第二百六十話 謎の飛行ドローンの監視
どうやら敵のコンバットアーマーには、消火機能がついているらしい。炎を直撃させてみたところ、消火剤が吹きだして炎をかき消したのだ。
それを確認し、アイドナが分析する。
《熱では破壊出来ないようですが、恐らく内部に影響を及ぼすのでしょう》
どういうことだ?
《熱による誤作動、耐熱性能の弱さ、内部の人型に影響を及ぼす可能性》
何故そう思う?
《炎を警戒して、距離を取り始めています》
あれは、いつもの敵ではない?
《サイバネティック・ヒューマノイドであれば、火炎はさほど恐れる事はないでしょうし、コンバットアーマーのような物を装着する必要はないでしょう。さらに銃火器は今まで確認してません》
たしかにそうか。
《それに、あのサイバネティック・ヒューマノイドの身体能力より、遥かに劣っています》
確かにそうだ。理解した。
どうやらいままで俺達が戦ってきた、アヴァリやルクステリアなどとは違う生体らしい。
《捕えて分析したほうがいいかと》
わかった。
稼働している二人のコンバットアーマーに、龍翔飛脚で突撃し一人を突き飛ばす。俺のスピードについて来れない、もう一体に対して光の鞭を振るって拘束した。するとそれに連動した、こちらの重機ロボットがきて上からガツンと取り押さえる。光の鞭を解き、俺はもう一体のアーマーを拘束する。すると重機ロボットのもう一つの手が下りて来て、ガシッと掴む。
そこにメルナが駆け寄って来る。
「コハク!」
「マージ。闇魔法だ」
「よーし。メルナ、闇魔法をかけようかね」
「うん」
メルナが三体に闇魔法をかけた。
「どうだ?」
「これにも効果あるようだねえ」
「もう一体は死んだみたいだ」
「死んだかい、そうかい」
俺は倒れている腕の無いアーマーに近寄り、壊れた腕の部分にナイフを入れてほじくり出す。それを見てアイドナが俺に伝えてきた。
《人体に近いです。サイバネティック・ヒューマノイドとは違います》
人間か?
《確率は九十九パーセント以上》
それで、あれほどの強さを発揮するのか?
《コンバットアーマーと支援ロボットのおかげでしょう》
するとそこに、重機ロボット一機を引き連れたジロン達がやって来る。
「お館様!」
「いいところに来た。この鎧と機械を回収しよう」
「は!」
皆はワイアンヌが用意してくれた、鉄のワイヤーで三体と破損した一体、行動不能になった四体の四足歩行のロボットを重機ロボットに縛り付けた。動かないのを確認し、元来た方向へと歩きだす。
俺が後ろからその様子を眺め、状況を確認しつつ進んでいると、どうやら一機のアーマーに熱反応が感知された。俺がそこに行って、アーマーをガンッと叩いて言う。
「下手な真似はするな。動かなくても、状況は見えている」
すると諦めたのか、熱反応が収まる。
《今のは自動です》
そうなのか?
《内部の生体は闇魔法で意識を落としてます》
そうか。AIということか?
《そのようです。まだ制御系の解析を行っていませんので分かりませんが》
自動で動き続けるか……。
《このアーマーも、生体動力を格納しているようです》
同じものか?
《かなり小型ですが、同じもののようです》
どうやら俺が指摘したところで、そのAIの狙いは終わっていたようだ。アイドナがアラートを発生させて、俺に伝えて来る。
《飛翔体の音を確認。こちらに向かっています》
「全員! 敵襲に備えろ。敵は上だ!」
ザッっと、フォーメーションを整えて、陣形を撮り馬は後方へと下がらせる。俺が指を刺した南東方向から、こちらに何かが飛んできているようだ。すると、ボルトが言う。
「こいつらが来た方ですね」
《恐らくは、大気圏突入ポッドが生きているのでしょう。そちらから、何かがこちらに向けて飛んで来たようです》
見ていると、数機の飛翔体がこちらにやってきた。ビュンビュンと音を立てて、空中を飛び回りこちらを確認している。
《形状から考えると、カメラがこちらを監視しています。無人ドローンのようです》
味方が捕まったのを見に来たか。
《そのようです》
俺達が警戒していると、空を飛んでいるそれらも空中に留まった。
「ありゃなんだ」
目のいいベントゥラが大きな声で言う。
「飛ぶアイアンゴーレムだ」
「ゴーレムが飛ぶのか!」
「俺達を監視している」
「どうするよ」
「このまま帰れない」
するとアイドナが言う。
《ならば、大気圏突入ポッドに行きましょう。破壊するなり、コントロール制御をこちらに奪うなりすればよいかと》
「みんな! この先に行くぞ! こいつらが乗って来た乗り物に向かう」
「「「「おう!」」」」
「「は!」」
「うん」
俺達は来た道を戻り、一度こいつらと戦ったところにいく。
《この敵が来た方角に、足跡が残っています》
追跡してくれ。
《了解》
そして俺達が森の間を進み、草原を出て進んでいくと、上空のドローンはずっとついて来ていた。森の中でも見失わないのは、おそらくサーモグラフィの機能があるからだろうとアイドナが推測している。
そしてその先に、大きなクレーターが見えた。その中心に、弾丸の形状した大気圏突入ポッドがめり込んでるのを確認する。
《エックス線透過が出来ません》
なぜだ?
《素材によるものだと思われます》
ならば、接近してみるか?
《不確定要素が多いです》
どうするか?
《他の重機ロボットを呼びましょう》
そこで俺はジロンに言う。
《サムスの部隊を連れて来てくれ》
「は!」
ジロンが単騎で飛び出して行った。すると一機のドローンがジロンについて飛び去って行ってしまう。
俺は捕らえた奴のところに行って、マージに言う。
「コイツを闇魔法から目覚めさせよう》
「メルナや、闇魔法を解除するさね」
「うん!」
そして魔法をかけ、一人を闇魔法から解き放つ。
「目覚めたよ」
「俺の言葉が分かるか?」
だがピクリとも動かない。
「覚醒したのは分かっているんだ」
《理解していないかもしれません》
そうか。
覚醒したそいつのアーマーが、熱を持って来たのでメルナに言う。
「眠らせてくれ」
再び闇魔法で眠らせ、俺達は遠くから脱出ポッドを見つめる。すると馬の蹄の音と共にサムスたちの隊が、もう一機の重機ロボットを連れてきた。そして俺は、重機ロボットに指示を出す。
「あれを調べろ!」
ゴウンゴウン! と音を立てて、重機ロボットは大気圏突入ポッドに近づいて行くのだった。