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第二百九十三話 青備え壊滅

 市壁を迂回して回れば、移動要塞があったところで火の手が上がっているようだ。


「どうやら、移動要塞を目指してきたらしいな」


「だが、無くなっているさね。コハクが動かしたからねえ」


 マージの声を聞いて、フィリウスが言う。


「あそこで、戦っているようだ」


 ドン! と音を立てて、爆発音を上げ煙があがる。どうやら、青備えを吹き飛ばしているようだった。強化鎧のおかげで、バラバラにはなっていないようだが、衝撃で動けなくなっている者らもいるようだ。よろよろと立ち上がる者もいるが、既に戦力にはなっていない。ほとんどが、動けなくなっている。


「コハク! マズいぜ」


「未知の敵がいるはずだ」


「後ろに控えているのは、西の領地の兵団だな……」


 フィリウスが言う方向、森の終わりのあたりに三千の兵団。ということは、あの青備えを吹き飛ばしているのが……。


《オーバースがギリギリ食い止めていますが、時間の問題です》


「皆。気を付けろ! 俺が先に突入する。メルナとアーンを起点に守れ!」


「「「「おう」」」」


 身体強化を施したまま、一気に戦いの中心へと躍り出た。


「早かったな……」


 俺を見た、オーバースはかなり疲弊していた。おそらく、青備えの兵を守りつつ戦い抜いたのだろう。

そしてオーバースが構えると、フラフラになりながら王都の精鋭の青備え五人が、その周りを囲む。


「奴らの狙いは、市壁の破壊だ」


 俺が敵に目を向けると、一気に一つの人影がこちらに突撃して来た。


 ガッ! シィィィイ!


 俺が炎剣で受け止めるが、そのまま押されて二十メートルほど後退した。


「は? 受けやがった?」


 俺に攻撃を仕掛けて来たのは、真っ青な髪の毛が途中から白くなっている男。鋭い目つきだが、驚いたのは一瞬で、その顔がにやりと笑う。


「こいつだあ……ヴァナ」


《予測演算。危険です離れてください》


 ダッ! 俺がそいつから距離をとる。


 ドン! と、そいつを中心に爆発を起こして、地面が抉れた。


「なんだぁ? コイツ、初見で逃げたぞ!」


「離れなさい。アロガンシア」


 バッ、と俺を襲った青髪の男が、その場から飛び去った。残念ながら、俺が反撃で振るったレーザー剣が空を切る。アロガンシアと呼ばれた、青髪の男が目を見開く。


「そいつは……」


 もう一人は女だった。紫の長い髪と美しい顔をした女。


《サイバネティック・ヒューマンです》


 だろうな。

 

「ヴァナ! コイツ……ルクステリアの一部を持ってる」


「その……ようね」


 あちこちに転がっている青備えは、ピクリとも動かず、どうやらこいつらにやられたようだ。メルナとアーンが近づいて来ようとしたので、俺は大声で言う。


「全員! 待機!」


 オーバースが俺のところに来て、耳打ちをする。


「あの、薄着の女が曲者だ。変な技を使う」


 よく見れば、紫の髪の毛は一本一本が独立しているように見える。


 次の瞬間だった。


 ヴァナと呼ばれた紫の髪の毛の女が、ものすごい高音を高出力で発した。


「キャァーーーーーン!!!」


 グラリ!


《三半規管を補助。音を遮断。平衡感覚を維持》


 一瞬体制を崩しかけたが、俺はその場に立ち尽くす。オーバースを含め他の騎士達はぐらついている。


「ぐう、あれだ……」


《超音波兵器です》


 立っている俺を見て、アロガンシアが言う。


「アイツ、倒れねえ……」


「変ね」


 今度は、ヴァナのバッと髪の毛が広がり、何かが発せられた。


 カカカカン!


