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第二百七十九話 オーバース将軍との邂逅

 既に風来燕の戦力は、対人として考えるなら最強レベルと言ってもいいだろう。要塞の周辺に警護していた騎士達は、風来燕を認識するまえに首を刎ねられ死んでいく。


《魔獣狩りや、ここまでの戦闘でかなりのスキルになっています》


 実戦慣れをしている事と、思考加速と呼ばれる能力を身に着けて、即座に倒す事が出来ているようだ。


「良いぞ。コハク」


 ここでバタついていたら、中のエルフに気づかれていたかもしれない。王都のなかで、オーバース達が騒いでくれたおかげで、偵察ドローンも都市の方に飛んで行ったようだ。


「ボルト。爆発の対策のため、万が一のために退避していろ」


「はあ? 自分らの主が中にいるのにか? そいつは出来ねえ相談だな」


《ノントリートメントらしい、非効率的な考えです》


 だが……俺には、理解が出来る……。


 不思議な感覚だった。AIの世界から来たばかりの時は、こんな風には考えなかった。だがいまは、ボルトが言っている気持ちが分かるようになった。


「わかった、ボルト。だが、爆発させることはない。これで、四度目の侵入だからな」


「おう」


「なら、ここで見張っていてくれ。近寄る兵隊が居たら、殺せ」


「御意」


 そして俺はあの、ドローン射出口に向かって光鞭を飛ばす。するすると、昇って行き入り口を破壊して進入する。どれも同じ作りになっており、潜入は楽だった。


《では、エルフを始末してください》


 よし。


 そして俺は迷いなく侵入していくと、どうやらエルフは指令室に固まっているようだった。外の状況を確認しつつ、兵士達の動きを見張っているのだろう。


《自爆の解除します。制御室へ》


 真っすぐに向かい、アイドナがドアを開けて入る。直ぐにパネルを操作して、自爆機能をカットする。


《次はエルフを排除します》


 一気に指令室に向かい、入り口の前で一度止まる。


《内部に五体》


 これまでと同じか。


《規則性から考えて、指示はAIによるものかと》


 AIが……。


《時間知覚拡張、超感覚予測、龍翔飛脚、閃光一閃、レーザー剣をチョイス》


 レーザーを出さない状態で手にし、アイドナが扉を操作して開いた瞬間。突入して、目の前に座っている二人の首を切った。だが、俺の時間知覚拡張のため、首が落ちずにくっついたままに見える。エルフは、まだ斬られた事を分からずに画面を見ていた。直ぐ飲み物を飲んでいる二人に肉薄し、二人の首を斬るもまだ談笑を続けているように見える。何かを操作しようと、手を上に伸ばしてるエルフの脳天にレーザー剣を差し込むと、ゆっくりと全員の首が落ちていくのだった。


《死んだことに気が付いていません》


 無駄な恐怖を植え付ける必要はない。


《では、脱出を》


 俺は来た道を戻り、ドローンの射出口から出る。すると風来燕達が驚いていた。


「えっ……もう終わったのか?」


「ああ。全て」


「数分しか経ってないぞ」


「これで、四基目だ。もう慣れた」


「慣れ……たか、世界初なんだけどな……」


「それより、フィリウス達に連絡を!」


 ベントゥラが何かを取り出し、空にむけて紐を引く。それは、ワイアンヌが作った魔道具で、連絡用の照明弾が高く上がった。


 ピィィィィィ!


「よし。それじゃあ、この要塞によじ登りそこから王都に侵入する」


「了解」


 俺とボルトが一気に上に登り、スルスルと縄を垂らすと、ガロロとベントゥラとフィラミウスがよじ登って来た。


《北門で戦闘がはじまりました》


 よし。


 俺達は市壁の上を、北に向けて走り抜けていく。右手を見ると、炎上する都市が煙を上げ続けている。すると門の内側に、既に王軍が待機していた。俺達はすぐさま、その王城の内側へと飛び降りた。


