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第四十五話 魔獣の居る都市での二日目

 俺はアイドナに指示されるままに、二種類の料理を作る。固形の野菜が浮かぶスープと、野菜をこしてドロドロにしたものだ。俺達はそれをエントランスに持って言って、先にビルスタークとアランの口にどろどろを流し込む。アランは普通に飲み込み、ビルスタークも意識がもうろうとしながらも飲んだ。


 そして俺達も食事をとり、それからまた休むことにした。午後になり、メルナとヴェルティカが起きたので、ようやく俺は仕事の続きに取りかかる。


「メルナ。いいかい?」


「うん」


「夜になる前にどうしてもやっておくことがあるんだ」


「わかった」


 そうしてその場をヴェルティカに任せ、俺は魔導書と魔法の杖を持ってメルナと共に魔法陣を書いた壁のところに向かう。


「壊れてる…」


「ああ。だがこれで何とか出来るらしい」


 すると魔導書のマージが言う。


「杖の先を魔法陣の側にさしな」


「ああ」


 ズボっと先をさし込んだ。するとマージがメルナに向かって言う。


「今はあんたの魔力が貴重だからね。出し過ぎないようにこれに注ぎなさい。では言葉をおしえるよ」


「うん」


「大地よ、その力を持って壁を築きあげよ!」


「大地よ、その力を持って壁を築きあげよ!」


 メルナが杖に手をかざして、マージに言われたとおりに言った次の瞬間だった。


 ボン! と音がしたと思ったら、次第に地面が盛り上がって来た。


 ゴゴゴゴゴゴゴ! 


「塞がった」


 なんと地面が盛り上がってきて、崩落した壁を塞いでしまったのだった。


「さあ。次の場所に行くよ」


「あ、ああ。行こうメルナ」


「うん」


 それと同じようにもう一カ所と、門も岩で塞ぐ。


「ふう」


「メルナ疲れたか」


「ちょっとだるい」


 するとマージが言う。


「魔力切れじゃな。増幅した杖からもきっと魔力が抜けたのじゃろ」


「そうか」


《マージの言うとおりです。魔粒子の流れが無くなり、今はただの杖と化しています》


 魔獣の血を吸わせないとダメって事か。


《マージの言う事が真実ならそうでしょう》


 なるほどな。


 そしてマージ魔導書が言う。


「これで小型の魔獣は入って来れんじゃろ。あの時の夜のような、デカい怪物が大勢やって来たらひとたまりもないがの」


「来る可能性はあるのか?」


「あれは、人の魂を欲しておった。このような人の居ない廃墟にはもう用は無い」


「ん? という事は他の町や村に出る可能性があるのか?」


「そうじゃな。じゃがしばらくは出てこんじゃろ、それだけにこの都市は大きいからのう。人間もたらふく食ったろうて」


「いったん満足したという事か?」


「そんなところじゃの」


 なんということだ。人の居る都市に行けば、またあれに接触するかもしれないという事だ。


「目的は?」


「わからん。じゃがアークデーモンは契約をせんと、地上に受肉して現れる事ができん」


「誰かが契約して出現させたという事か?」


「そういうことになるねえ」


「誰なんだ?」


「わかったら苦労はせんよ」


「そうか」


 それで話は終わった。次第に太陽が傾いて来て、あたりがオレンジ色に染まっていく。


「そろそろ夜支度をした方が良いねえ。屋敷に戻って、もっと安全な場所にアランとビルを移動させようじゃないか」


「どこに?」


「まずは地下でいいじゃろ」


「わかった」


 そうして俺達は屋敷に戻り、俺がビルスタークとアランを一人ずつ地下へとおぶっていった。俺が食堂から食料をバスケットにいれ、地下に行こうとすると、マージが言う。


「まて。ペンとインクを持っておくれ」


「わかった」


 そして俺が、ペンとインクを持って地下室に向かうドアを開けると、マージが言う。


「メルナを呼んで来ておくれ」


「ああ」

 

 そして俺はメルナを連れてきた。すると魔導書が勝手にパラパラと開く。


「この魔法陣をドアに書いておくれ」


「わかった」


《ガイドします》


 俺はアイドナがガイドする線をなぞり、魔法陣を書いて行く。


「書いたぞ」


「はやいね。手慣れた魔法使いでももう少し時間がかかるよ」


「でも、書けた」


「まあいい。じゃあメルナこの魔法陣に手をかざして」


「うん!」


「あたしと同じことを言うんだよ」


「わかった」


「聖なる結界よ、魔の波動を持つ者一切をここから立ち入らせるな」


「聖なる結界よ、魔の波動を持つ者一切をここから立ち入らせるな」


 するとドアが輝いて、次第に明かりが落ちていく。


「じゃあ今日はここから出ないように」


「「わかった」」


 俺達は、辺境伯邸に戻ってから二日目の夜を向かえるのだった。

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