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第二百六十九話 捕らえたエルフが語る宇宙人の真実

 既に一度進入しているため、アイドナは大気圏突入ポッドの構造を記録している。監視カメラの位置も、生体動力の位置も、そして管理室の位置も。


《操作パネルよりハッキングします》


 よし。


 前回の爆発は予測していなかった。だが、構造を知ったが故に、何処からシステムに侵入すればいいのかを掌握していた。管制室とは別の場所に、機械室がありそこでパネルの操作をしている。


 どうだ?


《こちら前世の文明よりかなり低いようです。素粒子単位でのAIではなくナノマシンも、非常に低レベルです。残った敵にも、こちらの進入は誤作動だったように表示します》


 そして俺は周囲を見る。明らかに、この世界の文明とは違うものだった。


《管理システムを掌握。これで自爆はありません》


 よし。


 俺はその部屋を出て、生体反応のある方へと向かっていく。いずれにせよ、これを止めねばまた人が死ぬ。なんとしても、それだけは避けなければならなかった。


《エルフです》


 エックス線透過で、通路の先からこちらに向かう者がいた。俺はそのまま物陰に隠れて、そいつが来るのを待っていた。俺の目の前を通り過ぎようとした時に、俺はそいつに飛びかかりねじ伏せる。


「ぎゃあ」


「静かにしろ」


「な、なんだ! お前は!」


「騒げば、頭の中が破裂するぞ」


「……」


「この機械はこちらで掌握した」


「なに……」


 だが、取り押さえた奴は笑い始める。


「ははは、いったいどういうこったよ。そんなに文明が発達してないはずじゃなかったのか」


《こちらに言っているわけではなさそうです》


「なにをいっている?」


「……キメラ・マキナはどこにいっちまったんだ」


《なるほど。サイバネティックヒューマンを確認しに来たような口ぶりです》


「何体かは倒した」


「この世界に、キメラ・マキナを殺せる兵力があるものか!」


「いや。殺した」


 その男エルフは静かになる。


 観念したのか?


《わかりません》


 だが、男はぼそりと言った。


「我々を殺したところで、何もならないぞ」


「なに?」


「俺達は使い捨ての駒だ」


「駒?」


「キメラ・マキナが失敗したら、次は俺達を使って地上を確認させた」


「誰が、それをさせている」


「それは」


 エルフ男が何かを話そうとした時、エックス線透過で頭の中のカプセルが発熱しているのが見えた。


 パシュン!


 それが破裂して、エルフ男が動かなくなってしまった。


《里で見た現象と同じです》


 あくまでも、情報を渡さないつもりか。


《そのようです。この突入ポッドをなんとしても回収しましょう》


 あと何人乗ってる?


《あと二人》


 そしてアイドナのガイドマーカーに従い、俺は残りの二人を探し始めた。


《なるほど。キャタピラが動かなくなったので、確認しようとしているようです》


 俺はそのまま管制室に向かって、入り口を開ける。すると中にいた奴が、声を発した。


「どうだった?」


 どうやら、俺を仲間だと思っているらしかった。もちろん俺は答えずに、身体強化で内部に入り込む。俺が突然目の前に現れると、そのエルフ女は面食らったような顔をしていた。


「動くな」


 慌てて振り向こうとしたが、俺は後ろ手に腕を掴んで拘束した。


「侵入者よ!」


 もう一人の男のエルフが、こちらに向けて銃を構えた。


「やめろ!」


 だがその男は、無情にも女もろとも俺を撃ってきた。女は銃弾を受けて倒れ、俺のオリハルコンスーツが銃弾を弾く。


 カカカカカン!


 直ぐにそいつに突撃して、銃を取り上げて蹴り飛ばす。


「仲間を撃つのか!」


「貴様は、何者だ!」


「こちらが聞いている」


 だが、そいつは腕につけたブレスレットを操作し始めた。


「あれ? あれ?」


「自爆は出来んぞ」


「なんだと」


「システムはこちらが掌握した」


「そんな……」


 俺はそいつの元に行って、しゃがみ込み顔を見る。


「お前達の目的は分かった。誰にやらせられているか教えろ」


 するとエルフ男は笑う。


「あははは。分ったところで、もう遅い。俺は証拠隠滅の為に死ぬ」


「お前達は誰にやらされている?」


「お前達に行っても分からんさ。それに、それは言えない事になっている」


「起爆装置が発動する……か」


「なぜそれを」


「頭の中に入っている」


「そこまでわかるのか? ここの、文明はどうなっているんだ?」


「さあてな。他のポッドも同じような戦力か」


「……そんなところだ」


「キメラ・マキナを探しに来たんだな」


「……音信不通になった者がいる」


 だがそんな話をしていると、アイドナが言う。


《わかりました。起爆装置は通信式ではありません。この者達の体内にある、ナノマシンがコントロールしています》


 ナノマシンが、命を握っているのか?


