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第百九十八話 重機ロボットの汎用性

 シュトローマン伯爵は、フィリウスに対し非常に恐縮していた。あの馬車小屋に居た申し訳程度の騎士達は、どうやらダンジョン攻略の為に置いていたらしい。だがそれを使う事無く、見張りとして置いていただけだったので、自領の兵が働かなかった事を謝罪しているのだ。


 だがフィリウスが言う。


「いやいや。我が命じたのだから、貴殿の騎士も動けんだろう。それを気に病むことはない」


「しかし」


「馬車を見張ってくれただけでも助かった。だから一緒にダンジョンに潜ったも一緒」


「そう言っていただけると、ありがたいですが」


「なので、貴殿のところにも素材をおすそ分けと思ってな」


「そのような! お気持ちだけでも十分にございます!」


「いやいや。貴殿の領地のダンジョンであるからな。ここはどうだろう? うちとリンセコート領と貴殿の領で三等分でいいのではないかな?」


「さ。三等分! いえいえいえ! そのような……」


「いや。それでは私の気がすまない!」


「……分かりました。過分な報酬ではありますが、頂きたく思います」


「それは良かった! やはり貴殿とは気が合うようだ! 今後とも何卒リンセコートの妹をよろしく頼むよ!」


「は、はは!」


「じゃ、三分の一の素材報酬は、敷地に運び込んであるから確認してくれたまえ」


「もう行かれるので?」


「私も多忙の身でな、直ぐに領へ戻らねばならん」


「わかりました!」


 そう言ったものの、フィリウスは自領には帰らずリンセコート領へと行く事にする。


 なぜこのまま帰らないかというと、俺が回収して来た重機ロボットに興味があるからだ。そこでフィリウスはビルスタークとアラン、数名の騎士を引き連れて俺の領に来る事になった。残りの兵士達は、パルダーシュにまっすぐ帰る事になる。


 郊外に行くと早速、フィリウスが騎士達に言う。


「なら気をつけて帰るのだぞ。我々は数日後になる」


「「「「は! お任せください!」」」」


 そして俺達はパルダーシュの騎士達に見送られ、リンセコート領へと進んで行く。幌をかぶったロボット重機たちもついて来ており、俺について来るように指示をされてるらしい。


