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もう一つの〇〇  作者: マーたん


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『焔の審判 ―灰に宿る灯―』'

前回の続き

次章「封印の階 ―導かれし者たち―」 【後編】


「……“かつて巫女たちを討った者の末裔”だと?」


明煉は、焔の剣を握ったまま、黒衣の男を見据えた。


その男の顔は灰に覆われ、表情は読み取れない。だが、ただならぬ存在感があった。背後に揺らめく異形の炎――それは怒りと怨念を凝縮した、焔の獣たち。


「お前は誰だ」

遜大が剣を構え、一歩前へ出た。男は笑うでも怒るでもなく、ただ静かに告げた。


「名は、もうない。私は“焔の守り手”。かつて巫女たちが火の神に捧げし儀式――その結末を見届け、今も守り続ける存在だ」


柊が目を細めた。


「つまり……この“本源の焔”を封じた者か」


男は頷く。


「これは神の焔。この世を導く力であると同時に、すべてを滅ぼす災厄にもなる。だからこそ封印された……“誰にも扱えぬもの”としてな」


燈火が前に出た。


「でも、明煉は違う。あの灰炎兵たちに灯を与えた。滅ぼすのではなく、“癒やした”んだ。そんな者が、本源の焔に選ばれないはずがない!」


黒衣の男はわずかに首を振った。


「焔に選ばれるのは、“力を超えてなお己を律する者”のみ。……だが、それを決めるのは、言葉ではない。お前の魂と、この焔の意志だ」


男が腕を広げた瞬間、背後の焔獣たちが吠え、火柱が天に昇った。


「来い、明煉。お前の焔を、この灰の都の試練に晒してみよ」


聖堂の床が振動し、地を割って巨大な焔の円陣が現れる。焔獣たちは姿を変え、牙と鉤爪を持った異形の戦士となって、明煉を取り囲んだ。


遜大が動こうとした瞬間、柊が手を出して止めた。


「違う。これは……“焔の継承儀式”。他の者が介入してはならない」


「だが……!」


「信じろ。明煉の焔を」



焔の円陣の中、明煉は一人だった。


焔獣たちが咆哮とともに襲いかかる。明煉は一歩も退かず、剣を振るう。


一閃。焔がしなる。

だが獣たちは傷を負いながらも立ち上がる。倒すたびに再び形を成し、繰り返し襲い来る。


(これは……焔そのものとの戦い)


明煉の胸に、過去の記憶が去来する。


焦燥、怒り、守れなかった悔恨。

焔に心を呑まれそうになった瞬間――誰かの手が彼を引き戻してくれた。


燈火。遜大。柊。

そして――幼いころ、彼に初めて焔を教えてくれた、名も知らぬ巫女の面影。


(俺は……)


焔の剣がふっと輝いた。


(俺は、守るためにこの焔を持った)


燃え盛る焔獣たちの中で、明煉の剣から放たれた炎が静かに広がる。


獣たちの動きが止まる。怒りが、苦悶が、ひとつずつ、消えていく。


焔は彼に問いかけていたのだ。


――お前は何のために、この力を求めるのか。


答えは、明瞭だった。


「俺の焔は――生きるためのものだ!」


最後の一撃。焔を収束させた剣が、聖堂の中心に閃光を刻む。


すべての炎が消えたとき、焔の守り手は黙して明煉を見つめていた。


「……見事だ。“焔を癒やす者”よ。お前こそが、次なる継承者だ」


そして、守り手の体が、灰の風に包まれて溶けていく。


「願わくば、次は……焔が争いではなく、救いとなりますように……」


残されたのは、聖堂の中央に浮かぶ“本源の焔”。


それが、ゆっくりと明煉の剣へと吸い込まれていく。

剣が光を放ち、形を変えた。


“焔の剣・れい”。

それは、破壊と癒やし、両方の力を宿す“意思ある焔”の結晶だった。


遜大が近づき、静かに言った。


「……やはり、お前だったか。“焔の導き手”は」


明煉は答えず、剣を見つめたまま小さく呟いた。


「まだ……終わりじゃない。この焔が導く先を、俺は見届ける」


そして彼らは、さらに深き焔の道へと足を踏み入れていった。


――その先にある、世界の“真なる火種”を求めて。


(続く)


次回も楽しみに

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