第二百五十九話 戦闘アーマーとの戦いと能力の解析
空中を飛びながらも、アイドナが先の状況を確認する。
《敵は八体。人型四体と四足タイプが四体です。しかし動きの遅い重機ロボットでは、敵を捉えられないようです。更に敵は、重機ロボットの弱点を的確に突いて来ています。重機ロボットは、オリハルコン装甲のおかげで防げているようです》
強化した重機ロボットは持ちこたえているが、数体の敵に翻弄されている。風来燕は指示通りに、遠距離からの支援攻撃に徹していて、明らかに魔法も弓も効いていない。今まで見たような未知の敵とは、明らかに形状が違っている。それはむしろ、小型化した重機ロボットのような形状で、動きがより人間的に見える。
敵もロボットか?
《あれほど臨機応変に動く技術は、敵は持っていないと思われます》
なめらかだ。
《エックス線透過、サーモグラフィに切り替えます》
俺が着地と同時に敵を確認すると、どうやらあれは鎧のようだった。
中に人型の何かがいる。
《そのようです》
四足はいない。あれはロボットか。
《はい》
そして俺は、ボルトを見る。
「コハク!」
「攻撃が通用しないか?」
「あいつら、変なものを使うんだ」
「見てわかる」
敵は明らかに、飛び道具を使っていた。
《アーマーに備え付けた機銃のようです》
オリハルコン鎧のおかげで、風来燕は死なずに済んだようだな。
《レーザー兵器の上を行くものなら、対処できなかった可能性もあります》
重機ロボットはブンブンと斧を振っているが、動きが大きいうえに遅いため、距離を置かれると対応できない。だが逆に敵は懐に入り込めず、アームから射出される銃で対応しているようだ。
動きが独特だな。
《四足歩行は恐らくサポートロボットです。あれに、兵器が積みこまれています》
ガイドマーカーで表示される四足歩行は、どうやら輸送用のロボットらしい。見ていると、弾丸が切れた奴が、四足歩行から出てきたアタッチメントと交換していた。
だが、敵の動きに変化が出てきている。
《あちらも、何らかの計算の元に動いているようです》
あれは、ただの鎧ではないようだな。
《機械式のアーマーのようです》
敵は確実に重機ロボットの、オリハルコン装甲の間を攻撃し始めている。その弾丸が通り始め、あちこちから煙が噴き出してきた。
行くか。
《もう少し情報を。フィラミウスとベントゥラに、魔法と弓で攻撃をさせてください》
「フィラミウス! ベントゥラ! 支援攻撃してみてくれ!」
「はい」
「おう!」
ボッ! ボッ! シュッ! シュッ!
火魔法と、弓矢が飛ぶ。そして着弾。
《火魔法は避けています。弓矢は避けないようです》
火は警戒か。こちらの攻撃は通るか?
《あなたの打撃は有効かと。装甲は耐えても、中には衝撃が通るかもしれません》
重機ロボットが生きているうちに、行った方がいいな。
《演算終了。時間知覚拡張。無意識回避。空間歪曲加速》
次の瞬間。俺は一体の人型アーマーの横に現れ、ジェット斧を回転させて、そいつの背中に水平に打ち込んだ。
バゴン! という強烈な音と共に、そいつは吹き飛ばされ巨大斧を振り回す重機ロボに飛んで行く。
ドガン! そいつは重機ロボの巨大斧の直撃を喰らって、さらに吹き飛んでいく。俺はそのまま、目の前にいる四足歩行のロボットに斧を振り落とした。
ガン! ベシャ! 破損しつつも、打撃を逃がすように下にしゃがむ。
《瞬発龍撃》
もう一発をそのままそいつに振り下ろすと、バチバチ! と火花を散らして動きを止めた。
ようやく敵は、こちらの異変に気が付いたようだ。奴らが、こちらに向けて銃を撃ち始めたのである。その弾丸が当たった瞬間に、アイドナが瞬時に演算をした。
《弾丸は金属製です。電磁の力で射出された弾丸です》
カンカンカン! と音を立てて、オリハルコンの鎧はそれを弾いて行く。
《射出速度が速い。鉄製であれば貫通する威力です》
俺は今潰したばかりの、四足歩行のロボットの足を持った。
《瞬発剛力》
ブン! 四足歩行ロボは、目に見えない速度でその場を飛び去り、一体の人型を直撃した。その隙に俺は身をかがめて、一気に重機ロボットの下に入り込む。
ガン! とオリハルコンの鎧を降ろして、重機ロボットは俺を守った。銃は正確に俺を狙っているが、俺は重機ロボットの動きを利用して、その場を瞬間的に飛び出した。突然出てきた俺の前に、四つ足のロボットが飛び出し、人型のアーマーを守るようにする。
《自動防御です》
普通の動きでは対応するようだな。
《機械が自動認識するようです》
そのままジェット斧で四足ロボットを吹き飛ばすと、目の前の人型アーマーが筒を構えていた。
《回避》
するりとかわすと、そこから大きな弾丸が出て行く。
ドン!
