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第四十九話 安全に魔獣を狩る方法

 ビルスタークとアランから聞いた魔獣討伐の注意事項をインプットし、さらにマージが考えた方式で安全に魔獣を狩る事になった。俺とメルナとヴェルティカが屋敷の外に出て、マージが言う地下のある建物へと向かう。


「まずは教会さね」


 マージが言うには、魔獣はおそらく教会の下に潜んでいる可能性が高いという。


「みんな死んじゃった…」


 メルナがポツリと言った。既に路地の死体は骨だけになったりバラバラになったりしており、原形をとどめているものはない。だが俺もヴェルティカもそれには何も答えなかった。


 気まずいと思ったのか、メルナが俺に聞いて来る。


「重くない?」


「問題ない」


 俺は縄でまとめた薪を背中に背負っていた。薪にはマージに言われた通りに油と、マージの館で燃え残った、瓶入りのなにかを削らされたものが塗りたくられている。メルナは魔導書のマージを持ち、ヴェルティカは魔法の杖を持ってついて来る。ヴェルティカもいろいろ準備した背負子を背負っていた。


 ヴェルティカが言う。


「うまくいくかな?」


「まあやってみると分かるさ」


 教会についてみると、あちこち破損しており入り口の扉も半壊していた。だがここまで魔獣に遭遇する事も無く、順調にたどり着いた。


「夜のうちにたらふく人間を食ったろうからね。今ごろはぐっすりだろうさ。だが奴らは敏感だ。気づかれる前にやらないといけない」


「わかった」


 俺達は慎重に教会の玄関をくぐり、地下へ続く階段へと向かう。


「ここから地下に降りるみたいだな」


「それじゃあコハク、その背負った薪を階段の下に丸ごと置いて来ておくれ」


「わかった」


 俺は一人そっと階段を降りて地下へと向かっていく。地下通路に光はささず、本来はランプを照らすか壁の蝋燭に火を灯すのだろう。


《暗視モードに移行》


 通路の輪郭などが光の線で映し出されるが、魔獣の類は映っていない。


 魔獣はいるか?


《恐らく奥でしょう》


 俺はそこに静かに背負子の薪を降ろし、そっと階段を上がっていく。戻って来た俺にヴェルティカが聞いて来た。


「魔獣はいそうだった?」


「分からなかった」


「そう…」


 すると魔導書マージが言う。


「いるよ。こんな隠れやすいところはないからね。もしここじゃなきゃ他の教会に行って見る。もしくは奴隷商なんかにも潜んでいるかもね」


「わかった」


「書いたスクロールをだしな」


 ヴェルティカが背負子からスクロールを出す。マージに指示されるままに俺が書いたものだ。


「出したわ」


「それで石ころを包むんだ」


「取って来る」


 そしてメルナが取って来た石ころをスクロールで包んだ。俺がそれを手のひらに乗せていると、マージが言う。


「持ってると火傷するよ」


 見えていないのに分かるらしい。


「わかった」


 それを階段の縁に置いた。


「じゃあメルナ、簡単な詠唱だよ」


「うん」


「燃え盛れ炎」


「燃え盛れ! 炎!」


 ボウッ! と石をくるんだスクロールが火を放った。


「コハク。蹴飛ばしな」


「ああ」


 ゴン! と蹴飛ばすと、火の玉になって階段の下に飛んでいく。


「さて、布切れで階段を塞ぐよ」


「わかった」

「はい」

「うん」


 背負子から毛布を出すと、マージが言う。


「ぴったりとね」


「ああ」


 そうして俺達は毛布を広げて階段を塞ぐようにした。するとほんのりと下から、煙の臭いが漂って来る。


「じゃあ教会をでるよ」


 俺達はマージに言われるままに教会の玄関を出た。


「コハクは剣を抜いて盾をかまえるんだ」


「ああ」


「ヴェルティカとメルナは玄関から離れるよ」


「ええ」

「うん」


 それからしばらく何も起きずに居たが、次第に教会の窓や入り口から煙が立ち上って来た。


「あとは煙が収まるまで待つんだ」


 マージに言われるままに、俺達はそこでじっと待っていた。一時間は何もなく、ただそこで待っていると少しずつ煙が収まって来る。


「煙が収まって来た」


「まだ早い。もう少し待ちな」


 そしてそれから三十分ぐらいすると、完全に煙が止まる。


「もう煙は出て来てない」


「よし! 三人とも用意した布で口と鼻を覆うんだ」


 背負子から用意された布を出して、俺達はそれを顔の下半分にまく。


「毛布を外そうか」


 俺達は言われるままに地下に入る階段にかぶせた毛布をはいだ。すると焦げた臭いだけではなく、独特の鼻を突くような匂いがする。


「その顔の布を外すんじゃないよ。それには特殊な油をしみこませているんだからね」


 多分これを外せば、相当な臭いがするだろうと想像がついた。


「降りるのか?」


「あとはビルスタークに言われたとおりだ。コハクが先に、ヴェルティカとメルナは数メートル後ろを歩きな」


 そうして俺達は地下に向かう階段を降りていく。ヴェルティカの背負子に入れていたカンテラを出して明かりをともすと、薄っすらと地下通路が照らし出される。もちろん俺は暗視モードになっているので、灯りのおかげで昼間よりはっきり見えた。


「進みな」


 俺はマージに言われるままに奥に進む。通路の先には数部屋ほどの扉があるようだ。だがその扉は全て開いており、俺は一番最初の部屋を覗く。


「何もいない」


「じゃあ次だ」


 そして次の部屋ものぞくが何もいなかった。


「何もいないぞ」


「やっぱり奥だね、気を引き締めていくんだよ」


「わかった」


 俺は剣と盾を構えて、一番奥の部屋を覗く。


「いた…」


 その部屋の隅々にうずくまるようにして、ゴブリンが十二匹ほどいた。だが俺達が来たと言うのに身動きをしていない。


「動かないのか?」


「麻痺してるんだ。あんたらが来た事が分かっても動けないのさ。さあコハク、剣と盾をしまってブラッディガイアウッドの杖で全部殴り殺すんだよ。魔力を貯めこむんだ」


「わかった」


 俺は腰に剣を戻し盾を腰の後ろにぶら下げる。そしてヴェルティカから魔法の杖を受け取り、ゴブリンに近づいて行く。


 怯えるような感じは伝わってくるが、身動きが出来ないようでこちらを見る事もない。俺は思いっきり振りかぶって、ブラッディガイアの杖をゴブリンの頭めがけて叩き落すのだった。

次話:第五十話 動く地下室の魔獣

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