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第二百十一話 緊急招集での違和感とやるべき事

 緊急招集帰りの車中で、俺はフィリウスと話をしていた。フィリウスは今回の結果に、疑問を感じており想像とは全く違ったようだ。ガタンと馬車が揺れ、ヴェルティカが俺にしがみつく。それを見てフィリウスが面白くなさそうな顔をした。フィリウスの表情をみたヴェルティカが笑って言う。


「あら、お兄様。私達は夫婦ですのよ?」


「分かっている。あからさまなのはどうかと思うがな」


「ねえ、コハク。私達はいつもこうよね?」


 どちらでもいい。


《ノントリートメントはそうはいかないようです》


「そうだな。とりあえずは話の続きだ」


「コホン! まあそうだな」


 するとヴェルティカが言う。


「なんか息が詰まりそうな話だったから、少しでも和らぐかと思ったのに」


「ヴェル。まあ気を使うな」


「はーい」

 

 会議の結果、結局は王派が固まり集まって、各地の防衛体制を整える事で話は決まった。安全圏に民族大移動させるのは現実的ではないとし、賛同した貴族には強化鎧や防衛費の増強をすることになった。それで新たに騎士を雇用し、軍事力をあげる事になる。


「王もオーバースも、フィリウスと同じことを言っていたな」


「その通りだ。だが、ああも見事に割れるかね?」


「どういうことなのだろうな?」


「全く分からない。何か変な感じがする」


「そうか」


 いくら話しても答えは出なかった。この馬車の後ろには長い車列が続いており、シュトローマンや男爵たちがついて来ている。


「とりあえず近隣の領地は全てこちらに与するらしい」


「連携を取って何とかするしかあるまい」


 シュトローマン伯爵邸に到着すると、シュトローマンが声をかけて来た。


「パルダーシュ辺境伯様は、この度はどうされるので?」


「真っすぐに帰る。やらねばならんことが山積みだ」


「そうですよね。分かりました。我が領はパルダーシュ辺境伯と共に動きます」


「わかった。こちら側は我々で固めていくとしよう」


「わかりました」


 そうしてフィリウスには、シュトローマン伯爵邸に預けていたオリハルコン鎧を詰みこんだ荷馬車を渡す。


「フィリウス、新型の鎧だ。精鋭に着せてくれ。一応体の大きさも関係するので合う者に渡してくれ」


「分かった」


 そして俺はシュトローマンにも言う。


「こちら側に立って戦うという事でいいのですね?」


「そうです」


「では」


 そう言って、余った鉄で作った旧式の強化鎧を数体渡した。


「騎士団でも、腕っぷしに自信がある奴か、魔力を保有している者に与えてほしい」


「わかりました。使い方は?」


「着続けると魔力が減っていくから、使い時に着る事です」


「なるほどです」


「もし可能なら訓練の為、リンセコート領に兵士を差し向けてください」


「分かりました。そうしましょう」


 後ろに続いていた男爵たちも、馬車を降りて来て俺達の周辺に並んだので振り向いて言う。


「取引で我が領に来るときに、何らかの兵器を渡せると思います。王が言っていたような、未知の敵に対応するための武器や鎧になります。もし鉄や鉱物資源を保有しているとしたら、それと交換しますのでお願いします」


「「「「「はい!」」」」」


 そうして俺達は、シュトローマン伯爵邸を後にし、それぞれの領地に向かって出発した。


 馬車の中でボルトが言う。


「なんかモヤモヤした結果だったな」


「仕方あるまい。皆が皆、同じ考えでは無いという事だ」


「それにしてもだ。国を二分するような結果になるとはな、魔獣の襲撃を知らねえわけじゃあるまい」


 皆が違和感を覚えつつ、とにかく防衛体制の整備に力を入れる事だけが決まった。恐らく領地に帰ってすぐに、王派貴族が各地から素材を持ってやってくるだろう。これから、さらに忙しくなるのは間違いなく、アーン達ドワーフはフル稼働する事になる。


 俺達が一日かけて、ドワーフの里に戻ってくるとアーン達が飛び出して来た。


「おかえりだっぺ!」


「戻った」


「素材はもっともらえるっぺか?」


「ああ。かなり集まって来る事になる。これから忙しくなるぞ」


「よかったっぺ! まずは、強化鎧により改良を加えたっぺよ!」


「それは凄いな」


 旧式の強化鎧ではあるが、アーンはそれに改良を加えたようだった。


「師匠、着てみてもらえるっぺか?」


「分かった」


 俺はアーンが用意した強化鎧を着る。そして違いはすぐに分かった。


《出力アップと魔力の消費削減を両立させています》


 あそこからか?


《アーンは特別な思考と計算式を持っているようです。演算だけではない、この世の理に叶った何か》


 天工鍛冶師の能力か?


《そうであると思われます》


「効率がいいよアーン。良くここまで改良したな」


「ありがとうございます! 魔力の流れと性質を、逆手に取った改良だっぺ!」


 そのようだ。


《はい。こちらも学習しました》


「まもなく各地から素材が集まるからな、それが入ったら、また新しいものが作れるだろう」


「楽しみだっぺ! こんな恵まれた環境を与えてくれた事に感謝だっぺ!」


「ああ。じゃあ俺達は兵舎に挨拶に行く」


「わかったっぺ!」


 ドワーフの里は相変わらずだった。兵舎に行くとレイたち騎士が出迎えてくれる。


「お館様!」


「戻った」


「どうでした?」


「あまりいい結果ではなかなった」


「そうなのですか?」


「国が割れてしまった」


「ええ! そんな事が!?」


「だがやるべき事は決まった。防衛の為に、軍事力を高める事。各地から強化鎧と交換に物資が届き、騎士達が学びの為に来ることになった。その時は我々との、合同軍事訓練をすることになるだろう」


「わかりました。気が引き締まりますね」


「心して迎えよう」


「ええ。不在の間にもかなり皆の力が上がりました。見ていかれますか?」


「そうしよう。ヴェルティカ、メルナ、先に屋敷の戻っていてくれるか!」


「分かったわ。行きましょうメルナ」


「うん」


 そうして二人は屋敷に戻って行った。


「じゃあ見せてくれ」


「「「「「は!」」」」」


 今までの俺や風来燕との訓練で、皆はかなり上達していた。今はもう、高周波ソードと爆裂斧を使えるようになってきている。ドワーフと元難民とは思えないほどに仕上がっていた。


 アイドナが考えた訓練プログラムが優秀なのである。一日だけでもかなり動きが洗練され、それをずっと続けた結果で無駄のない動きをするようになった。また難民の体もかなり仕上がってきており、オリハルコン鎧の魔力をカットしてもかなり動けるようになっている。


「どうです?」


「流石はビルスタークに仕込まれただけはある。ここまで仕上げてくれて本当にありがたい」


「青の騎士が、見掛け倒しにならないようにしたいです」


「今まで見た、他の領の騎士団より比べ物にならん動きをしている」


「そう言っていただけるとありがたいですね。それもこの青の鎧のおかげです。むしろこれを使いこなせるように動いた事が、功を奏したような気がしてます」


「わかった。引き続きやって行こう」


「は!」


 そして俺達も兵舎を後にし、屋敷に戻る。するとヴェルティカが俺に駆け寄って来た。


「書簡が届いていたわ!」


「どこからだ」


「ウィルリッヒ殿下よ」


 そして俺達は部屋に入り、ウィルリッヒからの書簡を読み始めるのだった。

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