表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

176/307

第百七十五話 ダンジョン攻略開始

 久しぶりに冒険者ギルドで、ギルドマスターと会う。ギルドマスターは期待するようなまなざしで見つめ、詳細を告げ始めるのだった。


「前回は、まだ依頼するに至ってなかったが、調査が終わりいよいよ依頼できる状態になった!」


「解決できない依頼があると言っていたのは、ダンジョンだったんだな」


 ボルトも興味深々の顔をしている。俺は良く分からないので、横で腕組みをしながら二人の話を聞いているところだ。フィラミウスもベントゥラも、こういう事はボルトに任せ静かに話を聞いている。


「そうだ。あんたらが来る一ヵ月前くらいに見つかったダンジョンなんだが、南に行く峠から逸れた谷底で発見されたんだ。その影響もあり、峠には普通でない魔獣も出現するようになってな、ギルドとしては仕事があるからいいが、流石にダンジョンを野放しにできない」


「攻略しようとはしなかったのかい?」


「したが、そのダンジョンは地下に広がっていて、奥に行くほど強い魔獣が居るんだ。うちのギルドに登録している冒険者だけでは、せいぜい地下三階層が限界なんだよ。何階層まであるか調べようと、斥候を送ってみたが、五階が限界ですぐに戻って来たってわけだ」


「なるほど。それで俺達って訳か」


「そうだ」


「依頼の達成条件は、依頼書通りか?」


「そうだ。まずは地下四階層と五階層にどんな魔獣が居るのかを調べる。あとは地下五階層以下にも、更に階層があるのかを調査してほしい。スタンピードの兆候なんかが見つかったら、流石に周辺のギルドに通達して応援を要請せねばならん。危険な魔獣が居ればなおの事だ」


「わかった。依頼書通りだな、ならちょっくら行って来る」


「うちの最高位のBランクパーティーを二パーティーと、Cランクパーティーを三パーティー同行させる。三階層迄の露払いは任せてもらいたい」


「なるほど。それだけ危険視してるって訳か」


「そうだ」


 そこでボルトが俺に言った。


「と言う事でさあ。お館様、いいですね?」


「依頼条件は必ず達成してやる。それ以上の仕事をした時はどうなる?」


「もちろん、それに準じた報酬をお支払いします」


「契約は?」


「こちらです」


 そう言ってギルドマスターが書類を出して来たので、俺はそれを懐にしまった。


「契約成立だ。こちらの冒険者を守っている余裕はないかもしれんから、三階層以下には潜らせるな」


「わかりました」


 そして話し合いが終わった俺達が、エントランスに降りていくと、今回同伴する冒険者達が待っていた。既に神殺しと王覧試合優勝の情報が回っているのか、緊張しながら俺達を遠巻きに見ている。


 そこでボルトが言った。


「さて、風来燕のボルトだ。今回一緒にダンジョンに潜らせてもらう。みな怪我のないように、無理をせず頑張ろう! 気軽に話しかけてくれ!」


「「「「「おう」」」」」


 ボルトに声をかけられて、皆が緊張気味に答えた。


 俺達は行列を作り、都市を抜けて南の街道へと出る。全員が馬車を持っているわけでは無く、便乗して乗り込んでもらう事にする。俺達の大きな二頭立ての荷馬車は辺境伯の物なので、そこそこの人数が乗る事が出来た。


 するとCランクパーティーのリーダーが聞いて来た。


「王覧武道会で、剣聖二人を下したというのは本当なのか?」


「本当だ」


「凄い!」

 

 すると他の冒険者がボルトに聞く。


「リバンレイ山では何があったんです?」


 ボルトが俺をチラリと見る。


「話してやれ」


「あー、古代遺跡を見つけたんだが、そこが大爆発を起こして山の形が一部変わっちまった。まるで神の怒りに触れたような爆発だったから、神殺しって二つ名をつけられたんだ。本当に神殺しをしたわけじゃないぜ」


「でも、そんな爆発から生きて戻ってきたんだな」


「まあ、そうだな。死ぬほど走ったぜ」


「凄い」


 ボルトが真実を語ったが、それでも尊敬のまなざしで見られているようだ。


「聞いて見りゃ、大したことねえだろ?」


「いや。だってリバンレイ山の山頂付近まで登れる人がいるなんて、そんなこと誰も信じてなかったから。行ったとしたら大部隊を引き連れて行ったんだろうって、皆が言ってる」


