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もう一つの〇〇  作者: マーたん


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40/65

「焔に誓う」― 信長と濃姫 ―

前回の続き

夜の山城。遠くで火の粉が舞い、戦の気配が迫っていた。


戦乱の中、信長の陣に現れたのは、敵方・美濃の国から送り込まれた密使だった。

その名は――濃姫のうひめ


薄紅の衣に身を包み、瞳は氷のように冷たい。

だがその奥には、火山の奥底でくすぶるような熱を秘めていた。


初めて対面した夜、信長は彼女の手首を掴み、問いかけた。


「お前の焔は、誰のために燃えている」


濃姫は笑った。


「今はまだ、誰のものでもない。けれど――」

彼女は、自分の胸元に指を当てる。そこには、淡く赤い紋様が浮かんでいた。焔巫女の証。


「この焔が、いつか“誰か一人の心”に寄り添えるなら。私はそれでいい」


その夜、焔を介して二人は結ばれた。


互いに孤独だった。

互いに、焔に選ばれ、焔に試される運命を知っていた。


信長は戦場で、濃姫は陰の術で、互いを支えた。

表向きは政略結婚――だが、誰よりも深く理解しあえるのは、彼女だけだった。


やがて都が炎に呑まれた夜。

焔の断罪の儀が始まったとき、濃姫はただ一人、信長に「焔を封じてはならない」と訴えた。


「この焔は、滅びだけじゃない。まだ希望がある。あの少年――明煉のような者も、生まれてくる」


だが信長は、その訴えを振り切った。


「……遅いんだ、濃姫。もう、焔がこれ以上誰かを奪うのを、俺は見たくない」


彼女は、悲しそうに微笑んだ。


「ならせめて、私の焔だけは――あなたの中に残して」


焔の断罪。その儀の直前、

濃姫は自らの焔を信長に託し、命と共に炎に散った。


それ以来、信長の剣には、彼女の焔が宿っている。

紅く、しかし決して熱くはない。その炎は、ただ静かに、哀しく燃えていた。



現在:灰の都、封印の間にて


焔の神核の前。

明煉の剣の焔が一瞬、他の光と共鳴したように揺れた。


その光は――信長の背から放たれる、かすかな焔。


彼はそれに気づき、そっと目を閉じる。


「……あの日、お前が託した“焔”は、今も俺の中で燃えている」


そして、まるで応えるかのように、風が吹いた。


焔巫女の声が、明煉にも聞こえた気がした。


『あなたが選ぶなら……信じるわ。信長――私の焔は、あなたと共に』


信長の目に、一瞬、涙が宿った。


「濃姫……」


だがその顔に、もう迷いはなかった。



焔の道を進む明煉たちにとって、信長と濃姫の愛と別れは、

「焔とは何か」「なぜ戦うのか」――その問いへのもう一つの答えとなっていく。


(続く)


次回も楽しみに

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