《ロケットランチャーです》
それは、重機ロボットの盾に着弾し爆発した。もちろんオリハルコンの盾はびくともしていない。すると今度は、一体の四足歩行がにょきりと銃を出して打ち込んできた。
カンカンカン!
俺は目の前の人型を掴み、そいつを盾にしてみる。
《銃撃を止めました》
味方に当たらないようにしているのか?
《自動判定のようです》
次は、ステルスをためすか。
《暗蜘蛛隠》
俺の鎧は認識が難しくなった。
どうだ?
そこから距離をとる。だが、目の前の人型は、俺に正確に標準を合わせて来た。
《視覚的な機能を持っています。こちらと同等の機能でしょう》
意味なしか。
《はい。ですが目の前の敵は動揺しているようです》
攻撃が効かないからだろうか。
《敵のアーマーの弱点を確認。レーザー剣に切り替えてください》
すると俺の視界には、人型アーマーの体のあちこちに赤い点が映る。
なるほど。
銃弾が出る穴は、完全に弱点になっているらしい。
《予測演算にて、射角、次の場所、行動のラインを投影》
俺はそのまま、柄だけのレーザー剣をその赤い点に合わせ、ぶつかったと同時にレーザーを射出した。
《銃口に入りました》
目の前の敵は、差し込まれた腕を押さえて、バッと後ろに飛び去る。
《ジェットを使いました》
逃がさん。
そのまま同じスピードで飛び、ガッ! とレーザー剣で内部を焼いた腕の付け根に、レーザー剣を振り下ろした。
ジュン!
ドサっ!
「うがああああああ」
やっと声らしきものを聴いた。
腕が斬り落とされ、付け根から液体が飛び出す。そのままそこにレーザー剣を突き入れて、その内部を焼いてみた。すると次の瞬間、糸が切れた人形のように倒れ込む。
俺が振り向くと、もう一人が俺に向けて必死に銃を打ち込んでいた。オリハルコンの鎧のおかげで、全く通用しないのだが、それがいまいち分っていないらしい。
《空間歪曲加速》
ボッ! そいつの後ろに出て、赤い点にめがけてレーザー剣を付け射出する。
ジュン! という音と共に、ドサリと倒れ込んだ。
カカカカカン! 四足歩行のロボットが俺を銃撃していた。レーザー剣からジェット斧に切り替えて、それを上段から高速で振り落とす。ガゴン! 四足ロボットがひしゃげ、もう一発ジェット斧を振り下ろす。バチバチと火花を散らして止まった。
倒れた奴の方を見てみると、四足歩行が人型を引っ張って逃げようとしているところだった。
《戦闘不能になったものを、離脱させようとしています》
残は?
《全て戦闘不能ですが、四体中三体が生体反応を示しています》
随分頑丈だな。
《チタン鋼、もしくは未知の鉱物の可能性があります》
オリハルコンとどっちが硬い。
《オリハルコンの方が何倍も強度が上です》
わかった。
すると、三体のうちの二体が、意識を吹き返したかのように立ち上がった。一体はまだ動いておらず、俺はその二体に向かって炎の剣を振ってみる。ゴォッ!と吹きだした炎に包まれると、次の瞬間、プシュッと白い粉が吹きだして火をかき消してしまうのだった。