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第百九十七話 大量の未来資源を確保

 最下層の古代遺跡の部屋に入ると、前と変わらぬ状況で機械は動いた気配がない。


 アランが呆然として言う。


「これが古代遺跡」


「そうだ」


 そこには前に見た時と同じ、ロボット型の重機たちが置いてある。俺は既にパネルに向かって、そこにある重機群を動かすための準備に入っていた。


《稼働可能です。山岳部にソーラーパネルがあるようですが、それらの回収も推奨します》


 もっていこう。


《それでは重機を稼働させます。自動運転になるようです》


 やってくれ。


 ゴウンゴウンと音を立ててロボット型重機達が動き出すと、アランと風来燕が身構える。


 そしてボルトが叫んだ。


「こりゃアイアンゴーレムだ!」


 そこで俺が言う。


「大丈夫だ。俺が起動させた。後は自動でついて来る」


「……襲ってはこない?」


「問題ない」


《どうやら世界のどこかでは、こう言った機器が見つかっているのでしょう。これを魔獣の類だと考えているようです》


 アイアンゴーレムだと言ったな。


《そう呼んでいるようです》


 確かにこの世界では重機の存在は無い。これらが自動で動き出したら、生きていると考えるのは普通かもしれない。


 ソーラーパネルの位置は?


《掌握してます》


 これはどうやって動いている?


《やはり生体動力のようです》


 同じか。


《はい。それに旧時代のようなAIを搭載しているようです》


 AIか……。他に使えそうなものはあるか?


《探してください》


 わかった。


 そして俺はアランと風来燕に言う。


「じゃあこの部屋に何か使えそうな物が無いか、皆で探そう」


「あいよ」

「わかった」


 俺達はその部屋を物色し始める。するとベントゥラが何かを見つけた。


「コハク! 何か箱がある」


「わかった」


 三十センチ四方の鉄の箱が置いてあり、取っ手が付いていて持ち運びが出来そうだ。それにもパネルが付いている。


《解錠しますか?》


 してくれ。


 アイドナがパネルを操作して、鉄の箱を空ける。すると中は電子機器や工具類が入っていた。


《修理用の工具です》


 ベントゥラが聞いて来る。


「なんだこりゃ?」


「道具だ。あの機械やこの施設を修理する為のな」


「へえ…‥」


 すると今度はガロロが声をかけて来た。


「おーい。コハク! こっちにも変わったものがあるのじゃ!」


 そこに行くとまたパネルのついた鉄の箱がある。


「箱か」


「なんじゃろ」


 アイドナが同じようにパネルを操作して解錠した。中には、銀色の細長くてピカピカの金属製の棒が何本も入っている。


《高エネルギー燃料です》


 燃料か、これが。


《生体動力の補修用の物資の確率百パーセント》


 そうか。


「コハク。これは何かしら?」


 壁にある引き出しの中に、プラスチック製の箱がある。それにはパネルなどはついていないようだ。箱を引き出して中を見る。そこにはケーブルのような物が入っていた。


《超伝導物質です》


 どういうものだ?


《生体動力のエネルギーをロスゼロで伝達する導線です》


 そして今度はボルトが声をかけて来た。


「なんか動いてるのがいるぜ!」


 ボルトの所に行くと、培養液の中に試験管のような物があり、その中に蠢く物体がいる。


《生体動力の核である確率が百パーセント》


 これが核か。


《ですがこの状態では非常に弱い。どうやら成長させて使用されるようです》


 持って行けるか?


《パネルに触れてください》


 アイドナがピピっとパネルを打ちこむと、五本あった試験官がプシュッ! と下に吸い込まれていく。下の引き出しのようなところがせり出して来て、金属製の管が五本並んでいた。


《これで持ち運びできるようです》


 なるほど。


 そして俺は風来燕に言う。


「見つけた箱は全てゴーレムに積み込んで運ばせよう」


「「「「おう!」」」」


 乗せれる物は全て重機に乗せ、最後の確認をする。どうやらあと持って行けるものは無さそうで、俺達はダンジョンを出る事にする。


 部屋を出ると、後ろを五台のロボット重機達が並んでついて来る。それを見てボルトが言う。


「マジで襲っては来ねえんだよな?」


「問題ない」


 そして俺はアイドナに、この施設の入り口にあるパネルを操作させて扉を閉じた。もう来ることは無いかもしれないが、破壊して動力が爆発すると大変な事になるので、ここは破壊しないでおくことにした。


