第三百六話 円盤の真の意味
金の円盤を宇宙船に持ってきた俺達は、まずこの円盤をどうすればいいのかを探す事にした。とにかく情報が必要なので、メルナとマージも連れて来ている。そこですぐに指令室に行き、アイドナがパネルに触れてシステムにリンクする。膨大な量の情報が流れていくが、アイドナが関係性の深いものをチョイスしていった。
《これです》
情報が浮かぶ。
鍵? これが何らかの鍵になってるのか?
《そのようです。そして、かなり未知数のエネルギーです》
未知数のエネルギー……。
アイドナが俺の指先を勝手に操作して、次々に情報を呼び起こしていく。
「何か分かったかい?」
「いや。マージ、まだだ。ただ分かったのは、この超越者の円盤とやらは何らかの鍵になっている」
「鍵……ねえ。何のだろうねえ」
「調べてみるさ」
データを調べていくと、だんだんと明らかになって来た。
《これは、侵略者に対しての……防御……シールド》
盾か?
《その可能性が高いですね。ですが、かなり不完全》
もっとわからないか。
《金の円盤に入っている情報を、読み取らなくてはなりません》
どうすればいい?
《巨大システムの起動です》
古代遺跡か。
《そうです》
ここでは読み取りができない?
《現状は》
そうか。
そして俺は、それを皆に伝える。
「なるほどねえ。という事は、あの敵の代わりを結局あたしらが、やらなきゃならないって事かい」
「そう言う事になる。この、情報が全て本物であればだが」
「まさか、予言書が滅びた文明からの物だったなんて、あたしが生涯かけて追いかけて来たものが」
「備えねばならない」
「そうだねえ」
《恐らく侵略者とは、敵のAIが推測したものです。こちらの演算でも、その確率は低くないです》
素粒子AIでもか。
《不確定な数字ですが、九十パーセント以上の確立です》
かなりの高確率だな。
《対策を進める事をおすすめします》
どうするか。
《あの、改造エルフが鍵と言っていました》
起こすか。
《はい》
「マージ。改造エルフを起こす必要がある」
「だろうねえ……」
「アーンとワイアンヌはどこに行ったかな」
「めずらしがっていたからねえ」
自由に見ていいかと聞かれ、俺がいいと答えた。恐らく、二人はあちこちをさまよっている頃だろう。俺とメルナが探すと、奥の部屋にいるのを見つける。そこは、ドローンの格納庫らしかった。
「ドローンか」
「お師匠様! いろんなのがあるっぺ!」
「そのようだ」
「あの四つ足がいっぱいいるっぺ」
見れば、敵が連れていた、四つ足のドローンがコンパクトになって並んでいる。そしてワイアンヌが、隣の部屋から顔を出した。
「お館様。こちらを」
部屋に行って見ると、パワードスーツの格納庫になっている。腕の破損したパワードスーツがあるが、二つとも中にエルフの死体が入っていたままだった。
「やつら、そのままにしたのか?」
「お館様。敵は、それだけ急いでいたのでしょう」
俺がパワードスーツのパネルを操作すると、パージされて二体のエルフの死体が転がった。
「埋葬しますか?」
ワイアンヌが聞いて来る。俺としては、廃棄で良いような気がするが、メルナも言う。
「知らない場所に来て、可哀想だね」
「なら、運び出すか」
《では、ドローンに運ばせましょう》
そうするか。
四つ足のドローンを呼び、背中にエルフの死体を括りつける。
《ここでは、パワードスーツの調整も行えるようですね》
誰かに合わせてみるか?
《ワイアンヌに調整を》
聞いてみよう。
「ワイアンヌ」
「はい」
「これを着てみたいと思うか?」
「はい」
即答だった。俺は頷いて、壊れていないパワードスーツを指さす。
「あれがいい。身長も足りてないから、調整をする必要がある。メルナやアーンのように、青備えを来ての調整だと、どうしても操作性が落ちる。だから、直接体に合わせてみるがいいか?」
「はい」
全く抵抗が無いようだった。格納庫の一部にパネルがあり、アイドナが操作すると、天井からロボットのアームが降りて来る。すると、一体のパワードスーツが開いた。
「ワイアンヌそれに体を入れてくれ」
「はい」
背中から乗り込むように、開いたパワードスーツに体を収める。天井から出て来た、アームがパワードスーツを調整し始め全てのカバーが締まる。
「どうだ?」
「ぴったりです」
「動かせるか」
ガシュン! ガシュン! とアームから外されて、パワードスーツが下ろされる。
するとスムーズに体を動き始めた。
「どうだ?」
「思うように動かせています」
「よし。じゃあ、それを着て行こう。背負子を忘れるな」
「はい」
俺達は、パワードスーツと四本足のドローンを二体連れて外に出る。すると、護衛で待っていた風来燕達が驚いた。
「おわ。て、敵?」
「ちがう。ワイアンヌだ」
「ワイアンヌだって?」
「はい」
そして俺はワイアンヌに言う。
「恐らくアームから銃が出る。言葉で指示できるようにした」
「撃て!」
ガガガガガガガ!
空中に向けて、銃が撃たれメルナやアーンが耳を塞いだ。
「すげえな。反応が早い」
「中に調整する工場があった」
「なるほどねえ……」
そして俺はもう一度ワイアンヌに言う。
「要塞の入り口を締めてくれ」
「入り口を締めて」
ゴーンゴーンと音を立てて、入り口が閉じた。すべて、AI同士のリンクで動いている。
「さてと、改造エルフに会いに行くぞ」
「コハク。あれを、起こすのか」
「問題ない。アイツの鎧も既に書き換えた。目覚めても動かせないはずだ」
「コハクは本当にすげえな。ついて来てよかったと、つくづく思うぜ」
「俺もお前達には助けられている。行こう」
「ああ」
奴らを捕えている、教会へと向かう。宮廷魔導士達が交代で闇魔法で眠らせており、改造エルフのパワードスーツは書き換えているが、問題はアロガンシアとヴァナだ。あれを目覚めさせてしまうと厄介だ。
俺達が教会につくと、守っていたオブティスマが出迎えてくれた。
「どうした?」
「改造エルフを目覚めさせる」
するとオブティスマが騎士達に言った。
「警戒態勢をとれ!」
「は!」
そして俺達はふたたび、眠らせた改造エルフと顔を合わせるのだった。




