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もう一つの〇〇  作者: マーたん


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焔(ほのお)の行方

続きをどうぞ

明け方の風が山を撫で、東の空にうっすらと朱が差し始めた。


遜大と明煉は、まだ言葉を交わさずに並んで歩いていた。互いの足音だけが、朝露に濡れた土を踏みしめる。


沈黙は重くはなかった。

むしろ、それは父子が初めて“同じ歩幅”で歩いていることを証明するような、静かな調和だった。


「母上は……もう、この村にはいない」


明煉がぽつりと口を開いた。

その声には、悲しみよりも、決意の色が濃かった。


遜大は小さく頷いた。


「沙羅は、お前の進む道を信じていた。それが分かったからこそ……俺も、お前を止めない」


「ならば、問わせてほしい」


明煉が足を止め、遜大を見つめた。

朝日に照らされたその瞳は、焔のように燃えていた。


「俺がこれから向かう“焔の道”に、父上は剣を貸すか?」


遜大は、その言葉に一瞬だけ目を細めた。


「……焔の道、か」


あの夜、篝火という名を遺し、“明煉”として立ったあの子が選んだ新たな戦いの道。

それが何を燃やし、何を照らすのか――遜大には、まだ分からなかった。だが、彼はこう答えた。


「剣は貸さぬ。だが、共に歩くことはできる」


明煉は、それを聞いて少しだけ笑った。


「それでいい」


そして二人は再び歩き出した。


村の入り口には、すでに燈火と柊が待っていた。

燈火は腕を組み、いつものようにふてぶてしい表情で言った。


「遅いわよ、父子そろって」


柊は小さく笑みを浮かべていたが、その手には地図が握られていた。


「次の目的地は、南の峠を越えた“焔の谷”です。そこに……明煉様の手がかりが残されている」


「俺の?」


明煉が眉をひそめる。柊は頷いた。


「“火を操る者”の痕跡があったと、古い記録にある。あなたの力の根源に近づくためには、その地を訪ねるべきだと」


風がまた、静かに吹いた。


遜大は前を見据えたまま、背中の刀を軽く叩いた。


「行くぞ。“焔の道”の先で、お前が何を燃やすのか――俺もこの目で見届ける」


明煉は頷き、燈火と柊と共に、四人は再び歩き出した。


山の彼方に、朝日が昇りはじめていた。

それはまるで、長い夜の果てに現れた、新たな戦いの火種のようだった。


(続く)


次回も楽しみに

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