「オーバースはいるか!」


 俺が声を上げると、騎士達が驚いたようにこちらに剣をむける。奥から、のそりと青い鎧を着た大柄な男が現れた。


「コハクか!」


「そうだ!」


「良く来てくれた!!!」


 そしてオーバースが俺のところに来て、ガシッと腕を合わせる。


「良く王を説得してくれた!」


「……だが、かなりの大きな犠牲を払った」


「わかった。話は後だ。北門を開けて、友軍を援護してくれ! フィリウスがいる!」


 するとオーバースはくるりと振り向いて、、騎士達に大声で言う。


「助けが来た!! 我々はまだ終わってなどいない! 友軍が戦ってくれているんだ! 助けるぞ!」


「「「「「オオオオオオオ!」」」」」


 ガゴン! ぎぃぃいぃぃ! と門が上げられて行く。すると、門の外では敵を押している、フィリウス達がいた。内側から一気にオーバースの軍が出て圧倒的に全滅させる。


「オーバース様!」


「フィリウス!」


「よくぞご無事で!」


「助太刀感謝する!」


 そうして俺達の部隊を全て、王都内に入れて再び門を閉じ、王宮魔導士達が結界をはる。


 そしてオーバースとフィリウスと俺が集まった。


「よくぞ来てくれた! パルダーシュはどうなった」


「市民を全て、コハクの領に避難させ都市を放棄しました」


「思い切ったな!」


「オーバース様も、よくぞ西への進軍を思いとどまらせましたね」


「……まあ、いろいろとある。コハク! あれは何だ」


「未知の敵と同種の敵だ。ドローンを使って火を放ち、機械の鎧を着て攻撃して来る」


「そのようだ。そして、鉄の鎧やミスリルの鎧を貫通する魔道具を持っている」


「ああ。あれは銃と呼ばれるものだ」


「あれのおかげで、軍は大損害を受けてしまった」


「青の強化鎧で無ければ防げない」


「そのようだ……とにかく、王城へ! 生き残りがいる!」


「わかった」


 俺達は、あちこち燃えてしまった街を走る。延焼を食い止めるために、壊された区画もあるようだった。あちこちに王兵がいるのは、市民達を助けているかららしい。石造りの建物はどうにか焼けずにいるようで、そこに市民達が逃げ込んでいるのだとか。王城も完全な石造りのため、火災からは守られていた。


 オーバースが門番に開けるように言い、俺達が中に招き入れられた。


 そこに、クルエル将軍がいた。


「おお! コハク! やはりおまえか!」


「助けに来た」


「直ぐに、城へ!」


 先に進めば、そこらへんに怪我をして横たわった騎士がいる。


「治療薬は」


「きれた」


「そうか……」


 それだけ激戦だったのだろう。王城に入っても、広いエントランスにもっと重症の騎士達がいた。オーバースとクルエルが入って来たので、皆がこちらを見ている。


 そこで、オーバースが騎士を鼓舞するために行った。


「王覧武闘会の優勝者である、コハク・リンセコート男爵が助けに来た! 俺達はまだ終わっちゃいない!!」


 すると、力なくも答えたた。


「おおおお、コハク卿」

「来て…‥くれたんだ」


 そして俺達が中に進み、舞踏会場にも騎士達が休んでいる。


「酷いものだな」


「ああ。あの鉄の騎士と鉄の犬にやられた」


 そしてそこにいたのは、負傷しながらも騎士達の世話をしているオブティマスだ。よくみれば、腕が途中から無くなっている。


「……本当に来たのか」


 するとオーバースが答える。


「こいつは、そう言う男だ」


「そうか……」


 そして謁見の間。そこは静まり返っており、そこのベッドには王と白い布をかけられた人がいた。


「王よ! コハクが来てくれましたぞ!」


 だがすぐには答えなかった。オーバースが俺を連れて、その横に立つと、薄っすらと目を開けて見る。


「…………コハ……ク」


 するとそれを見て、フィリウスが何かを察し王に詰め寄る。


「王よ! 王子は見事その役目を果たされ、今は無事にリンセコート領におります!」


「……ぶ……じか、あやつは……」


 そして俺が、ベントゥラに言う。


「治療薬を!」


 だが、オーバースが俺の肩に手をかけて首を振る。


「散々使ってこの状態だ。医者はこれ以上は負担をかけると」


《そのようです。もう、死亡するでしょう》


 するとメルナの鎧から、マージが言った。


「蘇生は! 王宮魔導士ならば!」


「大賢者。どうやら、体内に敵の武器の何かが入り込んだようなのです」


《遅延性の殺傷弾が使われた可能性があります》


 エックス線透過でみれば、数発の銃弾が体内に残っている。


 そこで、俺がオーバースに聞く。


「どうしてこうなった?」


 すると白い布がかけられている、布をとる。そこには白くなったトレランがいた。


「トレラン様は死んでしまわれた。王とトレラン様が、元は同じ国民であると交渉に出向いた結果がこれだ。俺達が必死に守って連れ帰ったが……」


「そうか」


 すると王を見ていた、治癒師が叫ぶ。


「王よ! 目をおあけください! 王よ!」


 だが……もう死んでいた。


 人格者である、この人物の死に、その場にいた奴らが言葉を失うのだった。

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