 オリハルコンの鎧に、何かがあたり下に落ちる。


《針のようです》


 これは危険だな。


 倒れている奴らを見て言う。


《目の隙間から入り込めば危険です》


 敵はまた驚いている。


「また、貫通しない」


「ヴァナのニードルが通らない……あいつらの鎧は一体なんだ?」


「情報に無いわ」


 どうするか?


《下手に手を出せません。周辺に味方がいます》


 敵も動くのをやめ、じっと俺達を睨んでいた。だがその時、森の奥から木の折れる音が聞こえてきた。


 なんだ?


《巨大なものが近づいて来ています》


 しばらくすると、西の騎士。敵兵がその場から森の中に消えて行く。


 あれは……。


《どうやら、移動要塞を持って来たようです》


 そう、俺の視界には、森の向こうに山のような物が見えている。それは大気圏突入ポッドで、森の木々を倒しながらこちらに近づいてきている。


 今まで見た、突入ポッドとは形状が違っており、大きさも一回り大きい。


 他のと違うようだ。


《旗艦かもしれません》


「くっくっくっ! ようやく来たか!」


「のろまで時間がかかったわ!」


 ここにあった突入ポッドを無くしたからといって、もうないとは思っていなかった。だが、ここまであれを持ってくるための時間だと、今さらながら気が付く。サイバネティック・ヒューマンを相手しつつ、あの要塞を相手にするのは厳しい。


《金剛不壊。空間歪曲加速。瞬発龍撃》


 ドン! と俺は、一気にヴァナに突撃するが、超音波攻撃が襲う。一瞬だけ、ぐらつくが、そのまま目の前に現れた。こいつを先に仕留めれば、これからの戦術が楽になると考えたからだ。


「嘘……」


 ヴァナが目を見開いている。隣りにいるアロガンシアが、ゆっくりとこちらを振り向く間に、レーザー剣をヴァナの首に振り落とす。


 シュン。


 ヴァナの首は……切れていない。自在に動く髪の毛が、レーザー剣を受け止めている。


《レーザーが、打ち消されました》


 高周波ブレードもこうやって防がれた?


《もとより届いていないかと》


 すぐさまアロガンシアが、俺に剣を振り下ろして来た。俺にレーザー剣を持ち換えている余裕はなく、オリハルコンの鎧のアーム部分で剣を受ける。


 ガギン! と受け止めた次の瞬間。


 ドゴン! 


 周辺が爆ぜるように爆発する。だが、金剛不壊を施していたため、爆発の影響を十分の一に出来た。


「利かない?」


 驚くアロガンシア。光鞭を取り出して、二人を捕らえようとしたが、またアロガンシアが爆発する。


 ドゴン!


 それで光鞭が弾かれ、ヴァナが至近距離から針を飛ばして来た。俺は手で目を庇い、そのまま後方へと飛び去った。


 予測演算で助かった。


《距離をとってください》


 更に距離をとる。するとヴァナが言う。


「コイツ……おかしいわ。なにか、変」


「だよなあ……」


「今、イラの一部を使ったわ」


「何故だ……なぜ、兵器が反応する」


 なるほど、アイドナが管理者権限を変えている事を、こいつらは知らないようだ。恐らくは、この世界の文明では、そんな事が出来る者がいるとは思っていないのだろう。


《戦いである程度の指数が判明しました》


名前  アロガンシア

体力  681

攻撃力 479

筋力  584

耐久力 456

回避力 268

敏捷性 418

知力  254

技術力 798



名前  ヴァナ

体力  324

攻撃力 599

筋力  321

耐久力 345

回避力 687

敏捷性 548

知力  281

技術力 951


 これは……。


《過去最強のコンビです》


 攻撃が通らないのは、そのためか。


《はい。今までよりも連携の効率もいいです》


 そうこうしているうちに、移動要塞が皆も見える距離にやってきた。


《再演算モードに入ります》


 丁度、相手も警戒している。俺はじりじりと下がりながら、周辺の情報をかき集めるのだった。


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