 アランが言った。


「しかし。なんでコハクはこれを動かせるんだ」


「わからん。理解ができるんだ」


「本当に不思議な奴だ」


 だがそれにマージが答える。


「あたしにも理解は及ばないだろうねえ」


「大賢者様でもですか」


「そうさね。恐らくはこの世界の根幹に関わる事だと思うんだがねえ、あたしにもさっぱり分からないのさね」


「コハクは自分で分からないのか?」


「すまんが分からん」


 もちろん素粒子AIの演算によるものだが、それを彼らに言ったところで到底理解は出来ない。だから分からない事にしておくしかないのだ。


 ボルトが言う。


「アランの旦那。きっと神様が遣わした救世主だと思うんでさあ。でなければ、誰もこんなことは出来やしない」


「まあ……そうだな。これまでの事を思い出しても、どれも普通じゃなかった」


「俺たちゃ、冒険者の勘でコハクについて行きゃあ間違いねえと思ったんです。そして一緒に行動しているうちに、自分らの判断が正しかったと思ってます」


「間違ってはいないだろう。だからフィリウス様も、可愛い妹をコハクにやる事を承諾した」


「ちげえねえ」


 そうして俺達は、討伐した魔獣の素材をロボット型重機に乗せたり括り付けたりして、ずるずると引っ張りだす。


「すげえ力だ」


「流石はゴーレムじゃな」


 ほとんど討伐しているので、帰りは来た時より速く昇れた。地下七階層でようやく、フィリウス達と遭遇する。俺達が連れてるゴーレムを見て、騎士達がびっくりしているが、アランが説明をして身構えを解いた。


 フィリウスが驚いて言う。


「このゴーレムはコハクに従っているのか?」


「そうらしいです」


「凄まじいものを手に入れたな」


 そして俺はフィリウスに言う。


「もうこのダンジョンには魔獣はいない。手分けして物資を運び出してほしいんだが、騎士達と俺達で潜ってもいいだろうか?」


「かまわん」


 取りこぼして来た物もあるので、俺と風来燕とビルスターク、そしてアランが部隊を引き連れて各階層へと物資を取りに向かった。また半日かけて地上に出た時には、次の日の太陽が昇っていた。


 騎士達は疲労と安堵で、そこいらに腰を下ろし、フィリウスが号令をかけて食事をとるように言った。そこで俺がフィリウスに言う。


「俺は先にゴーレムを連れて、他の物資回収に向かう。あとは風来燕達と一緒に慎重に物資を運んで登ってきてほしい」


「わかった。ならばそうしよう」


 そして俺はアイドナが確認した、ソーラーパネルのポイントへと向かった。ロボット型重機は急斜面も全く問題ないようで、四肢を巧みに使ってついて来た。


「あった」


《二十枚ものパネルがあります》


 すべて回収しよう。


《ロボットに解体させましょう》


 そうしてアイドナはロボットのパネルを操作した。すると五体のロボットが勝手に動き出し、ソーラーパネルを分解していく。巧みに重ねて、二十枚のソーラーパネルを一台のロボットが背負った。


 あれが運搬用か。


《そのようです》


 そして俺とロボットが崖を登り馬車小屋まで来ると、フィラミウスとメルナが数名の騎士達と居た。


「コハク。戻ってきたのね」


「ほかは?」


「往復して物資を上げているわ」


「なら俺も行こう」


「私とメルナは非力なのでここで待つわ」


「そうしてくれ」


 三台のロボットを連れて、崖の上に行くと素材が積まれており、騎士達がせっせと運んでいた。


 ロボットに運ばせよう。


《指示を出します》


 アイドナがロボットのパネルを操作すると、そいつらは崖を下りていき次々に物資を運んで来る。あっという間に作業が終わり、フィリウスと風来燕と騎士達が上に登って来た。


 そしてフィリウスが言う。


「そのゴーレムは働き者だな」


「疲れを知らないからな」


「凄いものだ」


 そうして俺達のダンジョン攻略は終わった。馬車小屋に戻ると、シュトローマン伯爵の騎士達がロボットを見て驚いている。


《使役していると伝えてください》


「このゴーレム達は俺が使役している。危害を加える事は無いので安心してくれ」


「「「「は!」」」」


「ダンジョンは攻略した。魔獣が氾濫する恐れはない」


「三日で……ダンジョンを掃除したのですか?」


「そうだ」


《パルダーシュの功績にしてください》


「これが、パルダーシュの騎士の力だ!」


「「「「おおおお!」」」」


《ロボットに幌をかぶせてください。そしてフィリウスにシュトローマンの騎士に緘口令を》


 わかった。


 フィリウスにその旨を伝えると、フィリウスがシュトローマンの騎士に言う。


「この事は他言無用である! もしこの事が外部にバレたら、貴様らの仕業だと分かるぞ!」


「「「「は!」」」」


 俺と風来燕で、五台のロボットに幌をかぶせて隠す。そうして俺達はダンジョンを後にし、まずはシュトローマン伯爵の元へと向かう事にしたのだった。

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