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第五十三話 身体強化魔法を使ってみる

 俺は体を回復させつつ、アイドナに聞いた。


 俺の体はどうなった?


《体組織変換は成功です。遺伝子レベルで変化しています》


 どう変化した?


《こちらの世界の人間同様、魔力が流れる構造となりました。更には魔法の杖である、ブラディガイアの構造を解析しその機能を付加してあります》


 なに? ブラディガイアって、木…だぞ…。


《魔力吸収が必要だと思われました。魔力を作り出す構造までの再現は出来ませんでしたので》


 流石にそこまでは無理だったか。それよりも、俺に木の遺伝子情報があるのか!?


《そうなります。ブラッディガイアと同じように、魔獣や魔力のある人間を討伐すれば魔力が補給されます。それにより作り出す事の出来ない魔力を、体内に入れる事が出来ます。問題ありません》


 も、問題があるか無いかは俺が決める。


《はい》


「コハク。一日で随分回復したみたいね」


「ああヴェルティカ。食べれば戻る」


「凄いわ」


「すぐにでも魔獣狩りに行きたいんだが」


「え? 休んだ方が…」


「そうは言っていられないはずだ」


 すると魔導書のマージが言う。


「コハクの言う通りさね。今日を含めて四日も放っておいたんだ、また魔獣が増えているだろうからね」


「準備だ」


 そして俺達は準備を整え、直ぐに魔獣を狩りに出る。前回の狩で最後の建物は空振りだったが、マージは、もしかしたら住み着いたかもしれないと言っていた。そこで俺達はいつもの通りに、麻痺する薬をしみこませた薪を焚き、煙が収まったところで地下に入っていく。


「いた!」


 病み上がりの俺を心配した、メルナが先に魔獣を見つける。俺の目には光のラインで映し出された、狼の群れが映し出される。だがそいつらは麻痺の薬が効いているようで、動きが鈍く飛びかかっては来れないようだ。


「気を付けて!」


「問題ない」


 俺はブラッディガイアの杖を使わずに、剣で灰狼を殺してみた。


 ズッズズズ。と何かが俺の手から手首、肘と肩に向かって登って来た。それが体にしみこむように消えた。


 魔力が入ったのか?


《体内に魔粒子の流れを確認しました》


 わかった。


 俺が次々に灰狼を切り裂いていくと、どんどん魔力が体に入って来る。


 限界はないのか?


《現状容量に制限をかけておりません。それに魔力を吸い込んで分かりましたが、質量などは一切ございません。物質では無く、何か別な物のようです》


 吸い込み続けて大丈夫なのか?


《ストレージの管理は行います》


 わかった。


 それから俺は一気に灰狼を斬り捨てた。特に体に変化は起きていないが、それは俺が魔力の使い方を知らないからだろう。その建物を終えて、地上に出るとヴェルティカとメルナが声をかけて来る。


「お疲れ様!」

「ちゃんと麻痺してたね」


「ああ。良かった」


 外に出ると夕日がさしている。俺が活動できるまで待ったので、今日はここまでのようだ。


「ばあや。もう夕方だわ」


「帰るとするかね」


 俺達が辺境伯邸に帰ると、ビルスタークとアランが前と同じように訓練をしていた。なんとアランは片足でぴょこぴょことジャンプしながら、ビルスタークの相手をしている。ビルスタークも目が見えないと言うのに、的確にアランの木剣を受け止めていた。


「帰られましたか!」


「ええ。二人ももうそんなに動けるようになって」


「コハクばかりに負担はかけられません」


 だがマージが言う。


「そんな体で魔獣狩りになんかつれてけないさね」


「いえいえ。ゴブリンや灰狼程度であれば、目が見えないくらいハンデにもなりませんよ」


 そしてアランも言う。


「わたしも杖さえあれば動けます」


 しかし危険なことに変わりはないだろう。


 それならば。


「ビルスターク、アラン」


「なんだ?」

「ん?」


「俺に身体強化を教えてくれ」


「はあ? 何を言ってるんだ? お前に魔力は無いだろう」


「やり方だけで良い」


「うーん…これは難しいな。魔力のない奴に身体強化を教えるって言うのはな」


 すると魔導書のマージが言った。


「面白いじゃないか。教えてやんな」


「わかりました」


 そしてビルスタークが俺に手を伸ばし位置を探す。


「俺はここだ」


 そして俺の肩に手をかけた。


「よし。それじゃあ意識をする事から始めようか」


「わかった」


「お前の体内に、自分の力が巡っているのを想像しろ」


 …全く分からん。


「どういうことだ」


「わからんか…、なら…」


 とビルスタークが考え込んだ時、アイドナが俺に言う。


《この方法では無理かと。それよりも身体強化を使っているところを見せてもらってください》


 わかった。


「すまん。ビルスターク、アラン。俺は身体強化をしている人を見たことがない、一度見せてもらいたいんだが」


「わかった。まあ、見て分かるんなら苦労はしないがな」


 そしてビルスタークは俺の肩から手を放し、エントランスの中央へ行く。


「アラン。木剣をくれ」


 すると壁にもたれかかっているアランが、剣をビルスタークに投げた。


パシィ! 


 受け取ったビルスタークが、正眼の構えをとる。


「行くぞ。よく見てろ」


「ああ」


 俺が見ていると、ビルスタークがサーモグラフィのような見た目になる。ビルスタークの集中力が上がり、ピリピリした感覚がこちらにも伝わって来た。


《魔粒子を巡らせていますね。魔力はメルナより少ないですが、その少ない魔力を効率よく体内に巡らせています》


 なるほど。


《変化しました。足に集中し始めてます》


 次の瞬間だった。ボッ! という音と共に、ビルスタークが別の場所に現れた。


「こんな感じだ。何かつかめたか?」


「魔力を巡らせ、足に集中して瞬発力を上げた」


「なに? 見えたのか?」


「なんとなくな」


「まあ見えたからと言っても、魔力が備わってなければなあ」


 だがその時アイドナが言った。


《原理は分かりました。実践してみますか?》


 ああ。


「これであってるかどうか見てくれるか?」


「ん? まさか、やってみるのか?」


「そうだ」


 とはいえ、俺は何が何だかわからない。とりあえずアイドナに任せる。


《では魔粒子を循環させます》


 アイドナが言う。すると明らかに体温の上昇を感じた。体感としては三十八度近くまで上昇しているように思える。だが身体の不調は感じずに、エネルギーが溢れるのを感じる。


 するとアランが驚いた。


「まさか魔力がある?」


《足に集中させます》


 力が下に下がるのを感じた。


《移動してください》


 ビュン! ドカ!


 一瞬にして移動し、壁にぶつかってしまった。怪我はしなかったが、俺は床に転げてしまう。


「大丈夫か!」


 アランが叫んだ。ヴェルティカとメルナが来て俺を起こす。


 そしてビルスタークが聞いた。


「ど、どうなったんだ?」


「団長…コハクが身体強化を使いました…」


「嘘だろ…」


 皆が目を丸くしており、魔導書のマージが言う。


「まさか…魔力を保有してるってことかね」


 ヴェルティカが答える。


「そのようです」


 突然の事に皆が驚くなかで、俺はビルスタークに言う。


「攻撃には使えないのか?」


「当然使える。それを、やって見せればいいんだな!」


「頼む」


 そしてビルスタークは再び木剣をかまえるのだった。

次話:第五十四話 魔獣の一斉排除開始

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