《そのようです。低レベルのAIではありますが、人間の思考が裏切るかどうかの判断をするくらいには発達しているようです》


 どういうことだ?


《助かりたいがために、情報を話したり、重要な戦略を話そうとすると自爆します》


 なに、いわゆる気持ちを……判断しているのか?


《気持ちも、電気信号で分析できます。さらに、思考を電気信号で解析した結果、判断して起爆させているようです》


 そこで俺が言う。


「おい。主を裏切らなくても良いぞ。俺は敵だが、何もしなければ命は助ける。お前達の情報を話す事もしなくていい」


「なんだと……どうした突然……」


「お前の中の、ナノマシンをコントロールしろ」


「……おまえは……」


「いいか。俺に気を許すな。敵だと認識したまま、何もするな」


「ふざけてるのか?」


「本気だ」


 俺はそいつから離れ、体を自由にしてやる。そいつは、急いで俺から離れてパネルを操作し始めた。


「無理だ」


「なんで! なんで!」


「管理者権限は俺にある」


「お前のような低レベルな、生物がそんな事を出来る訳があるまい!」


「信じなくても良い」


「俺達は、俺達は! こんな世界の奴らとは違う。高度な文明を持っているんだ! キメラ・マキナさえうまくやっていれば!」


《感情がコントロールできていません》


「よせ!」


「俺達は、俺達のコロニーには」


 バシィィ!! そいつは操り糸が切れた人形のように崩れ落ちた。


「なぜ自分から……」


《ノントリートメントと、構造は一緒のようです。優先順位より感情が先に立つようです》


 という事は、個体差もあるのだろうか。


《その可能性はあります》


 そしてアイドナがパネルを触り、この大気圏突入ポッドの内部を全て確認する。既に生物は乗っておらず、生体動力だけが動いている状況だった。


《さらなる、分析を開始します》


 しばらくアイドナがパネルを触り、情報を探ろうとしていた。


《残念ながら、大気圏突入ポッドの情報と、これの稼働方法、パワードスーツの管理情報などしかないようです。ここから、大元を辿る事は不可能かと思われます》


 本当に使い捨てだという事か?


《その可能性は高いです》


 そこで、俺はふと思う。


 もしかすると、これを送った奴は、エルフよりサイバネティック・ヒューマンの方を重要視してるんじゃないのか? キメラ・マキナとやらを探して回収しに来たのでは?


《はい。その可能性は十分にあります》


 ゆっくりはしてられない。


《では元の通路を。この要塞は、あなたしか入れないようになりました》


 わかった。


 そして俺はそのまま大気圏突入ポッドを抜けて、都市の方に向かって走っていく。生存者を救出できたようで、広場に人々が集まっていた。メルナが回復魔法を施し、怪我人を治しているところだった。


「コハク!」


 メルナが手を振る。そして俺のところにボルトが走り寄って来た。


「どうなった?」


「増援は無い。要塞は自爆の前に制圧した」


「すげえな。やっぱお館様は」


「それに、アイツらの目的も見えてきた」


「なんだって?」


「あの、未知の敵の回収、もしくは証拠隠滅だ」


「そうなのか」


「それに、アイツら自身が使い捨てだ。捕まれば死ぬようになっている」


「クソな話だな」


 俺はそうは思っていなかった。俺の前世では、AIが人類を支配し、バグである俺は殺処分された。AI社会に不必要な奴は、殺される運命にあった。あのエルフたちは、同じ運命を辿っているという事だ。


「アイツらの目的は、情報収集も兼ねている。あの未知の敵を回収できなくても、情報隠滅の為に死ぬようになっている」


「いったい何がしてえんだ」


「必ず他に目的はある。いずれにせよ、落ちてきた星たちは、全て先兵という事だ」


「先兵が脅威だな。あれを、普通の鎧の騎士では防ぎきれねえ」


 確かに、キメラ・マキナじゃなくても、パワードスーツは脅威だった。あれを対処する方法は、限られているだろう。


「各地に送った、オリハルコンの強化鎧を起点に戦線を維持するしかないだろう」


「いずれにせよ、ヤベエってこった」


「ああ」


 とにかく治った人達には、リンセコート領に向かってもらうように言った。シュトローマン領は壊滅せずに済んだが、パルダーシュと王都がどうなっているか分からない。俺は、まずパルダーシュ領のフィリウスが、最適な判断をしていることを祈るのだった。

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