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もう一つの〇〇  作者: マーたん


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56/65

「義を継ぐ者たち――朝比奈泰朝と梨鍋遜大」

続きをどうぞ



桶狭間の戦で今川義元が討たれ、駿河・遠江は混乱の只中にあった。

その中で、ただ一人、冷静に「今川の再建」を考えていた男がいた。

遠江国衆筆頭、朝比奈泰朝――義元の側近にして、最も現実的な武将である。


泰朝は戦乱の最中、駿府城にて生き残った家臣を集めた。


「義元様は討たれた。しかし、今川家そのものが滅びたわけではない。

この国を、我らが守らねば、義元様に顔向けできぬ」


彼の声に、家臣たちは震える心を抑え、頷いた。

だが泰朝は、戦だけではこの混乱を収められぬことも悟っていた。


その頃、駿府の外れに「梨鍋遜大」の名が再び響き始める。

かつて義元の浪人として戦場を駆けた男。

今は刀を置き、戦に疲れた者たち、民たちを守る義士として語られていた。


ある夜、泰朝は遜大に密かに呼びかけた。

二人は誰もいない駿府の竹林で対面する。


「遜大。お前の義、今川に返してくれぬか」

「……俺の義は、もはや剣で貫くものではない」

「ならば、言葉と行動で国を支えよ。

義元様の死で、この国の民は、道を失っている。

戦ではなく、義で支えられる国を、共に築こうではないか」


遜大はしばし沈黙した後、静かに答えた。


「……義は、戦だけでなく、人の心に在る。

ならば、俺は民の中で、その“義”を守ろう」


泰朝はわずかに微笑んだ。


「それでよい。俺は城を守り、国を守る。

お前は民を守れ。

どちらも、義元様の残した“夢”を護る道だ」


二人は互いに背を向け、そのまま言葉を交わさずに去った。


泰朝は城で、遜大は野で。

それぞれの「義」を貫き続けた。


——やがて、武田の侵攻が始まる。

泰朝は最後まで今川家を守り抜き、

遜大は民を逃がし、救い続けたという。


戦国の混乱の中、

義元の「理想」を継いだのは、名もなき武将たちと、一人の浪人だった。




また次回も楽しみに

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