕を戻し、スキルを空振りさせて
もう一度裏拳。
大和は対応出来ずに直撃する。
「ッ?!」
そのまま吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。
内臓が悲鳴を上げてる。
身体がとんでもなく重い。
目眩もしてきた。
それでも、俺はコイツを抑えるって約束したからな。
「血ィ出てっけど、身体の調子は最高だぜ。」
新スキル 『血の誓い』を獲得。
だがゴーレムもヤケクソ連打に入ってる。
今は何とか山口と清水で抑えられてるが
そのうちスタミナ切れでそれも決壊する。
連撃の合間に差し込む、最速のスキルで。
奴の右腕を落とすッ!!
__________________________________________
歩夢視点
また助けられた。
また俺は失敗した。
悔しい。
俺はまだここに立つべきじゃないかもしれない。
清水、塚野、大和、山口、颯人。
アイツらはアタッカーとして十二分に役割をこなしてる。
1人でもやって行けるだろう。
杵鞭も挑発の使えるタンクだ。
ここを溢れても何処でも活躍していける。
相良も貴重な割合回復が出来るし、
大野は超火力の魔法が撃てる。
小川だって火力は負けてないし召喚魔法もある。
俺以外の7人は活躍出来てる。
俺だけだ。
俺だけ何も出来てない。
俺だけ、コイツらと肩を並べて歩く資格がない。
やっぱりクソゲーだ。
この世界は。
それでも
「それでも…俺はまだ立てる、まだ戦える。
アイツらがそれぞれ個性があるってんなら
俺は不屈の精神で戦ってやる。
1回転んでも2回立てばいい。
7回転んでも8回立ちゃ良い!
100回転んでもッ!!
101回立ち上がってやるッ!!!
それがッ!!高橋歩夢だッ!!!!」
大和から貰った短剣を握りしめゴーレムの元へ駆け出す。
山口達が耐えてるこのヤケクソ連打は…
「行けッ!!歩夢!!」
コイツが抑えてくれるッ!!
二振りの剣があの連打を正確に、素早くいなす。
俺はその隙をついて剣に力を込め、
アイスショックを使う。
足が凍結し、ゴーレムの動きが
一瞬。
ほんの一瞬止まる。
だが、あの男は、
英雄に憧れ、黒の剣士を夢見たあの厨二病は、
その一瞬で十分だった。
両腕が動いたと思ったら、
ゴーレムの腕に2連撃スキルが放たれる。
発動から着弾まで実に0.05秒。
人間の反射速度を大きく超えた2連撃により
ゴーレムの右腕が吹き飛ぶ。
上位双剣術スキル 『双撃』
そしてその刹那、大和が後方に叫ぶ。
「やれッ!!颯人ォッ!!」
__________________________________________
貯めろ。
俺のスキル、『チャージ』なら
アイツのHPを削りきれる。
貯め続けろ。
相良が、大和が託してくれた。
貯めろ。
貯め続けて大体2分。
本来の筋力値の3倍ほどになった時、
大和がゴーレムの右腕を斬り飛ばし、
俺に向かってさけぶ。
「やれッ!!颯人ォッ!!」
来た!!
確実に砕く!!
今までのスキルじゃダメだ!!
槍投げじゃない、もっと強固なイメージッ!!
弾丸だ弾丸をイメージ!!
そう口に出し、力を込め、ゴーレムに槍を投げる。
「行っけぇぇえええええっ!!!!!」
最上位槍術スキル『投貫槍』
槍を投げた颯人の周りの地面が砕け、瓦礫が宙を舞う。
回転しながら飛んでいった槍は歩夢の横を通り抜け、
大和のすぐ横を通り抜け、
ゴーレムの胸部にある魔法陣ごと装甲を貫いた。
__________________________________________
歩夢視点
颯人のスキルによりゴーレムの活動は停止。
ラストアタックボーナスは颯人の元へ。
そのLAボーナスは、
「なんだこれ?宝石?」
ただの黒い宝石だった。
名前は『深淵の宝珠』
特殊効果も無い、売却も出来ないと来た。
俺達はもちろん、
颯人なんかめちゃくちゃ落ち込んでた。
まぁそんな物よりも、遂に1棟制覇だ。
2ヶ月もかかってしまったが、
文字通り次のステージだ。
このまま行けば1年もかからず帰れる。
帰還が現実的になって来た。
そういえば、ボス戦が終わってから
大和が自分の掌を見ている事が増えた。
理由を聞いても答えてくれない。
だがまぁそれ以外じゃ元気だし
そんな大した事じゃないだろう。
と思う事にして俺達は講堂へ向かうのだった。
新たなる1歩を歩み出す為に。
序章 初棟編 完
ご無沙汰しています。
霧ヶ峰藤五郎です。
遂に1棟終幕です。
10話で一区切りとしたらすごく綺麗ですね。
話としてはキレイに区切りが着いたと自分は思ってます。
さて、皆様の疑問をお答えしましょう。
何故4層では窓に寄りかかる事が出来たのかと。
1層から3層までは窓にロックがかかっていた窓ですが、
4層で窓が開くようになり、寄りかかる事が出来ました。
そこから逃げろよと思うかもしれませんが、
4階です。
それに天井も高くなっている中での4階です。
そうです。
死にます。
そういうことです。
他にもなにか分かりにくかったことや
疑問に思ったことはジャンジャン感想で聞いてください。
答えられる範囲で答えます。
それではまた2棟でお会いしましょう。




