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第二百七十一話 生きていた辺境伯とその騎士達

 何処までも続く長い列、相当な人数が歩いているようだった。


「いったい、どこまで続いてんだ」


 ベントゥラが言うと、先頭のやってきた騎士が答える。


「パルダーシュからここまでの領民で、動ける者は全てと言っていいだろう」


 そこで、ボルトが眉間にしわを寄せて聞いた。


「パルダーシュが陥落というのは、本当か?」


 するとパルダーシュの民が言う。


「いえ。放棄したと言った方がいいのでしょうか?」


「放棄……」


「はい、領主様がそのようにと」


 俺達は顔を見合わせる。という事は、一体どういうことなのか?


 そして俺が聞いた。


「辺境伯はどうした?」


「恐らくは、最後尾に。パルダーシュ領兵が殿を務めています」


「なんだと、みんな! 急ぐぞ!」


「「「「おう!」」」」

「わかったっぺ!」


 直ぐに馬を走らせ、連なる市民達の脇を駆け抜けた。


「いったい、何キロあるんだ」


「とにかく、急げ!」


 突如として現れた、青い騎兵の集団に市民達が驚いている。列は何処までも続いており、どうやらヴェルティカの書簡を読んで直ぐに手配していたのだろう。もちろん、空からの大気圏突入ポッドなど想定はしていなかったが、未知の敵に遭遇したら集まるように言っていた。


「後ろがなかなか見えない」


「凄い数だな」


 所々に騎士が張り付いていたが、どうやら冒険者らしき人間も多数いた。本来は兵隊と一緒に動く事はあまりないが、敵が敵だけに逃げる事になったのだろう。そのおかげで、市民達が魔獣に襲われずに済んでいるようだった。


 数十分ほど馬を走らせたところで、だんだんと人の数がまばらになって来た。そして最後尾の方には、俺達と同じ青備えの集団がいた。


「コハク・リンセコートだ! 辺境伯はいるか!」


「「「「おおお!」」」」


 騎士達から雄叫びが上がる。


「お館様! リンセコート卿が!」


 ザッと、騎士団が両脇にどけるとその奥に、フィリウスとビルスタークとアランの姿。


「フィリウス!」


「コハク!」


 そして俺の馬が駆け寄ると、俺が送ったフィリウスとビルスタークとアラン専用の、オリハルコンフルプレートを着ているのが見えた。それにボルトが叫んだ。


「よくぞご無事で!」


「危なかったさ! だが、元よりあの未知の敵には敵わない事が分かっていた」


「それでも良く!」


「既に市民は逃がし始めていた! ヴェルの書簡には、早く動き始められるようにとあった」


「流石ですな!」


「いや。それでもかなりの被害が出た。あれは、未知の敵なのか?」


 そこで俺が首を振る。


「あれとは違う。だが仲間だ。あの、未知の敵を回収、さらに情報収集のために送られたらしい」


「ゴルドス国軍と来たのだがな、自分らの兵士がとばっちりで死ぬのもかまわず戦う、鉄のゴーレムがいたのだ! 石礫のような、おかしな魔法を使う」


「あれは銃というものだ。恐らくやられたのは、鉄の強化鎧を着ていた奴だろう」


「そうだ」


「すまん。もっと大量に供給できれば」


「いや。助かった!」


 そして俺達は馬を降りる。三人も馬を降りて、俺の前に発つ。


 ビルスタークが言う。


「コハク。敵は恐ろしい力を持っているようだな」


「そうだ。文明のレベルが違う」


「だろうな……俺とアランで死ぬ思いで戦って、一体行動不能にしたところだ」


「なに? あれを一体行動不能にしたのか?」


「ああ。関節部分から違和感があったのでな、そこを集中攻撃したら手が取れたんだ」


 そしてアランが続けて言う。


「団長が取った腕の穴に、俺が槍を突っ込んだら止まった」


《なるほど。このくらいの力量があれば、何とかしのげるようです》


 そのようだ。


《であれば、オーバース、及びフロストは対応可能な可能性があります》


 オリハルコンの鎧が間に合って良かった。


《ですが、王都方面は絶対的な数が足りてません》


 兵の数で、どうにか凌ぐしかないかもしれんな。


《はい》


 少し慌て気味にフィリウスが言う。


「アイツらは、鉄の要塞と共にこちらに侵攻している」


「そうだ。だがその鉄の要塞と、鉄の騎士はあまり距離を置かない。そして鉄の要塞は動きが遅いからな、だから一斉に追いかけて来ないのかもしれん」


「そう言う事か……」


「そうだと推測される。そして逃げたのは良い判断だ。恐らく皆殺しにあうところだった」


「それもこれも、コハクの送ってくれたこの鎧のおかげだよ。あの礫を全て弾く事が出来た」


 それにアランが付け足す。


「それに、ゴルドス国の剣も槍も全く受け付けない。百人力とはこの事だ」


「敵の数は?」


「あの鉄の騎兵は四しかいない。だがゴルドス国の兵は、いつぞやとは桁が違う。恐らく、二万はいた」


「それは厄介だな」


「国をあげて、この国に来たとなると、他の国のけん制など考えてない動きだ」


「それは見計らっているからだろう」


「リンデンブルグ帝国を全く無視していると?」


「おそらく、あの鉄の鎧は、リンデンブルグにも出現している」


「それを……見越してか」


「そう推測される」


 そこで、ビルスタークが話を切る。


「さっ! 早く進みましょう! ぼやぼやしていれば、奴らがパルダーシュから進軍を始めましょう」


「だな。コハク! 予定通り、市民をお前のところに逃がす」


「そうしよう。先に行ってくれ! 俺達が殿を務める」


「わかった! すまない!」


 そうして俺達がそこに残り、最後尾のフィリウス達が南に向かって進んでいった。


 そしてボルトが言う。


「さてと、どうするかい? お館様」


「あの、マキナユニットと、鉄の要塞の攻略は俺が出来るが、二万の将兵は流石に相手に出来んだろう」


「だねえ」


「だが、何とかあの要塞の中に無傷で俺が入れれば、どうにかなるかもしれん」


「……二万の将兵がいるのにか?」


「二万もいるからこそだ」


 するとそこで、アーンがポカンとして言う。


「まさか、お師匠様……」


「その、まさかだ」


「うそだっぺ……」


 その会話を聞いて、風来燕達も何かに気が付いたようだ。


「おいおい……まさか」


「やってみなければわからんよ。ボルト」


 皆が息をのんで俺を見る。俺は再び、ゴルドス国に一泡吹かせる方法を思いついたのだった。

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