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もう一つの〇〇  作者: マーたん


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22/65

:『火中の誓い』——

続きをどうぞ!!!

――火が舞っていた。


夜の谷に降り注ぐ火矢が、空を紅に染める中で、遜大と和泉は互いに一歩ずつ歩み寄った。


「ここで終わらせる気か、和泉……」


遜大の声には、怒りでも、懐かしさでもない。わずかな諦めと、深い決意が混じっていた。


「私の忠義は、今川とともにある。けれど――」


和泉の目が揺れた。


「あなたの背を追い、命をかけたあの日々を、偽りだと思ったことはない」


炎の粉塵が、風に乗って舞う。


「ならば、なぜ剣を取る……!」


遜大が問う。叫ぶ。


和泉は、一瞬だけ瞳を伏せ、静かに答えた。


「けじめよ。愛した者として。あなたの罪を、私の手で断つ。それが、せめてもの報い」


そして、抜き放たれた和泉の刃が、遜大に向かって奔った。


その一撃は鋭く、まっすぐで、迷いのない太刀筋だった。


だが――


「……っ!」


間に割って入ったのは、篝火だった。


「やめろ、姉上!!」


鋼と鋼がぶつかる音が、火の粉を弾く。


「……どけ、篝火!」


「できない!」


篝火の声が、燃え盛る炎を割って響いた。


「父は罪を犯した。だが、向き合っている! 過去と、俺たちと、そして……お前とも!」


「……!」


和泉の刃が震える。


「俺は……家でも、忠義でもなく、この人と歩く! それが、俺の“誓い”だ!!」


その叫びに、楓と燈火も動いた。


「和泉……」


燈火の瞳に、かすかな涙が浮かぶ。


「私も、あの夜を憶えている。あなたが、ずっと遜大を想っていたことも、何も言わず消えたことも」


「それでも、あの時のあなたは、私たちを“裏切らなかった”」


和泉の手が、わずかに下がる。


「もう、敵として会うべきじゃなかった。私たちは……家族だったはずだ」


燃える谷に、沈黙が落ちた。


しばらくして――


和泉は剣を鞘に収めた。


「……愚かね。あなたたち、皆」


そして、ひとつ深く息を吐きながら、遜大の前に立った。


「……ぽんた。まだ、償う道を歩む気があるなら」


「ある」


遜大は即座に答えた。


「俺は、もう逃げない。お前の前からも、過去の血からも」


その言葉を聞いて、和泉はゆっくりと顔を上げた。


「……ならば、私も共に行こう。せめてこの炎の先に、何があるのかを見届ける」


「……和泉!」


篝火が、安堵とともにその名を呼んだ。


そして――谷の火が鎮まり始めると同時に、一行は新たな誓いのもと、再び旅立つことになる。


彼らの行く先には、今川家の残党、織田の追手、そしてさらなる“血の真実”が待ち構えていた。


だがもう、誰も一人ではなかった。


過去に焼かれながらも、確かに結ばれた絆が、彼らを繋いでいた。


(続く)


次回も楽しみにね

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