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もう一つの〇〇  作者: マーたん


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27/65

『身内の裏切り』——

続きをどうぞ

峠を越えた先に広がる盆地の村――そこは、今川残党の根を絶つため、遜大たちが目指していた中継地だった。


だが、辿り着いた村はすでに廃墟と化していた。


「……遅かったか」


篝火が膝をつき、焼け落ちた民家の瓦礫を手に取る。そこには剣で斬られたような痕が無数に残っていた。


「これは、“知ってる手”だな」


燈火が呟く。その目が細くなる。


「……今川式の斬り込み部隊。それも、“内側”からの手引きがなければ、ここまで綺麗には焼けない」


遜大が無言のまま歩き出し、村の奥にある小さな祠へと足を運ぶ。


そこには、かつての仲間――今川家を離反し、密かに情報を流していた者との連絡地点があったはずだった。


祠の扉を開けた瞬間、血の臭いが風に乗って吹き抜ける。


中に倒れていたのは、彼の旧友にして、今川家の元忍び頭――鎌谷志斎かまたに・しさい


胸に短刀が突き立てられ、顔には「裏切り者」と血文字が走っていた。


「……志斎……」


遜大が膝をつき、そっとそのまぶたを閉じたときだった。


「悪いが、そいつは“おとり”だ」


低く、耳に馴染んだ声――それは、篝火のものだった。


「……篝火?」


遜大が振り返ると、篝火の眼差しが冷たく変わっていた。


「ずっと見ていた。あんたがどう動くか、誰に心を許すか……今川の“設計図”がどこに渡るか」


「何を……言ってる?」


燈火が剣に手をかける。だがそれより早く、柊が一歩、遜大の前に出る。


「……まさか、あなたが……」


篝火は苦笑した。


「悪いな、父さん。“裏切った”つもりはなかった。でも、俺は母の遺志を継いだまでだ」


「母の……?」


「母は、あんたを信じてた。けど同時に、恐れてもいた。“ぽんた”の中にあるもの――戦を呼び寄せる、炎の本質を」


柊が小さく息を呑む。


「母は俺に言った。“ぽんたに近づくな”と。“もし近づくなら、あの男の心臓を貫け”と」


その言葉に、遜大の表情が揺れる。


「……お前は、それを……」


「ずっと迷ってた。でもな――この前の城で、楓が死んだとき、分かったんだ。あんたの周りには“破滅”しかない」


静寂。


篝火は剣を抜いた。その構えは、かつて遜大が教えたものと寸分違わなかった。


「俺は……お前を止めるために、生まれてきたんだよ、父さん」


風が、焼け跡の村に吹く。


燈火と柊が即座に動こうとしたその瞬間、遜大が手を挙げて制した。


「いい。……これは、俺の“業”だ」


二人の剣士が向かい合う。


かつては血を分けたと信じた者。

今は、互いの正義をかけて剣を交える者。


そして、第一の刃が、閃いた――


(続く)


次回も楽しみに

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