「そりゃ間違いだな。登ったのは六人。風来燕とこのお館様と、あとお館様の妹さんだ」


「六人! 六人でリバンレイに登ったんだ!」


「まあ…そうだな」


「今回のダンジョンも期待できますね!」


「あんま期待しねえでくれ。ダンジョン潜るのも久しぶりなんだ」


「露払いは任せてください!」


「おう」


 そうして俺達の一行は、ほぼ半日かけて峠の宿場町へと到着した。男爵領を出発して丸二日が経っており、町に到着したころにはあたりが暗くなっていた。


「今日はここで一泊だ! 明日の夜明け前にここを出発する! 皆はそれぞれの場所で休んでくれ! このあたりなら野宿も大丈夫だろう」


 ボルトがそう言って、冒険者達が解散した。俺達も、そのままこの馬車で雑魚寝する事になる。辺境伯の大きな馬車は、人が四人寝ころんでも余裕があった。


「大部隊だからな。酒を飲んだりするやつもいるだろう」


「俺達はどうする?」


「寝るよ」

「寝るわ」

「寝るぜ」


 三人の意見は一致した。それだけダンジョンに潜るのが楽しみらしい。


 周りに人が居なくなったので、マージが言う。


「ボルト達も、ずいぶん楽しみなようだねえ」


「そりゃ賢者様。ダンジョンと言えば、心躍りますぜ」


「冒険者だもんねえ。あたしも楽しみだよ」


「賢者様とコハクがいて下されば鬼に金棒ですぜ」


「まあ無理はするんじゃないよ」


「「「はい」」」


 風来燕が横になったので、俺もごろりと寝転がる。


《睡眠のコントロールをします》


 ああ。


 アイドナは俺を深眠させ、二時間程で目覚めさせた。それからしばらくはそのまま、そこで待ってる事にする。風来燕はまだ寝ているようなので、起こさないようにじっとしていた。


《情報によれば深層に行くほどに、強い魔獣が居るようです》


 そのようだ。大きな魔石が取れると良いんだがな。


《万が一取れなくても、帰りにギルドで買いとれるだけ買いとりましょう。それだけの資金は渡されています》


そうだな。それに依頼達成すれば、金ではなく魔石で払ってもらってもいい。


《そのとおりです》


 それから数時間で、空が薄っすらと色づいて来た。


「ボルト、フィラミウス、ベントゥラ。起きろ」


「おっ! 時間か」


「ああ」


「楽しみだわ」


 するとベントゥラが言った。


「他の冒険者を見て来る」


「頼む」


 そうして冒険者一行は、峠に向かって登り始めるのだった。それから半日が過ぎて、Bクラスの冒険者が俺達に言った。


「もう少し先に、馬車の待機所が作られています。そこに馬車を置いて、谷を下ります」


「了解だ」


 馬車の待機所には小さな小屋もあり、連れて来たC級冒険者の一パーティーが、馬車を見張る事になっている。


「装備をしろ」


「「「おう」」」


 全てを装着したところで、俺がフィラミウスに言う。


「マージの収納がある。そこにマージを入れろ」


「わかったわ」


 そしてマージをフィラミウスの鎧に組み込んだ。


 全員がフル装備の新型強化鎧を取り付け、大きな魔石が入っているバックパックを背負い、俺はジェット斧を背負い腕の仕込みにレーザー剣をしまう。腰には二本の片手剣を差しこんだ。


 フル装備の俺達が馬車から降りると、冒険者達が感嘆の声や感想を漏らした。


「やはり、ただもんじゃねえ雰囲気が出てる」


「見た事の無い鎧だけど、思ったよりシュッとしてて装甲が薄そうだが……」


「それで魔獣の攻撃は防げるのかい?」


「随分と重そうな武器だが、それで戦えるのか?」


 俺のジェット斧や、ボルトの大剣を見て言っている。もちろん強化鎧を着ているし、武器にも魔力が込められているので重さなどあまり感じない。


「問題ない。行くぞ!」


「「「「「「「「おう!!!!」」」」」」」」


 俺達は急な崖を下りていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