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第二百十八話 神殿都市のギルド

 俺達はようやく神殿ダンジョンの都市に辿り着いた。その周辺は荒野となっているが、都市には緑があり、あちこちに古い石造りの建物が立っている。壊れた石の柱なども立っており、その合間に木造の建物が建てられている感じだった。


「いわゆる神殿都市だよ」


 ウィルリッヒが説明してくれた。


「神殿都市か」


「昔の文明の名残というか、そこにダンジョンがあって人が住み着いた感じかな。多くの人はここに来る冒険者を目当てで商売しているし、あちこちに宿泊宿屋があるんだ」 


「なるほど」


 青備えの俺達が珍しいのか、街を歩けば視線が集まる。オリハルコンの装備と分かっているかどうかは知らないが、やはり見た目は派手な部類に入るのかもしれない。


《比較的ステータスの高いものが集まっているようです》


 冒険者だな。


《ですが、これではダンジョンの攻略は不可能》


 そうだな。兵器が揃っていないし、防御面が脆弱過ぎる。


《ダンジョン規模の測定が必須です》


 わかった。


「ウィルリッヒ。まずは冒険者ギルドへ連れて行ってくれ」


「分かった」

 

 リンデンブルグ帝国としても、他の国の貴族にダンジョンを攻略されたとするのは問題があるようで、俺達はダンジョン攻略の為に呼び寄せた冒険者一行という事になっている。ひとまずは冒険者ギルドで、受付をしなければならないのだ。


 そして真っすぐに出向いたのは、ダンジョン都市にあるギルドである。ギルドの建物を見たボルトが、驚いたように言う。


「随分デカいっすね」


 確かに今まで見たギルドの中では、一番大きな建物のようだ。それにその辺りにわさわさと人がいて、ギルドの入り口からはひっきりなしに人が出入りしている。数階建ての高さに、敷地面積が広く、多くの冒険者に対応できるようになっているのだろう。


「では」


 ウィルリッヒが入ると、ギルドの職員が慌てて駆けつけて来る。


「お、お待ちしておりました! 殿下!」


 その言葉で、一斉にギルド内が静まり返った。


「ギルドマスターに用がある」


「伺っております」


 なるほど、既に話は付けていたらしい。俺達はギルドの受付嬢について、奥の階段を昇り上階へと移動した。そして一つの部屋に通され、俺達は中に入れられる。


「これは! 殿下! いよいよですか!」


 厳つい男が飛び出して来た。


「そうだ。選りすぐりの冒険者を連れて来た」


「見事な鎧だ。なんとも美しい青」


「めずらしいであろう?」


「はい」


 冒険者代表として、ボルトが前に出て挨拶をする。


「風来燕って言う冒険者だ」


「ギルド証を拝見しても?」


 ボルトがカードのような鉄板を出す。それを見てギルドマスターが驚いた顔をした。


「で、殿下。彼らはBランクですが……」


「問題ない」


「しかし、それでは三階層か四階層どまりでは」


 そこでウィルリッヒがボルトに尋ねる。


「何故Bランク?」


「試験を受けてません。お館……あるお方の専属冒険者になってからは、特に必要はなくて」


「と、言う事です」


「なるほど。冒険者を生業にしてない訳ですか」


「まあ、そんなところでさぁ」


 そこでフロストが前に出て言う。


「ちょっといいかな」


「は! 剣聖様!」


「彼らとは手合わせをしている。私が問題ないと保証しよう」


「剣聖様がおっしゃるのであれば、そうなのでしょう。それで他の仲間はどちらに? 我が冒険者ギルドでも攻略組を組むことはできますが」


 ウィルリッヒが俺をみて首を傾げたので、俺がそれに答える。


「この鎧の九人で潜る」


「九人だけ?」


「そうだ」


 ギルドマスターはその厳つい顔で、またウィルリッヒを見る。だがウィルリッヒは涼しい顔で、ギルドマスターに答えた。


「だってさ」


「だってさ……でございますか」


 すると今度はヴァイゼルが言う。


「王宮魔導士長のヴァイゼルじゃ」


「い! 生ける伝説!」


「そんな風にいわれると、こそばいのう」


「ヴァイゼル様も一緒に?」


「いや。わしゃ潜らんよ。命が惜しいからのう。とにかく彼らはまず、どんなダンジョンかを聞きたいようなんじゃ。教えてやってくれんかのう」


「わかりました。もちろん最高到達地点と、現在分っている範囲の詳細をお伝えします」


「ふむ」


 それから詳細が記された羊皮紙を取り出し、ギルドマスターが教えてくれた。結局のところは、騎士団が到達した深度が一番深くて、地下十二階層迄の情報しかなかった。冒険者達は十階層までは潜らずに、魔獣を取るために潜る事が多いのだとか。ギルドが管理しているので、異変があれば時おり、冒険者パーティーを集めて討伐しに行くらしかった。


《話を聞くところでは、シュトローマン領のダンジョンよりは古いようです。想定ではもう少し深度があるでしょう。冒険者が上層階の魔獣を間引きしているおかげで、あふれ出てはきていないと言う事です》


 だな。あれより深い可能性か、削岩中というよりは出来上がっている施設の可能性がある。


《そのようです》


 一通りの話し合いが終わり、俺達は攻略の日程を告げる。


「えっ! 七日以内? そんな馬鹿な」


「いや。むしろそれ以上はかけたくない。もしかすると諦めて戻って来る可能性もある」


 ボルトが答えると、ギルドマスターは顔を真っ赤にして言う。


「うちの冒険者のトップがこぞってやっても、十階層なのですぞ。それを九人で? 七日?」


「そうだ」


 だがそこはウィルリッヒが仲裁した。


「いいんだよ。こちらとしても、それならそれで国としての面子も立つしね」


「はあ……」


 おおよその項目が決まった。そして俺達にはある秘策がある。話し合いが終わり、次にこの都市のトップに会いに行くとウィルリッヒが言う。


「分かりました。それではギルドも、出来るだけご協力させていただきましょう」


「よろしく頼むよ。じゃあ」


「は!」


 そうして俺達は冒険者ギルドを出た。やはり俺達の言っている事は、ギルドマスターにとっては理解が出来ない内容だったらしい。責任はウィルリッヒが全て取る。という事で収まった。


「で、次に、ここの都市のトップに会いに行く訳だけど」


 とウィルリッヒが言いかけ、俺がそれに答えた。


「怪しいと目する人物の見分けか」


「お願いしたい」


「分かった」


 都市を歩居て中心に近づいて行くと、露店なども出ていて多くの人でにぎわっていた。


「人がいっぱい!」


 メルナが言うとマージが答える。


「それだけ、ダンジョンから取れる物資が豊富という事さね」


 それを聞いたアーンが目をキラキラさせた。


「は、早く潜りたいっぺ!」


 俺がアーンに言う。


「焦るな。まずは用事を済ませてからだ」


「は、はい!」


 ほどなくして、大きな屋敷へとたどり着いた。ウィルリッヒが門番に話しかけると、慌てて屋敷の中に走っていく。すると屋敷から、腹の出た太り気味の貴族風の男が走って来る。


「ひいふう、はあ、はあ」


「やあ」


「こ、これは殿下。よくぞおいでくださいました」


「ああ。お邪魔するよ」


「はは!」


 そして俺はすぐさま答える。


「これは違う」


「だと思う。なのでついて来て」


「ああ」


 そして俺達は屋敷の奥へと通されて行くのだった。

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