「しかしアイアンゴーレムを使役するとはな」

「ええ。コハクには使役のスキルがあったのですね」


 フィリウスとビルスタークが勘違いしているな。


《AI操作で指示をしているだけなのですが》


 魔法の使役というものに見えるらしい。


《はい》


 それから一日かけて、ドワーフの里に戻ってくる。俺達が里に入ると、ドワーフの男は出払っているようだった。ヴェルティカが、俺達のところにやって来て言う。


「お帰りなさい! 皆、怪我は無い?」


 フィリウスが答える。


「誰一人として欠ける事無く帰って来た」


「よかったわ」


「流石はコハクだよ。それにあれを見てくれ」


 俺達の後ろについて来ている馬車列と、幌をかぶっている大きな物体を指さす。


「なにあれ」


 俺が一体の幌を外すと、ヴェルティカが目を見開いて叫ぶ。


「きゃあ! 魔獣! 魔獣ぅ!」


「まて! 慌てるな! あれはアイアンゴーレムだ」


「ご、ゴーレム! 魔獣じゃない!」


「あれは、コハクが使役しているんだ。全く危険じゃない」


「嘘……旦那様が」


「そうだ。なあ! コハク」


「そうだ。俺が指示を出さねば、絶対に人を襲う事は無い。あれは作業用の機械だがな」


「作業用?」


 ヴェルティカは呆然としているが、その騒ぎを聞きつけてドワーフたちがやって来た。アーンも飛び出して来て、ロボット重機をみて驚いていた。


「ゴーレムだっぺ! 逃げるっぺよ!」


「まて! アーン! これは俺が使役しているんだ」


「し、師匠が?」


「そうだ」


 すると、アーンとドワーフたちの目がキラキラして来る。全員が少女みたいに小さくて、子供を相手にしているような錯覚に陥る。


「凄いっぺ! 流石は師匠だっぺ! やっぱり神様だっぺ!」


「大袈裟だ」


「大袈裟じゃないっぺ!」


「これでミスリル坑道の開拓は、ずいぶん楽になるはずだ」


「おお! 凄いっぺ! それは凄いっぺ!」


「これからいろいろと試験をして、工場での稼働が可能かも検討する」


 ドワーフたちの目がキラキラしている。


《どうやら彼らは機械に目が無いようです》


 なるほど。


「まずはミスリル坑道で試験をしてから、各工場での試験をするからそのつもりでいてくれ」


「わかったっぺ! 楽しみだっぺなあ」


 とりあえず報告をして工場の状況を聞くと、いろんなところから買い付けの人が来て、魔石や資材での支払いも増えて倉庫がパンパンらしかった。


 それを聞いてマージが言う。


「そいつは困ったねえ。ダンジョン攻略でも、大量の素材がとれちまった」


 それを聞いていたドワーフが言う。


「ならば、大型の倉庫を作るっぺ! 任せてほしいっぺ!」


「敷地はどうする?」


「北側の鉄工所裏を、開拓してそこに作るっぺ!」


「わかった。よろしく頼む」


「任せてほしいっぺ!」


《では一台の重機ロボットに指示を出して見ましょう》


 どんな?


《宅地造成です》


 なるほど。


「じゃあ倉庫用の宅地と基盤をゴーレムに作らせてみるか。アーンは増築場所の選定を頼む」


「わかったっぺ!」


「一度屋敷に戻る。ヴェルティカも来てくれ」


「わかったわ」


 そして俺達はドワーフの里に素材を全て預け、五台の重機ロボットを連れて屋敷に戻った。庭に五台の重機ロボットを置いて幌をかぶせておく。


「いずれ、これらの収納場所を作らないとダメだな」


「そのようだ。だが屋敷においておけば、警備の代わりになるのではないか?」


「なるほど。それも検討してみよう」


 ヴェルティカが俺達に言う。


「とにかく、食事の用意を頼んで来るわ」


「わかった」


 ビルスタークが言う。


「これは戦いに使う事は出来るのだろうか?」


「力は凄いが、動きが俊敏とは言えない。攻撃が当たらねば使い物にはなるまい」


「盾くらいにしかならんか」


「まあ試験してみなければ分らん。ちょっと動かして見ようか」


「そうだな」


 男爵邸の前の空き地に、一機の重機ロボットを連れ出しアイドナがパネルを触る。


《やはり戦闘モードは無いようです》


 削岩ロボットだからな。


《では、あなたの剣舞をさせてみましょう》


 アイドナがピピピと、パネルを操作して離れる。すると俺が王覧武闘会でやったような、剣術のような動きをした。それを見ていて、アランやボルト達も感嘆の声をあげる。


 アランが言う。


「戦えそうじゃないか?」


「いや。今は決められた動きをしただけだ。戦わせるならそれ相応の指示を与えねばだめだ」


「なるほどな」


「やはり掘るのが仕事らしい」


「掘らせてみるのか?」


「明日ドワーフのところに連れて行ってみる」


「そうか」


 だがそこでアイドナが言う。


《削岩だけではないでしょう。工場のようなルーティンであれば、自己判断で作業は出来るはずです。オートメーション化出来るところはした方が、さらに生産能力は高まります》


 工場作業か。それもAIによる指示でか?


《そうです。その前に太陽光パネルを組み上げねばなりません。じきに重機ロボットの稼働パネルが止まります》


 生体動力じゃないのか?


《生体動力ですが、ある程度のエネルギー補給は必要になるようです》


 わかった。


 おおよそのやる事が決まった。


 俺達がそこでワイワイやっていると、料理が出来たと使用人が呼びに来る。重機ロボットを見て一瞬腰を抜かしたが、ヴェルティカが説明をして収まったようだ。


「みんな怖がってるわ」


「じきに格納庫を作る予定だ。今は屋敷に置くしかない」


「よろしくね。では食事にしましょう! お兄様たちも鎧を脱がれると良いわ」


「助かる」


 そして俺達は、食事をしながら重機ロボットに関しての利用価値について話合うのだった。

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