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もう一つの〇〇  作者: マーたん


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14/65

影の追走

続きから

遜大と楓が信長の城を脱出してから、すでに三日が過ぎていた。


逃亡の末、二人は美濃と伊賀の境にある山中に身を潜めていた。夜には焚き火も焚かず、水と乾いた飯だけで凌ぐ生活。だが、それでも二人は寄り添い、わずかばかりの安らぎを求めていた。


「ぽんた……あなた、まだ傷が開いてる」


楓は布を湿らせて遜大の肩の深手を拭っていた。その手つきは震えていたが、懸命だった。


「心配するな。こんなもの……昔、野武士に腹を刺された時に比べれば……」


遜大は強がって笑うが、血は止まっておらず、痛みに顔を歪めた。


「ふふ……そう言う時ほど、男の人はすぐ死ぬのよ」


「じゃあ、死なないように、そばにいてくれよ。お前の手が一番、あったかい」


楓はしばらく黙った後、小さく頷いた。


——だが、平穏な時間は長くは続かなかった。


その夜、二人が隠れていた小屋の周囲に、草を踏みしめる音が広がった。


「追手……!」


遜大はすぐに楓を抱き寄せ、奥の隠し扉を開けた。


「ここから山道を抜けて北へ行け。俺は時間を稼ぐ」


「だめ、ぽんた……!一緒に行くって……!」


「俺がいなくても、お前は生きてくれ」


楓は涙を流しながら、それでも最後まで彼の手を離さなかった。


——その時。


「おい、まだ早いぞ」


草むらの影から、女の声がした。


現れたのは、くのいち・燈火ともしび


遜大の幼馴染であり、伊賀から送り込まれた密偵だった。


「お前……!」


「まったく、相変わらず女難な奴ね。あんたらの逃げ道、作っといた。ついてきな」


燈火の登場で、遜大と楓は再び道を得た。


だが——燈火の目には、どこか言い知れぬ寂しさが宿っていた。


「今だけだからね……私、昔あんたのこと……」


彼女の言葉は途中で切れた。


遜大はただ、一度だけ小さく頷いた。


「ありがとう。命、借りる」


三人は夜の山道を駆け抜け、さらに遠く、信長の手の届かない地へ向かっていった——。


——だが。


信長もまた、密かに動いていた。


「ぽんた……ふん、逃げたつもりか。俺の女を奪っておいて、ただで済むと思うなよ」


信長は新たな密偵を放った。


しかも——それは遜大がかつて情を交わした、もう一人の女だった。


(続く)


次回も楽しみ

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